自分が今誰かなんて夢の中
「よう」
君は…
「久しぶりだな、ケン」
伊藤くんじゃないか。どうして、一体、何が…。
「おいおい、もっと嬉しそうにしろよ、親友よぉ。久々に会えたんだからな」
いや、うん。嬉しい、ちゃ嬉しい、けど…
「ま、俺の方は久々って感じでもないな。見てたわけだし。でもお前の方は、二年ぶりってとこ、だっけ?」
まぁ、そうだね。
「なんだよ、さっきから。ロウテンションだな」
逆ならともかくロウテンション、ってあんまり聞かないけど…いや、言いにくいんだけど。
「なんでも言ってみろ」
寛容だね。この感じ、懐かしいよ。
ええと、そう、なんていうか…君、生き返ったの?
「いや?死んでるけど、こうして会いに来たのさ」
そっか…そうだよね、まあ大方そんな感じなんだろうな、とは思ってたけど…なんていうかさ。死人と話してるっていうこの感じ、変だなーって。
「変かね?ま、死んだことなかったら変に思うかもな」
うん、ていうか、気持ち悪いよ、正直。
「はは、正直だなぁ!そんなこと普通面と向かって言うもんじゃないぜ!…でもま、いいけどな。本当、懐かしいよな」
まあね。
じゃ、折角なんだからたくさん話そうよ。少し気持ち悪いけどこの際仕方がないさ、君とはどのくらいこうしてられるんだい?
「ん、あー…そうだな、3時間ってところか」
そう。短いんだね。
「まぁな〜、でもお前がもっと寝坊助だったらそんなこともなかったんだぜ?まー、あと二時間は伸びたろうよ」
寝坊助?僕の睡眠時間と何が関係あんのさ。
「気づいてねえの?」
何に。
「今、お前がどこにいるのかだよ」
どこに…?
そりゃ、学校だよ。
「ああ、確かにな。でもそれは、今お前がそう思ったからそうなったわけだろう?」
はあ?何言ってるんだよ、僕たちはずっと、学校で話してたじゃないか。
「うーん…それはお前がそう思い込んでいるだけさ、後から考えたことに記憶が上書きされて…夢ん中って、結構あやふやなところがあるし…って、答え言っちまった」
ん?何?答え、…夢の中?夢の中!え、ここ夢なのか!
じゃ、これは明晰夢ってやつ?
「自分で気づいてないけど、まあ。そうなんじゃねえか?」
へえ、そうなのか…。
「まあまあ、そんなことよりよ、大変だったよな。俺がいない間に世の中大変になっちまったよな」
そうだね。
まあ、何より辛いのは、楽しみにしてた漫画が読めなくなってしまったことだよね。
「ああ…いいところだったもんな」
あと、仮面ライダーが最終回目前で観れなくなってしまったし。
「それはわかんねえけど…でもそれなら、映画会社に行けばフィルムでも置いてあるんじゃねえの?最終回目前ってんなら撮り終わってるだろ」
ああ、名案だねそれは…。でも電気がなあ。
「発電機でもなんでもあるさ」
おお、伊藤くん。君はまるで泉のようにじゃぶじゃぶアイデアを生み出すね。ミスターアイデアマンだね。
「ていうか、お前が考えなさすぎ…」
まあね。
まあ、あとは…。
「彼女ができただろ」
ああ!
報告するの忘れてた。
「いいよいいよ。見てたからさ。知ってはいるよ」
おお、あの世ネットワーク…
「ははは。でもまさか、だよな〜。まさか浜口が女子だなんてな」
でも言われてみりゃ納得でしょ?
「言われてみれば、な。でも言われてみないとわかんねえよ。お前は最初のあいつとそこまで関わってなかったろうけどな…ありゃ、演技派だな」
確かに…もうあの頃の弱気な兵庫なんて想像もつかないよ。
「兵庫、って名前呼びなんだもんな〜」
うん。…あれ、まさかだけど、伊藤くん、僕と兵庫のセ…
「見てない見てない!そこまで悪趣味じゃねえさ、俺も!ていうか俺、実はお前に彼女ができてからそんなにお前のこと見てなくてさ、せっかくだから世界中をぶらりと…」
え、なんで僕のこと見てくれてないんだ!
「はははは!キレんなよ!まーあれだね、恋人同士がイチャイチャしてるの見るの、好きじゃねえんだよな、俺。人形だとしてもな」
はあ?自分にも彼女いただろ…三股とかして。
「さらっと嘘つくなよな、やっても二股までだよ。だから何ってわけでもねえけどな。自分でやるのと他人のやるのを見るのとでは、違うって話だよ」
ふぅん、まあいいけど…
※
「そろそろ時間だな」
今日は楽しかったよ、ありがとう。
また夢の中に出てこれるのかい?…って、明日には死んでるかもわからないけどね。
「ああ、そのことなんだけどな…そうだった。俺、お前に用事があったんだよ」
用事?
「謝りたくて」
へえ。謝ればいいと思うけど。
「尊大だな。助かるぜ」
まあね。
「全世界の急激な人口減少が、米内松丸の自殺から、って予想してたろ?お前」
ああ…あったね、そんな名前。
聞いたことがあるよ。大昔にね。
で?
「あれ、違うんだ」
へえ。だから?
「俺なんだよ」
ふぅん、なるほどね……………。
……………え?
「俺が死んだから、世界中の人々が死んでたってことさ。もっとも、それももうじきおしまいだけどな…」
え、君が死んだからって…え?
「言ったろ?俺が世界の全てだって…でも、死んでみてわかった。俺は、流石にそこまでデカイ存在じゃなかった。でも、いなくなったら世界がどうにかなるくらいの重要さは、紛れもなくあったらしい」
確かに言ってたけど、それは君のくだらない妄想だと思ってたのに。
「くだらないって…あはは!酷いよな、お前。でも、そうなんだよ。まあお前にしたら関係ないかな、米内のせいにしろ俺のせいにしろ、テロのせいにしろ。誰のせいにしろ、さ。確かに俺が今言ってることも全部妄想なのかもしれないよな。しかし自己満足くらいはさせてくれよ。ごめんな?」
いや、僕は死んでないし…でも、兵庫が死んでしまったら…
「…………」
別にどうしようもないけどね。
「……ごめんな」
うん。
いいよ、仕方がないんだ。
仕方がない……でも最近、僕も怖いんだ。どうしようもないほどに。
「怖い?」
うん。
「死ぬのが?」
一人になるのが…。
君がいなくなった後、テロが起こって、また学校にで始めた時には浜口くんに話しかけてもらえるようになっていたけど、それがなぜだか今までうまいこと続いて、より深い仲になっていってる。
浜口くんに死んでほしくないんだよ。
「もう時間だな、でも言っとくぜ、俺がお前に相談を持ちかけた時、俺がお前のことでも1つだけ言っておいたことがあるだろ、それもあながち、間違いじゃなかったらしい。じゃあ…」
僕の意識は覚醒する。
言っておいたこと?なんだろう。




