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ゴーレムVS従士

森の中を迷うことなく追跡してくるのは妙だった。


何か仕掛けが有る筈だと、ゴーレムの男は木ノ上から様子を伺った。


(追跡は直線的だな、まるで………)

まるで、実際に死んだ従士が走った所を後続の追跡者達がなぞる様に進むので、ゴーレムの男は何かあると、後ろに回り込んだ。


(獣道を突き進んでいる訳ではないな)

森の生き物が通る傾斜や草の少ない獣道だけでなく、脇道に逸れたりとかなり蛇行していた。


途中、馬に乗った従士が木を指差す。

指差した先の木の幹には青い塗料が塗られていた。


(なるほど。青い粉を持っておったが、そう使っていたのか。面白い)

ゴーレムの男は先回りをすると、口から青い塗料を吐き出した。




「ったく、どんだけ手間取ってんだ」

森の中を進めど進めど追い付けないので、追跡者達はイライラしていた。

普段なら逃亡奴隷など出入りの奴隷商人に対処を任すのだが、奴隷が産んだ子供のせいで、そうは行かなかった。仕えている当主のイゴール卿の命令は“悪魔を殺し、奴隷を連れ戻せ”だ。

人猫の奴隷が御子息との間に作った子供だと噂されているがとんでもない話だった。騎士の跡取りが悪魔の子供を持つなど、外に出せる話ではなかった。


「お助け下され~!」

窪地に出たところで、追跡者達の目の前に血を流した老婆が倒れていた。

リーダーが指示を出し、一団は止まった。


「大丈夫かい、婆さん」

弓兵が老婆に歩み寄る。


「熊じゃ、熊が出た。若い男達が喰われた」

老婆の一言に、追跡者達は少なからず動揺した。


「男だけか?女は?」

リーダーの質問に老婆は一点を指差した。

「男は彼処で喰われた。女は熊が連れてった」

窪地の先、登坂を老婆は指差した。

「あの先ですじゃ」


「見てこい」

歩兵に指示を出すと、リーダー達は馬を降り老婆に近づいた。


「女は赤ん坊を連れていなかったか?」

「あー、連れとった。猫の尻尾を着けた赤子をな。わしゃぁ助けようとしたんだが、熊の奴………」


“子供を見られた”


リーダーは他の従士に目で合図をした。


従士が2人掛かりで老婆を拘束した。

「な、何をするんじゃ!離さんか!」

リーダーが剣を抜くが、老婆は両脇を掴まれているため身動きが出来ない。

「悪いな、悪魔を見られた以上。死んでもらうぞ」




「うわぁ………」

食い荒らされた死体を見つけ、兵士達は口元を押さえた。

「嗚呼、酷ぇ…」

肉片が付いた骨や、衣服、馬具等が散乱していた。


「おかしくないか?」

「何がだよ?」

1人が違和感を感じた。


「血が少ない、まるで余所から運ばれたみたいじゃないか?それに、骨に肉が付いてないし、量も少ない気がする」

「そう言えば、頭蓋骨とか無いな。脚とか………これ馬の骨か?」

確かに綺麗に肉が剥がされており、見れば見るほど奇妙だった。


「ぎゃああああぁぁぁ!」


「なんだ!?」

リーダー達が居る方向からだった。

「戻るぞ」




「あああああぁぁぁぁぁっ!」

老婆の右腕を掴んでいた従士が老婆の怪力で手首をもぎ取られ、その場に踞った。

「うわあっ!」

左腕を掴んでいる従士は恐怖で叫び声を上げ、動けなくなった。


老婆はあり得ない角度で身体を捩ると、そのままの勢いで左腕を掴んでいた従士の顎を殴り、従士の下顎はもげ落ちた。

「化け物だ!」


リーダーが声を上げ、老婆の肩を剣で斬りつけたが、手応えがなかった。

「良い剣だな」

それどころか、剣が老婆の身体にそのままの取り込まれてしまう。

「うっ!」

老婆の肩から腕が生え、リーダーは手首を掴まれた。

「座ってろ!」

男の声だった。


そのまま引っ張られ、膝を着いたリーダーは鈍い痛みを両足に感じた。


老婆から更に別の腕が延び、両足を握り潰されたのだ。


「わっわっわっ」

一瞬で3人がやられ、遠巻きに見ていた従士2人は恐怖に飲まれ逃げ出した。

「待てぇ!」


老婆の進路上に居た下顎がもげ落ちた従士が居たが。

「退けぇい!」

老婆は従士の脇腹を殴り付けられ、衝撃で上半身と下半身がネジ切れ即死した。


「た、助け!」

躓き、草地を這いつくばって逃げる1人の首を老婆は容赦なく掴んだ。

「地獄で詫びろ!」


首を引き抜き、坂を上り逃げるもう1人に投げ付けた。


「何事ですか?」

坂の上に兵士が戻るのと、逃げる従士の頭が吹き飛ぶのは同時だった。

「はぁっ!?」


状況が掴めない兵士の目に全力疾走する老婆が飛び込んできた。




遠くから部下の叫び声を聞きながら、リーダーは両手首をもぎ取られた従士の元へ這っていた。

剣が化け物に効かない事は判った、自決用に刃物が欲しかったのだ。足を潰された時に、小刀(タガー)や毒瓶等が無くなっていたのだ。




グシャリ




音もなく老婆が跳んできて、手首をもぎ取られた従士が踏み潰された。

「ふんっ」

老婆は生き残った従士のリーダーを蹴り倒すと、男の声のまま質問を始めた。


「小僧、何で人猫の娘っ子を追う?」

「誰が言うか、クソッタレ」


老婆が従士の腹に手を当てた。

「あっく……何を…」

老婆の手が腹の中に入った。

「や、止めろ。よせ、な、何をしている」

不思議と痛みは無かったが、腹の中をまさぐられる感覚が襲い、リーダーは脂汗を掻いた。


「あっ!はあっ!はああ!」

胃を掴まれた。

「もう要らんだろ?」

何かが引きちぎれる感覚と共に、老婆が手を抜くと、胃袋が握られていた。


「クソ、やりやがったな」

口元を血で滲ませながら、リーダーは呪いの言葉を吐いたが、老婆は真っ直ぐとリーダーの目を見据えていた。


「どの口がほざく。赤子を手にかけようとする鬼畜が!」

老婆はリーダーの顔をビンタした。


「赤子だぁ?悪魔だろうが?」

もう一度、老婆が腹に手を入れた。


「あの子の父親は無事か?」

横隔膜が持ち上げられ、息が止まった。

「イゴールの倅の事だ。無事なのか?」

「あの……アバズレ。喋ったな」

リーダーが呼吸を乱し、ひきつり始めたので手を抜かれた。


「あの親子は此方で保護している。言え、リシャルドは無事か?」

「………無事だ。城に軟禁している。今はな………。あの魔女が悪魔さえ産まなきゃこんな事に………」


血を吐きながら、リーダーは恨み言を続けた。


「あの魔女………リシャルドの心を奪うだけに飽きたらず、悪魔まで。一体何が狙いだ!」

「ああ"?」

老婆に化けているゴーレムは“何言ってんだ、この餓鬼?”と眉をひそめた。


「2度も邪魔しやがって。18年前はリシャルドの兄貴と妻を拐かした上に、今度はリシャルドの婚姻を滅茶苦茶にする気か!?」

急に身に覚えが無いことで文句を言い出した。


「知らんな」

ゴーレムはそれだけ言うと、リーダーの首に手を掛けた。

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