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それは困る!

よーし、帰るかな…。

…いやいや!だめだ、だめだ!米内くんが死ぬのは、今日だ!今日の夕方から夜にかけてのこの時間!それまでになんとかして米内くんを見つけないと!人類が滅亡してしまう!



僕は神なのだから、それを何としても阻止しなければならないのだ!



でもまた先生に聞きにいくのは、なんだかなあ…鳩山は頑固なことで有名な教師でもある。なので口は割らない可能性が高い。何か、別の方法はないだろうか。手段は選べない。でも、僕にできることは限りがあるわけだし。先生に聞きに行けはしないし、僕には知らない人に声かけたりできないし。…そうだ。じゃ、僕じゃなかったらいいわけだ。

蘇ったワールドイズマインこと伊藤くんを呼ぶのだ。



伊藤くんは、「お前が頼み事って珍しいな。ま、任せとけ。貸しイチな。今度俺の頼み聞いてもらうからよろしく」と僕の頼みを快く受け入れてくれる。

伊藤くんは本当によく働いてくれた!持ち前の器量!顔!取っ付きやすさ!親しみやすさ!顔!爽やかさ!顔!顔!顔!って感じで、女の子相手には特に、男相手にも余裕で米内松丸くんの情報を引き出していた。



「ねえねえ、ちょっとごめん」

「は、はい、なんですか?(きゃー、超イケメン!)」

「2組に米内松丸くんっているじゃん?」

「あ、私2組です。同じクラスですよ」

「あ、そーなんだ、ちょうどよかった。(ま、知ってて尋ねたんだけどね)ちょっと聞いてもいい?」

「はい」

「彼ってどんなやつ?」

「あ、はい、えーとですね」


大体そんな流れ。ちなみにカッコ内は僕の想像。女の子の場合は大体あってると思う。はしゃぎようが凄まじかった…。そうだよな、惚れちゃうよな。





「…てなわけだ」

「ふーん、さんきゅ」

よし、知りたいことはわかった。

米内くんの行きつけのゲーセン、性格、誕生日、身長、体重、学業成績、交友関係…とかはどうでもいいけど、ちゃんと、知りたかったことも分かった。

米内くんの顔(目は細くて、顔全体的には幼い)と家と、そこに近い公園。米内くんちの周辺には公園は1つしかない。そこだ。そこで張る。

「おう。何しようとしてんのかは知らないけど…手伝おうか?」

「いや、いい」

流石にそこまでは任せられない。

伊藤くんは、「そっか」と言うと、

「今日遊びいってもいい?」

「だめ」

用事がある。それも、緊急の用事が。

「あー、ま、いっか」

「ごめん。手伝ってもらったのに」

「いーんだよ別に。じゃあ、借りはそのうちな」

そして、伊藤くんは帰っていった。

そのうち…そうだ、これが片付いたら伊藤くんの方もなんとかしないとな。まあ、米内くんが死ななければ死の連鎖は起きないわけだからそれに伊藤くんが巻き込まれもしないわけだし、僕が特別何かすることなんてないだろうけど…

僕はその、米内が来る公園で張り込みをすることになる。ベンチに屋根が設置されていたのは、幸いだった…これで日光も辛くはない。僕はその下で、コンビニで買った弁当を食べ、コーヒー牛乳を飲んでラノベを2冊読み、ワンピースの新刊を二度読み、そして時間をかけて推理小説を読みながらのんびり待つ。これでかなりの時間は潰れる。車の音や自転車の音、そして特に足音を気にしながら、僕はじっくりとその小説を読む。これはいわゆるハードボイルド小説ってやつで、僕は一時期、仮面ライダーダブルの影響でハードボイルド小説を読み耽っていた。そして大学生になってそれは再燃していたのだ。記憶ではたしか高校生の時にこの本を所持してはいなかったはずなので、コンビニの近くの本屋で買ってきた。名作だ。ハードボイルドの魅力を語れば尽きないけども最大の魅力をあげるのならば、それはかっこよさだ。硬派で、己を曲げない、強い男。僕はそうは決してなれないだろうなと思うけども、それに憧れ続ける。憧れたところで実行しないんじゃあねえ。強くてかっこいいブレない男を、僕も一度、目指してみるべきなのかもしれない。知らない人には話しかけられないとか女の人と目を合わせられないとか、たまに母さんに切れちゃうとか、そういうのは無くしていくべきなのかもしれない。

そんなふうに考えつつ約5時間待っているうちに六人くらいの男女入り混じった小学生たちが遊びに来て遊具や縄跳びやボールで遊んで楽しく騒いでいるので、そちらに気を取られ一度本を閉じ、それを眺めていると、「ロリコンだー!」ギャハハと馬鹿にされ、そんなこんなで一緒に遊んで、日が落ち始めて、子供たちにバイバイする。どんどん辺りは暗くなってゆき本も読めやしない。それで仕方なく、眠くなり始めた僕がぼーっとしていると、じゃっ、と砂を踏む音がして、眠気は一気にどこかへ飛んで行く。

今度こそ、来たのかもしれない。

キタキタ来た!来た見た勝った!

写真で見た通りの顔!

米内松丸くんが公園に入って来た!

で。彼は、もう既に陽が落ちたこの公園に誰かいないかきょろきょろと辺りを見回して僕を確認すると、踵を返して公園から出ていった。……………‥‥‥……………、…………おいおい、待てよ!

