アレス 1章-4
6日間連続投稿をします。
今回が4話目の投稿です。
6日目に累計PVが1,000を越えていれば、続きを書きたいと思います。
越えてなくても書くかもしれません。。。
1巡目9番球。なずなは、第1ゲートを通過させるかどうか思案していた。
(佐藤さんは2、4、6番とたてつづけに第2ゲートを一発通過。第2ゲートを外したけど、1巡目8番終了までで7点)
9番が審判によりコールされる。
(反対に私は1番が第2ゲート斜めから通過できる位置に。そして3番球が第2ゲート真横のライン寄りのポケット※の位置に。5番球第2ゲートを1巡目で通過。7番は第2ゲートを外して、ここまでで5点)
※ゲートの真横のゾーンをポケットと呼ぶ。
9番球を置き、第1ゲートを狙う。しかし、まだ迷いがある。
(確率だけで言うと、私の第2ゲート通過は通算で5割程度。佐藤さんは8割強。ここまでに私は第2ゲートを2回狙って、1度通過に成功。佐藤さんは4球中1球のみ外している。私の9番が第2ゲート1巡目で通過する確率は、計算上五分五分。佐藤さんの場合5球中4球は通過させる計算だから、およそ通過するはず)
なずなは迷いながらもバックスイングに入った。
(待って、第1ゲート通過後、私は絶対に第2ゲート通過を狙わないとならないの?)
なずながバックスイングを取りやめ、上体を起こし、第2ゲート裏にある7番球と8番球に目を向けた。
(10番球は確率論上、ほぼ間違いなく第2ゲートを通過してくる。だとしたら、私の9番球はその前に第2ゲートを通過し、第2ゲート裏にある7、8番球を処理しないとならない。通過するってことはそういうことだ。でも、本当に、通るの…?)
なずなが再度バックスイングに入る。
(怖い…!!)
わざとゲートを狙わず9番球は第1ゲートを外した。
≪おおっと、なずな選手9番球を故意にゲート通過させなかったように見えました。≫
≪そうですね。ゲートボールは第1ゲートを通過しないことにはコート内でプレーできませんが、第1ゲートを通過しないことで、次の巡には第1ゲートを通過すれば、もう1度打撃権が与えられる訳です。ここは7番、8番を佐藤の10番球がくる前に処理したいというのがプレイヤーとしての想いなんでしょうが、グッと堪えて未通過球を作りました。≫
≪なずな選手のこのプレーが吉と出るか凶と出るか。ですね≫
(こ、これで良かったのかな…)
10番球がコールされ、佐藤が軽々と第1ゲートを通過した。狙うはやはり第2ゲート。自信が漲っているようにも見える。
≪我らが佐藤の1巡目での第2ゲートの通過確率は8割を越えています。そして佐藤は8番球が第2ゲートを外しています。自身確率信仰者だとも言っていることもあり、表情からも自信あり気に見えますね≫
佐藤が心地良い音を鳴らしボールを打ち出す。
勢いに乗った10番球が第2ゲートを目がけて進んでいく。
しかし、10番球はゲートの右側の足※に当たり弾かれた。
※ゲートの金の部分のこと。
≪ああっと!佐藤が外したー!!≫
勢いの弱まったボールがゆらゆらと第2ゲートポケットにいた3番球に接触した。
会場は歓声に包まれる。
≪凄い!凄いプレーが出ました!第2ゲートを外したと思った10番球が第2ゲートの足に当たり、3番球へタッチしました!≫
≪今日の佐藤は運にも恵まれているのかもしれませんね。ふふふ≫
佐藤が3番球を掴み、10番球を左足で踏み、その横に掴んでいた3番球をくっつけた。スパークの態勢。
≪佐藤のスパークです。タッチが成立するとスパークによって他球を好きな方向、場所へ打つことができます。スティックで打撃するのはあくまで自球のみとなりますので、今回の場合、佐藤は10番球を打った衝撃で3番球を好きな場所へ移動させます≫
3番球を7番の方に向かった打ち出した。3番球が7番球にぶつかり、2球ともがインラインを割った。
≪スパークで打ち出した3番球を7番球へ合わせました。2球ともインラインを割りましたので、3、7番球がアウトボールとなります。アウトボールが増えると、なずな選手厳しくなってきますね≫
≪そうですね。アウトボールの球は、インライン内に打ち入れることはできますが、他球をタッチすることもゲートを通過しても通過が無効となりますからね。ゲートボールは点を取り合うスポーツでもありますが、同時に相手を如何にアウトボールにして、自分たちがどれだけ容易く点を取れる状況を作るのか。そういった作戦がモノをいうスポーツでもあります≫
≪アウトボールというと、解説さんも少し前まで逮捕されてたんで、今はちょうどアウトボールからインラインに打ち入れした所でしょうか?≫
≪そうですねぇ。やっとインラインに入って次の自分の巡が回ってきたという感じでしょうかってオイ!俺は賭け麻雀なんかしてないぞ!!≫
≪そうでしたねぇ。すみません。さ!なずな選手早くもピンチを迎えています!!≫
1番球も10番にタッチされ、第2ゲート横にアウトボールにされた。
(1、3、7番とアウトボール。5番は第4コーナーで目障りではあるが、この試合圧勝だな…!!)
