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脱走騒ぎ

気付いたら拷問シーンのせいでスプラッター小説になったので(ソ連式)尋問シーンにしました。

「人数は?」

「15名です」

囚人全員を檻から出し、シュルペは人数を確認した。


「武器は剣が2本に短剣2本か」

「隊長、こっちに詰め所が。武器も幾つか置いてあります」

部下のカールが武器を見付けていた。


「よし、心得が有るものは武器を手に取れ、そうじゃない者は後ろからついてこい」

とシュルペが言ったものの。捕虜の半分は神殿の僧侶や巫女なので、実質的な戦力はシュルペを含めて5人ほどだった。


とは言え、やるしか無い以上、一行はこの先の尋問(・・)部屋へ向かった。

「転移するとして、道具は有るのか?」

転移門を作るには、血と触媒として銀、そして座標が必要だった。


「この先に居る拷問官が銀製のナイフを使っていますし、座標も暗記しています。血は拷問官から借りるとしましょう」

「そうか………」


「あああっあ!あああああ!!」

通路の奥から男の叫び声が聞こえてきた。



尋問部屋では、捕虜が椅子に縛られていた。

「素直になったらどうだ?ナチの事を言うだけで良いんだ」

答えを拒否する度に魔法で電流を流され、捕虜は身体中に火傷を負っていた。

「し、知らない。転生者の事で知っているのは社会党の人間が居るぐらいだ」


尋問官の男は短くため息を吐き、「やれ」と魔術師に指示を出した。

魔術師がバケツに入った水を頭に掛け、手を捕虜の頭に乗せると電流が流れた。

「うわああああぁぁぁぁ!!」

「我々は忍耐強い方だが、我慢の限界って物が有るんだよ」


不意に叫び声が止み、捕虜がだらりと脱力したので、慌てて電流が止められた。

「蘇生しろ」

電流を流していた魔術師が今度は捕虜の胸に手を当て、回復魔法で強引に蘇生させた。


「うっ!ゲッフォ!ゴホ」


「誰だ?」

尋問部屋の扉の覗き口から中を窺うカールにシュルペは声を掛けた。

「知らん奴ですが、恐らく僧侶かと」


「た、頼む。本当に知らないんだ。助けてくれ」

泣き始めた捕虜の顔に尋問官は容赦なく棍棒を叩き付けた。


「どの口が、言ってるのかな?どの口が」


「行くぞ」

シュルペが指示を出したが。

「待ってください」

巫女の1人がシュルペ達を止めると、壁に埋め込まれた蓋を開けた。

「有った。光石に魔力を送っている回路です。コレを弄れば………」


「強情な奴だな」

捕虜が血反吐を吐きながら「本当なんだ………知らないんだ………」と啜り泣いた。


尋問官が壁際に投げ捨てて有った斧を手に取った。

「残念だよ。折角チャンスをくれてやったのに」

「や、止めろ!」


不意に、チカチカと光石の証明が暗くなったり明るくなったりを繰り返し、終いには段々と暗くなった。

「何だ?」


(drei)(zwei)(eins)

