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はるか ワケあり転校生の7カ月  作者: 大橋むつお
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第一章 はるかの再出発・2

はるか ワケあり転校生の7カ月


2『』




 由香は竹内先生に輪をかけた手際の良さ。


 教室、おトイレ、保健室、食堂、通用門への近道などを教えてくれて、中庭で二人してベンチに腰掛けた。


「こんなもんかなぁ、いっぺんに全部は覚えられへんやろから。あたしなんかドンクサイよって、入学したとき覚えんのにゴールデンウィークまでかかってしもた」

「そうなんだ。わたしも方向オンチだから、これくらいの案内でちょうどよかった……由香さんだったわね?」

「うん、鈴木由香。由香でええよ。あんた、坂東さんやったわね、坂東はるか?」

「え、ああ……うん。坂に東の坂東。はるかはひらがな……」

「……………」


 わたしは「あんた」の二人称に、少し引いてしまった。


「あ、あたし、なにか……」


 由香は方向オンチはともかく、人の微妙な気持ちの揺れなんかには鋭そう。

 こういう場合は直球がいい。


「あの……大阪の二人称って『あんた』……なの?」

「二人称。あ、相手の呼び方?」

「うん」

「そやね、自分とか……たまに、おまえとかやね」

「あたし、こういうシチュエーションであんたって、呼ばれたことないから……」

「あ、東京の子ぉには、ちょっときつう聞こえんねんね。まえ、テレビで言うてた。ほんなら、なんて呼んだらええんやろ?」

「はるかでいいわよ。東京じゃ友だちにはそう呼ばれてたから」

「え、かめへんの? もうあたしら友だち!?」

「う、うん。そちらさえよければ」

「わあ、感激! まえから東京の子ぉと友だちになりたかってん、あたし……あ、単に、東京の子ぉやいうだけやないよ。あんた……あ、ちゃうちゃう(^_^;)、はるかとは、なんか気ぃ合いそうな感じがしたから」

「ありがとう、わたしも!」

「ハハハ……」


 二人の笑い声は中庭に木霊した。


「で、由香。竹内先生になにか用があってきたんじゃない? だったら、そっちの用事……」

「ヘヘ、クラスに転校生の子ぉが来てるゆうんで、用事ありげな顔してただけ。竹内先生には、バレバレやったみたいやけど」

「聞き耳ずきんなんだ、由香って!」

「へへ、デコメで言うたら(^#0#^)な感じ」



 それから、わたしと由香は、東西文化の違いについて、あれこれ話の花を咲かせた。


 大阪は、マックのことをマクドというのは知ってたけど、生で聞くとやっぱ、違いを肌で感じる。エスカレーターの左側を空けておくことや、駅で整列乗車をしないこと。「そうなんだ」という合いの手が、大阪の子には、ちょっと冷たく感じることなど(大阪では「ほんま!?」「そうなんや!?」てな感じで、距離感が近い)を話した。


 そして、これは東西共通。おきまりのメアド交換をした。


 そんな、セミロングとポニーテールの異文化交流を、中庭のど真ん中の大きな蘇鉄の上でマサカドクンがユラユラと、心なし笑って見ていた。

 でも、これは、由香にも、これ読んでるあなたにも理解不能なので、ひとまずシカトすることにします。


 二人で食堂に行こうという、健康な高校二年の女子としては、当然の結論に達して立ち上がり、中庭の角まで行って気が付いた。


 蘇鉄の陰に隠れた身の丈ほどもある巨大なゲンコツ。


「なに、あのゲンコツ?」

「ああ、あれグー像」

「偶像?」

「ううん、ジャンケンホイのグー。ほんまは『初志貫徹の像』とかいうんやけど、どない見てもグーやさかいにグー像。ちなみにそのむこうの入り口の中、生活指導やさかい、要注意」

「へー……」


 数ヶ月後、わたしは、そのグー像の前でとんでもない事件をやらかしてしまうのだけど、その時はトーゼン知るよしもなかった、あのマサカドクンを除いては……。


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