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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界で生きていく

もう処刑でいいじゃん

作者: ゆう

平民の女が私の婚約者を誘惑する。


「アルフリード様ぁ」


「なんだい?セシル嬢」


こんの欲深王子が。

こんなのでも優秀、そう次期王太子だと持て囃されている。


「アルフリード様、あなたは王子でございます。もう少し節度と言うものを……」


「そんな風に言わなくても良いじゃないですかぁ。ディアナ様ってば、怖いですぅ」

話を遮るな。


「そうだよディアナ。学生の内だよ。青春は楽しんだ者勝ちだよ?」

……ああ、この方は……。


「アルフリード様も、どうかほどほどに」


「大丈夫だよ。まあ、いざとなればセシル嬢を見れば……ねえ?」

セシルは色めき立つ。ディアナを見る目に優越感が混じる。

対してディアナはますます危機感をつのらせる。


「せ、セシル嬢?悪い事は言わないからアルフリード様には近付かないでくださる?」


「ディアナ様、いけませんよぉ。アルフリード様の行動を制限しちゃ。アルフリード様が誰と一緒に居るか決めるのはアルフリード様自身ですもん」


「そうだね、セシル嬢。自分の事は最後には自分が決めるものだ。ね、ディアナ」


「……はい」

どうにか、声を絞り出す。


王子は王として優秀だった。









ディアナは産まれた瞬間から未来の王妃になることを決定付けられた人である。

ディアナは現王を祖父に持つアルフリード王子の従姉妹姫である。

その濃さから、戻るか絶やすかしか道が無い血統の姫であった。


この王の権力が突出した国では、王以外の王族が絶たれる事も珍しくなかった。










学園。

未成年者達の社交界。


その卒業の日が訪れた。ディアナは1年早く入り、あまり優秀とは言えない成績だったが、とりあえずは無事に卒業できた事に安堵した。

ただ、問題は……。



「ディアナ嬢、少々よろしいか」

有無を言わさない口調で声をかけてきたのは、アルフリード王子の側近候補だったファーマ様である。事情により候補は外れたが、彼のお父様は優秀な大臣である。


その他にも、

とある大臣補佐の息子グレル様、

とある騎士の息子ヘクター様、

とある辺境伯の息子ジョン様がセシル嬢を守るように立って居る。

最後に、セシル嬢の後ろに薄く微笑んで佇んで居られるアルフリード様。



今は卒業式が終わった直後。この後卒業パーティーが開かれるが、今現在卒業生を含め多数の方がこちらに注目している。

アルフリード様は動かれない様子。


「……では、個室を用意させましょう」


「いや、いい。すぐに終わる」


「……しかし、ここは人もいらっしゃいますし……」


「貴女に問題が無ければ逃げる必要は無いだろう?」


グレル様、ジョン様が口々に言うが、どうにも嫌な予感しかしない。

逃げるって何!?ふっつーに、貴族の常識からしてこの状況有り得ないから。……ごほん。

「……なんでしょう」


「貴女はセシル嬢に嫌がらせを~」


とりあえず、貴族にあるまじき言葉が聞こえたのでシャットアウト。まともに聞けば気絶しそうだ。

既に野次馬の幾人かは、小さく悲鳴を上げている。


……アルフリード様を盗み見ると何処を見ているのか目を細めてご機嫌そう。


そうして、徐々に、徐々に、取り巻く野次馬貴族に層が出来てきた。手前の方にセシル嬢を擁護する貴族。少し遠巻きにするのは、関わりたく無いけど知らないのも怖い、と言った所か。




「……聞いているのか!ディアナ!」

とうとう呼び捨てになった。

しかし、そろそろか。


「……いいえ?そんな事より、あなた無礼ではなくて?」


「なっ!」


「ディアナこそ、セシルに謝れ」


「本当に傲慢な女だ」


はいはい。出番ですよ。

「アルフリード王子殿下」


「ファーマ、グレル、ヘクター、ジョン。それから、セシル」


「アルフリード様ぁ」

これには周囲も大きくざわつく。


「この私、アルフリードの婚約者であり、王位継承権第12位のディアナに対して……不敬ではないか?」


シン……と静まりかえった。



アルフリード王子は優秀だ。

その人物としての美貌、知力。

王としてカリスマ、そして冷徹さ。

この国の一員としてとても国を愛されている。


きちんと人は見極められ、実力は正当に評価される。

同時に、罪には罰を与えられる。








そこからはあっという間。

セシルと、4人。それからセシルに魅了されたり少なからず王族、ディアナに不満のある手前の方の野次馬。それぞれに罰が与えられ、顔を覚えられ出世の途絶えた貴族達。


優秀な王子によりまとめて貴族達は締められた。


卒業とともに成人されたセシル嬢のステータスには、アルフリード王子の予測通り固有の能力が有ったそうだ。神に祝福された祝子と呼ばれる存在は固有能力を持つ。それは成人までは確認出来ないが成人前から本人は使えると言う。


セシルが持っていた能力は【誘惑】と【強請】。

だからこそ、王子の目に止まった。

だからこそ、数々の貴族が堕ちた。


けれど、感情では惹かれても、理性で抑える事は出来た。

その姿を見なければ、声を聞かなければ、惹かれる事もなかった。内面には魅力が無いので。


それだけこの国の身分の壁は高いと言う事か、多少気になる女子供に堕ちたのは身分をきちんと理解して居ない、理性の弱い人間ばかりだった。

あるいは、セシルも貴族であればもっと多くの人が堕ちたかもしれない。

セシルが平民で満足していれば、愛された生を生きられたかもしれない。

セシル自身が自分を律し売り込めば、外交官として、王子の側近として出世出来たかもしれない。


セシルに目をつけた王子はそれが有用か、危険か自らで見極めていた。


結果は王子に利用されて終わった。

多くの人が見てきたように、ディアナ姫、アルフリード王子への不敬を咎められ処刑された。


セシルの行動がその最期を決めたのだった。

実際、平民の特待生として学園に入った時点で、王子に知られた時点で、国に仕える以外の選択肢は無くなった。

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