シュルペのカウントに合わせ、今度は光石がまるで昼間の太陽の様に輝き、尋問官と魔術師の目を眩ませた。

「うわっ!」


行け(Los)行け(Los)行け(Los)!」

シュルペ達が踏み込んだ時には普通の光量にまで戻り。難なく尋問官と魔術師はカールとヘルマンに斬り倒された。


仕掛け自体は単純だった。

巫女が光石に魔力を供給している魔術回路の働きを抑え、暗くし。中に居る人狼の目が集まった時に、一気に魔力を送り、思いっきり光らせたのだ。


「おい、大丈夫か?」

何が起きたのか、拷問されていた男は状況が掴めなかった。

「ああ、だ、大丈夫だ」


アントンが手枷を外し、巫女が傷を癒したところで、少しずつ落ち着きを取り戻した。

「あいつら、ナチ党の事を知りたがっていた」

「ナチ党?何で?」

男はゆっくりと立ち上がりながらシュルペの質問に答えた。


「わからない。転生者にナチ党員が居ないか?鍵十字のシンボルを見た事無いか?ファシストは居ないか。そんな質問ばかりだ」


「隊長、有りました」

ヘルマンが尋問官の死体から銀製のナイフを見つけ出した。

「よし。誰か粉に出来るか?」

シュルペの質問にシャハト卿が手を上げた。


「ん?おい、どうした?」

異変に気づき様子を見に来たクヴィルの兵士が通路の扉を叩きながら叫んだ。

地下牢は20の房が1組になっており、房から見て出入口の手前側に“尋問室”と詰所が配置されていた。そして、その出入口の扉は普段開けっ放しにする規則があるのだが、内側から施錠されていたので外の兵士にバレたのだ。


「時間がない、急ぎましょう。アントン、ありったけの椅子や棚でバリケードを作れ。ヘルマン、血をバケツに集めてくれ」




「行け!」

ドスンっ!と扉が音を立てた。

クヴィルの兵士が丸太を持ち出し、扉を破ろうと打ち付け始めたのだ。


「隊長っ!」

バリケードを組んだとは言え、扉が軋みを上げるのを見て、アントンは声を出した。

「もうすぐだ」

シュルペは円を書き、中に転移門の座標を必死に書き込んでいた。


「終わった、後は………」

シュルペが書き終わった転移門に手を付くと、3回光った。

「全員、転移門の中へ」

シュルペの指示で転移門の中に入ったが………。


「………転移は?」

一向に転移する様子はなかった。

失敗か?とシュルペ以外の全員が動揺する。

「どうなってるんですか!?」

「待て!」

シュルペは再び転移門に手を付いた。

「気付いてくれ、アデルハルト」


とうとう、大きな音を立て、扉が破られた。

Halt(止まれ)!」

Hände(手を) hoch!(上げろ)

ドイツ語で叫びながら、クヴィルの兵士が武器を構え、バリケードを乗り越えてきた。




「陛下、転移門に反応です」

神殿の転移門が開き、水と一緒に鮫の化け物が溢れ出た事件以降。神聖王国では転移門を一時的に閉じる処置がとられていた。

「場所は判るか?」

神聖王国のアデルハルト王の居城に設置された転移門も例外では無い。今までは外から開門要請の念波が届くと、相手先の転移門の大きさや座標に合わせて、城に設置された“ルーター回路”と呼ばれる魔術回路が最適な転移門を開いていたが。現在は、魔術師が常駐して、緊急以外では転移門が開かないようにしていた。


「南の方、距離からすると人狼の領地です」

アデルハルト王が開きかけた転移門に近付きの中に描かれた模様を確認した。

「確かに南だが………コレはっ!」


模様は座標の他に、花の絵が浮かび上がった。

「エリカ………。開けろ!今すぐにだ!」

「し、しかし」

「良いから開けろ!」

王の命令で、魔術師は転移門を開いた。



Hände(手を) hoch!(上げろ)

クヴィルの兵士が弓矢を構えシュルペに狙いを付けた。

「隊長………」

唯一命令を聞かないシュルペに業を煮やし、クヴィルの兵士が矢を放ったが空を切った。


「なっ!くっそ、転移か!」

寸でのところで、捕虜達の転移が間に合ったのだ。


「シュルペ………無事か!?」

転移すると、目の前にアデルハルト王が居たので、シュルペを除く一同は礼をした。

「アデルハルト、友よ。間一髪だったぞ」


王と一介の小隊長が肩を叩きながら喜びあっている様を見て、事情を知らない若い僧侶や巫女は怪訝な顔をした。

シュルペは、かつてアデルハルト王が僧侶だった時に同室だった親友なのだ。





「言っておくが、憲法を制定するにあたって、私が居なくなっても自動的に権限が議会に移譲できるか、そもそも魔王に権限が無い方向で作りたいのだ」

カエが言い放った言葉に会議がどよめいたのを尻目に、再びリーゼがニュクスの元に報告に来た。


「先程お伝えした、囚人ですが。無事に転移し神聖王国に戻りました」

ニュクスはクスリと笑うと、「ご苦労様、下がって良いわ」と指示を出した。


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