第三章 はるかは、やなやつ!・2
はるか ワケあり転校生の7カ月
20『ポッカーン!』
演劇部は……まだペンディングです。
おもしろいからペンディング。
なんだか矛盾……わたしって臆病だから。
バスルームに映った自分の体は、思いの外、大人びていた。でも、乗っかっている顔は、荒川に越してきたばかりのガキンチョの頃のように怒っているように見えた。
吉川裕也、こないだのメールでアカラサマ。
―― デートしようぜ! ――
思い返すと、わたしの彼に対するホンワカには、そう言わせる「媚び」があったのかもしれない。
……ま、いいか、悪い人じゃなさそうだし、一回ぐらい大阪の名所案内してもらうのも。
湯おけを逆さにして湯船に沈める。湯船に沈めるときの抵抗感がおもしろい。湯船の底に着いたところで、ホワーンとひっくり返す。
ポッカーン!
大きな泡が、目の前で爆発。快感!
「アハハハ……」
笑ってみる。ガキンチョのころよくやった。
もっとも、あのころは、泡の向こうにお父さんかお母さんがいたんだけどね。
成城のころはお風呂も大きかった。荒川に越してからは、両親ともども忙しかったことや、お風呂が狭くなったこともあって、お風呂では、お母さんに髪を洗ってもらうくらいで、このポッカーンは、あまりやる機会がなかった。
寝る前に、広辞苑の蓋をとってみると、マサカドクンが、例のポッカーンをやっていた……。
これ以上真似されてはたまらないので、あらためてドスンと広辞苑で蓋をした。一瞬マサカドクンと目が合ったような気がした。