10番球が斜めの位置から第2ゲートを通過した。
≪10番球、仕事を思う存分した上で第2ゲートも通過しました。これで佐藤は1巡目にして9点!パーフェクトも狙える展開となってきました!≫
≪5球全てが30分以内に5点球となるとパーフェクトとなり、コールドゲームとなります。佐藤はこれまでの試合でも前半から飛ばすのでパーフェクト試合が多いのも特徴ですね≫
なずなは空を仰いでいた。
(私が勇気を出さず、怯えてしまったから…、7番だけでなく1番も3番もアウトボールになってしまった…。このまま何もできないの…?)
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19分経過(残り11分)4巡目1番球が終了した所。
≪なずな選手も意外や意外、粘りますねぇ≫
≪目立つプレーはしていませんが、1番球が第2ゲートを通れる位置にいながら、中々第2ゲートを通らず、じっと耐え続けていたことが結果としていい方向へ動いていますね。佐藤はパーフェクトを狙って動いていたので、1巡目で第2ゲート通過を狙い唯一外した8番球を2点ボールにするのに四苦八苦していますね≫
≪点数は赤が1番から1点、1点、2点、1点、0点で計5点。白が2番から3点、3点2点、1点3点で12点。5対12で白が優勢であることには変わりません。このままズルズルとなずな選手何もできず負けていってしまうのでしょうか!?≫
佐藤がノビノビとプレーするのを見つめるなずな。焦りとこのまま耐え続けることで活路が見えるのか分からない不安から、冴えない表情をしている。
(な、何もできない…このまま私のラストゲームは終わっちゃうの…?)
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「あーあー本日は晴天なり。本日は晴天なり」
急に耳の近くから声が聞こえてきて、驚くなずな。
「誰ですか?!どこから?!」
「あんな負けそうだねぇ。あと10分しかないんじゃないの?」
意地が悪く陰湿そうな声が聞こえてきた。
変声機で声を若干変えているようだが、性根が陰湿なのであろう。耳障りの悪い声がよく聞こえ、不快感を抱いてしまう。
それでなくても気持ちが逸っているのに、苛立ちを覚えさせるような物言いに腹が立つ。
「う、うるさい!ゲートボールは最後の5分まで分からないんだから!」
引き笑いが聞こえてきた。好感も何も湧かない。ただ、腹立たしさだけが募る嗤い方だ。
苛立ちからなずなは大きな声を出していた。
「だから誰なんですか!?」
周囲が自分を見てきたので、ハッとした。しかし陰湿な男が放った言葉はそれ以上に耳を疑うようなものだった。
「アレス。そう呼ばれている」
「え…!?」
(アレス…。アレスってあの…?まさか!?)
「あんたが望むなら、この試合俺が勝たせてやろう」
(本当に勝てるのなら、何が何でも、縋り(すがり)付いてでも勝ちたい…!!私は勝ちたい!)
「俺がこの試合ジャックしてやるよ」