逃げられた、逃げられるのはまずいぞ。

僕は荷物を捨て置いて、すぐさま公園を出る。白い街灯が道を照らす。トボトボと歩く、リュックを背負った米内くんのことも。僕はすぐそれに追いついて、「あのう」と声をかける。知らない人相手だけども、ここは覚悟を決めないと。

振り向いた米内くんはよくみると写真よりも少しやつれていて、疲れてそうな顔だった。生気の抜けた瞳は辺りの暗さでさらに効果的に演出されている。

人を見る目のない僕でも、見るだけでわかる。

こいつ、もう死んでるみたいなもんだ。生きているのは身体だけ。

「なんですか」と米内くんが言うので、僕は「きみ、米内松丸くん、だよね…?」と、つい自明の理を確認してしまう。

「どなたですか、オレと、同じクラスでしたっけ」

「いや、えーと、違うけど、学校同じ」

「そ、そうなんですか…」

そりゃどこから見てもそうだろう。僕たちは同じ学生服を身に纏っていた。

米内くんは何かにビクついているように話す。

何にそんなにビクついているんだろう…?あ、知らない人に話しかけられたら普通そうなるか。僕と一緒。

でもまあ、僕はあまり話しが得意じゃないから、展開は早めに行こう。

「あのさ、どうして君、こんな遅い時間に公園なんかに来たの?」

「こんな時間って、まだそんなに遅くはない」

まあね。僕らは高校生だ。

「いや、そうなんだけど。僕を見て急に踵を返したから…何かやりたかったんじゃないの?」

「公園に来てやりたいことがあるなんて限らないです。でも、…そうですね、1人になりたかっただけです」

「なんでか聞いても、いいのかい」

「いや、見ず知らずの人間にそこまで…まあいいです。テストが悪かったんですよ」

「ああ…なるほど」

「最後の一問、答えミスっちゃって。はは…計算まではあってたんですけど。結論ミスるって。それなかったら100点だったのに…結果返ってきたらまた怒られる」

テストでやらかした時の悔しさというのは、僕にも多少はわかる。問題文をよく読んでなかったが故に間違えるとか、僕にもある話だ。

一度話し始めたら、米内くんは割とつらつらと話し続けた。情報によると米内くんの家は医者の家系で、勉強には厳しいらしい。そんな彼には溜め込んだものがたくさんあるのかもしれない。そうしてしばらくして、

「それで、帰りたくなくて」

「でも、ちゃんと帰らないとね」

「はい…仕方ないんですけどね」

僕は彼の清々しい声音に、よし、と納得する。これでこいつが死ぬことはないんじゃないか?

「ありがとうございました、愚痴を聞いてくれて。スッキリしました。よければなんですけど、連絡先交換しませんか?オレ、クラスに仲の良い友達とかいなくて…」

すっかり打ち解けてくれた彼に、僕は携帯を差し出し、アドレスを交換して、別れる。

「それじゃ、また」

と言って米内くんは去ってゆく。

これでもう、大丈夫のはずだ。はず。

彼はいくら饒舌になろうと、快活に喋ろうと、表情に落とす暗い影をなくすことはなかった。



もしもの話。彼がまだ自殺を試みているのだとしたら。

…一層の事、もう殺してやったほうがいいんじゃないのか?意味ないだろ、生きてるの。死にたいんだったら死なせてやったほうが、色々と、今日僕の友人となった、あいつのためには。

いやいや。

だめだ。

僕には米内くんよりも守らなければならないものはある。彼が死にたいかどうかは別にしても、彼よりも先に僕は、母さんと浜口くんと伊藤くんのために動くのだ。

でもまあ、僕にできることなんて、過去に戻ったところで少ししかないことがわかった。宝くじの番号なんて覚えちゃいないし。

今はとりあえず帰って、米内くんが死なないことを祈るだけだ。あとは、伊藤くんの方もどうにかしないと。




その日の夜、僕は今までにあまりないくらいに夜更かしをした。米内くんとメッセージを送り合い、会話していたのだ。

米内くんはまだ生きている。良かった良かった。


『おれ、今日、本当は死ぬつもりだったんです』


重たいな!今日知り合った相手に打ち解けすぎだ!


『でも、やめました』


そういうことだ。僕は時を遡り、これから起こる惨劇を止めることに成功した。

義務を果たしたのだ。

そんな思い込みは現実にあっけなく引き裂かれる。



伊藤くんが死んだ。

は?

米内くんが死なないのになんで伊藤くんが死ぬんだ?ちょっと意味がわからない。蘇った友達が、こんなにすぐに…そうだ、伊藤くんが死ぬのは、まだもう少し先だったはずだ。なぜ?米内くんを助けた翌日に死ぬだなんて。

そこから連日、死者が増え出す。時を遡らせる前と同じようなことになる。各地でテロは起こり、テロと関係なしに数年かけてじっくりと人類は滅亡する。今度は浜口くんと関わることもない。米内くんは僕の目の前で狂った人に刺されて死ぬ。

僕が一人で生き残る。どうしてこうなった?一体、どうして…米内くんじゃなくて、伊藤くんを死なせないべきだったというのか?僕は失敗した…いや、伊藤くんが死ぬのはまだ少し先だったのに。僕は伊藤くんの悩みをまだ聞いてないのに。おかしい!おかしい!全くわけがわからない…また時間逆行だ。今度は伊藤くんを殺させないように………


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