15:エピローグ
突然、目が醒める。
長い長い夢を見ていたようだった。いや、実際見ていた。僕の中には、夢の中での数年間の記憶は割とバッチリ残っていた。そして、夢じゃない、現実での記憶もきちんとある。
隣を見ると、全裸の浜口くん…兵庫がすやすやと寝息を立てて眠っていた。
「浜口くん…」
「ん…どうしたのー、ってその呼び方久々だねー」
もう寺内だっつーのー、兵庫は目をさます。こちらこそ、髪の伸びた兵庫は新鮮だったし、女性として振る舞う兵庫も新鮮だった。何せ、あちらで男性のふりをする兵庫や、そしてそのまま死んでしまう兵庫のことを、見ていたのだ。
全部夢だった、てことなのか。夢でよかった、と思う。けれども。
あの時のような全能感は、もう今、すでに僕の中には存在していない。これは僕が神じゃなかったってことなのだろうか?
わからない。けれども、兵庫は生きている。あの時、夢の中で経験した本当の一人ぼっちよりも、随分とマシだ。
人類が滅亡し、動物も皆死に、草一本生えていない地球。僕はただ缶詰を消費するだけ。あのままだと僕はそのまま餓死していただけだったろう。
ああ、夢でよかった!
けどもう、現実に打開策はない。農業なんて出来やしないし動物も死に絶えているし缶詰生活を送るしかない。缶詰だって他の人たちも食べているわけだからいつなくなるかわからないし、そもそも僕は神じゃないのだからドクロに殺されてもおかしくないのだ。
「ぎゅー」
兵庫が僕にハグする。
「顔怖いよ?一発やっとく?」
「いや、二度寝する」
「だめー」
僕は兵庫のなすがままにされる。
元気付けようとしてくれているのか自分の情欲を満たすためなのか子どもが欲しいからなのかはわからないけど、なんにせよ乗り気になった僕は兵庫とわちゃわちゃになる。それで、事が済むと、兵庫にすこし感謝する。
ありがとう。元気出た。
声にはしないけど。
兵庫に死なれたくないなあ、と思った。もうまともな幸せは手に入らないだろうけど、僕は兵庫に求められることを、求められるだけしてあげるのだ。僕は兵庫がすきだ。僕はこの愛を、出来るだけ多く、優しく、甘く、楽しい形で兵庫に注ぎ込むことにしよう。
僕たちはいつかは死ぬかもしれないけど、出来る限りの幸せを彼女に味わって欲しい。不幸になってほしくない。そうすることで、僕も幸せになるのだ。
「ねえ、ケンちゃん、私より先に死なないでね」
と、道端に転がっていた死体を見て、キミは言った。
嫌だ。
そんなことしたら、僕はひとりぼっちだ。
でも。
「うん」
と僕は快諾する。
キミが先に死ねば僕は生きてられるかわからないけど、僕はキミの幸せを優先しようと思う。僕が死ねば、キミは泣くだろう。僕はキミの泣いている顔はかなり好きだけど、やっぱり笑っている顔の方が好きだ。
僕の答えに、キミは「ありがとう」と笑う。ほら!やっぱり良い!
今この瞬間のために僕は行動したのだ。キミが幸せそうに笑えば僕も幸せだ。
いつも死ぬ時のことを考えているだなんて、つまらないじゃないか。大体、僕が先に死ぬか兵庫が先に死ぬかなんてことはわからないのだ。じゃあ、今キミが笑う方を選択するのが最善だ。
こんな世の中でも、幸せは見つかる。僕は神じゃないから、惨状をどうにかする必要はない。ひどいものはひどいままに、僕たちは美しい幸せを見つけよう。子ども?ああ、作ろう作ろう。サッカーが出来るくらい?僕らを合わせて22人だから、引いて20人?それはダメ。基本的にはお腹を痛めるだなんてして欲しくはない。
でも、どうしてもと言われたら、僕はその通りにしてしまうかもしれない。出来るだけ否定はするだろうけど、そのうちほだされて、ダメと言っていることでも言うとおりにしてしまうかもしれない。それくらい僕は兵庫にデレデレなのだ。大好きなのだ。
だから手始めに、僕は今からこの愛をできるだけ兵庫に伝えてみたいと思う。散々今まで言ってきたことだ。今更すぎるだろうか?
でも普段あまり言わないことだ。
久々に囁く愛の言葉。兵庫は一体どんな顔をするだろう。笑うだろうか、顔を赤くするだろうか。まさか泣くなんてことはないだろう。僕は楽しみでならない。
これにておしまいです。初めは短編にするつもりでしたがなんとなく連載にしてしまいました。読んでいただき、ありがとうございました。
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