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人食い部族「ヤメーメ」


「よし、俺は山に行ってキャンプの道を究めるぞ!」

「流石ウェインさんです。期待してますよ」


「今度の相手は戦闘部族か。師匠、流石に今回は剣を使ってもいいんだろ?」

「いやいやダメですよ。本当のキャンプでは全て『素手』なのです」

「す、素手だって!? 」

「そ、そうです。素手なんです」


 ウェインはバルカスの顔を、これでもかと言わんばかりに凝視する。

 バルカスは恐怖で震え上がる。


「師匠、相手は戦闘民族だぞ! 熊とは違うぞ!?」

「そ、そうなんですが、剣はダメなんですよ! (アホかっ、熊の方がヤバイだろが!?)」

「キャンプ道とは本当に険しい物だな」


 どうにかウェインを説得出来たバルカスは、胸を撫で下ろした。



 すると、遠くの方から獣らしきものが物凄い勢いで走ってくるのが見えた。

 気が付くとそれらはウェインに飛び掛り、バルカスは驚いて尻餅を付いた。


 熊だった。

 3匹の熊達は、ウェインに構ってほしくて彼に飛び付き、ウェインも嬉しそうに熊とじゃれあっている。


「ははははっ! やめろって、くすぐったいだろが! それに今は師匠と大事な話をしているんだぞ」


 熊達はウェインに制止されると、大人しく彼のそばに座り出した。


「も、もうすっかり仲良しですね、ウェインさん」

「ああ、これも師匠の教えを実践した賜物だな」

「そ、そうです。やはり素手は大事なのですよ!」

「分かったよ。師匠の言葉に間違いはないからな! そうだ、今回の山へのキャンプは師匠も一緒に来てくれないかな!?」

「……え!?」

「いや、師匠に甘える気は全くないんだが、やはり一刻も早くキャンプを極めるには、お手本があるのがベストだからな」

「いや、わ、私はちょっと用事がありまして……」



 ウェインの誘いに断りを入れようとしたバルカスだったが、彼はウェインの背後の熊達を見て驚愕した。


 1匹の熊は、両前足の指をポキポキと鳴らして、バルカスを威嚇。

 もう1匹の熊は、鋭い牙を剥き出しにして今にもバルカスの頭を食いちぎりそうな勢いだ。

 

 最後の1匹は「てめえ、断ったらどうなるか分かってるんだろな!?」と言わんばかりに、強烈な睨みを利かせている。


「なんだ、行けないのか師匠?」


 尋ねるウェイン。

 再度、熊達から強烈な圧がバルカスに押し寄せる。


「……い、行かせて頂きます!」



 こうしてウェインは、キャンプの師匠バルカスと供に、ドルヴァルゴの山岳地帯を目指す事になったのだった。





◇◇◇




 3時間後、ウェインとバルカスは戦闘民族「ヤメーメ」が住む山岳地帯に来ていた。


「ハア、ハア、ハア……」

「大丈夫か師匠? 体調でも悪いのか!?」

「い、いえ、ちょっと疲れただけです。 (何でコイツは、3時間歩きっぱなしでケロっとしてんだよ! しかも急激な坂の獣道だぞ!?)」

「そうか、じゃあ少し休むか」


 ウェインに休憩を促がされたバルカスは、堪らず大の字になって地面に寝そべった。


「あっ! 師匠大変だっ!!」

「ど、どうしたのですか、ウェインさん!? ま、まさか魔獣ですかっ!?」

「いや違う、こ、これは……」


 咄嗟に立ち上がったバルカスは、ウェインの方を凝視する。


「か、カブトムシだ! 師匠、カブトムシがいたぞっ!」

「……へ!?」

「懐かしいな。俺の故郷では沢山いたんだよ」

「そ、そうですか…… (ふ、ふざけんなっ! カブトムシくらいで大騒ぎするんじゃねえ!)」


 再び、地面に寝そべるバルカス。

 もう疲れがピークだったが、キャンプの師匠とウェインから呼ばれてるので、もう限界だとも言えないでいたのだった。


 すると再びウェインが騒ぎ出す。


「し、師匠大変だっ!」

「……今度は何です? クワガタでもいたんですか?」

「変な奴らに包囲されてるぞ!」


 バルカスは慌てて飛び起き、辺りを見渡した。


 するとそこには、半裸で日に焼けた黒い肌の男達が武器を手に持ち、自分達を取り囲んでいるのが分かった。


「ひ、ひ、人食い部族、……ヤメーメっ!!」


 ウェインとバルカスを取り囲んだのは、まさに山岳地帯の悪魔とも呼ばれる「ヤメーメ族」だったのだ。




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