盗賊の災難
具合が悪くて土日殆ど寝てしまったorz
「で、じじいの話だと此処に集落が増えてっから………っ!」
チェスワフ部族長から押し付けられた、厄介事の確認中に気配を感じ、一同は慌てて机の上の物を雑嚢にしまった。
コンッコンッ!と、ノックされ「食事の用意が出来たよー」と、アガタの声が聞こえた。
「お、待ってました!」
上機嫌にフランツ達が尻尾を降りながら、物をテーブルの引き出し等にしまい、尻尾の毛を何本か抜くと、引き出しとテーブルの間に張り合わせた。
「何をしてるんですか?」
「ん?」
毛を張り合わせている事かと、フランツは気付いた。
「誰かが開ければ、毛が無くなって一目で気付けるようにね」
フランツ達の行動は空き巣対策だった。
「うわー、凄い」
エルナが寝てた部屋に戻ると、運び込まれた大きなテーブルの上に、揚げたイモ、ミートローフ、Tボーンステーキ、コーンスローサラダ、ミートボール入りパスタ、生地の分厚いピザ、ジンジャークッキーを人形に焼いたジンジャーブレッドマン等の料理が乗った大皿が並んでいた。
「わー………」
ニナと起きたエルナがご馳走を前に目を輝かせていた。
「フランツさん大丈夫なの?」
「何がぁ?」
トマシュから不意に質問され、フランツは声を裏返した。
「高いでしょコレ」
“ああ、何だ”と、フランツは納得し。“まだ、13の子供なんだからそんな事を気にしなくても良いのに”と思った。
「これでも、二部屋借りた料金も含めて、銀貨2枚だぞ」
「え"!?」
トマシュは一瞬、聞き間違いかと思った。これだけ食事が出れば、普通は一部屋で銀貨5枚が相場だった。
「くっだんない事を気にすんな。ほらさっさと食わないと、お前の彼女に全部食われっぞ」
「え?」
フランツが指差した先で、イシスが“手掴み”でTボーンステーキを頬張ろうとしていた。
「うわっ!イシス!ナイフとフォークを使ってよ!」
肉に歯を立たせ、耳を真後ろに倒した凄い顔で骨から肉を引きちぎろうと、イシスは四苦八苦していた。
「よし、やれ」
フランツ達一行の食事が始まって、暫くたった頃。宿の裏口から人狼の男が二人、人目につかぬように忍び込んできた。
「あーっ!ワハハハ!」
フランツの馬鹿笑いが聴こえてくる2番目の部屋ではなく、1番手前の部屋に狙いを付け、老けた方の男が鍵を抉じ開けた。
「ハズレか?」
パッと見、外套が掛けられている以外、荷物がないので、若い方の男が言葉を漏らす。
「いや、あの間抜け面は多分冒険者だ、隠してるな」
「ぶっえっくしゃい!畜生!」
フランツのくしゃみに、ショーンが「God bless you」と反射的に言った。
「何さいったい?」
隣の席に居たアガタが文句を言われたが、フランツに「あー、多分女の子に噂されてるんだろ」と言われたので、アガタはフランツの右頬を思いっきりつねった。
「有ったぞ」
フランツの叫び声を聞き流しつつ、部屋を漁っていた男達は、毛布の山の中に隠された雑嚢を見つけた。
「良いか?高価な物はよせ、銀貨も数枚だけだ」
ごっそり盗むと直ぐにバレるが、少しだけ盗むと意外とバレず。場合によっては、気付かれない事すらあるのだ。
「へいっ」
………カタンッ!
若い方の男が雑嚢に手を掛けると、背後で何か固いものが落ちた。
「音立てんな」
「何もやってませんよ」
コロコロコロ………。
鉛色をした拳大の金属の玉が物陰から転がり出てきた。
「なんだ?」
「良いから早くしろ!」
老けた方の男が荷物を漁ろうとするが、若い方の男はどうも玉が気になり眺めていた。
「何これ美味しいー!」
イシスが飲んだ物がビールだと気付き、トマシュが慌てて取り上げようとした。
「それお酒だよ!」
身体を左に捩り、ビールが入ったゴブレットを取られまいと抵抗した。
「良いでしょ。私は…………」
ふと思った、自分は何歳だと。
前世は14歳の時に暗殺されて、以後はカエやニュクスの身体を間借りしてたし。その後は、ニュクスは17歳で弟に殺されたし、カエは18歳で死んで、神様の所で1年居たから。
「私は大人だから良いの!………(たぶん」
「見えないよ!」
「確かに大人には見えないなあ、前世だったら職質してるわ」
フランツがピザを頬張りながら言った。
「てか、魔王様は自称18歳だけど、21歳未満だと飲酒出来ないでしょ」
ショーンの一言に「そう言えばそうだな」とデイブが立ち上がり、イシスからゴブレットを取り上げようとした。
「っちょ、デイブさんまで!」
まさか、デイブまで取り上げようとしてきたので、イシスは耳をイカ耳の状態にし、ゴブレットの中身を一気に飲み干した。
「プッは…」
まさかの一気飲みに、アガタとニナは口を開けた。
「あらら」
「わー、いいのみっぷり」
本当に一気飲みしたのか、トマシュはゴブレットを覗き込み確認した。
「あーもう、てか何処からビールを取ったの?」
右手で口を押さえつつ、ゲップを我慢するイシスは左手で置かれていた場所を示した。
「っちょ、それ俺のビールじゃん!」
デイブのビールだった。
「美味しかった」
イシスはケプッと小さくゲップを漏らした。
「ビールって何か臭い飲み物ってイメージだったけど(っぷふ、此処のは美味しいね(プヒュッ」
フランツが揚げたイモを自分の皿に盛ってから説明を始めた。
「此所のビールはビール醸造所で働いてた転生者が作っているからな。土産品で売ってるし帰りに買って帰るのも」
「ぎゃああああぁぁぁっ!」
「ウッグッ!」
突然、叫び声がしたのでビールを飲んでいたショーンが噎せかえった。
「何だ!?」
フランツが慌てて短剣を抜いた。
「っ!誰か隣の部屋に居る!」
トマシュが念波を飛ばすと、2人程隣の部屋に反応があった。
「あああああっ!」
老けた方の男の顔面に金属の玉だった物が液体に変化し、目や鼻を塞ごうと纏まり付いていた。
「あああっ!ひいいぃぃぃっ!」
若い方の男は腰を抜かして倒れた。
「わっわっ!」
文字通り尻尾を巻き、這って逃げようとする若い方の男の脚を別の金属の玉から伸びた触手が引っ張った。
「あがっ!」
まるで熊か何かに脚を押さえ付けられた衝撃に、若い方の男の足首が軋んだ。
「あぁっ!クッソ!」
老けた方の男が火魔法を使い、生み出した火炎で顔に纏まり付いていた液体化した金属の玉を炙り、引き剥がした。
「逃げるぞ!」
若い方の男を捕まえていた金属の玉に火を投げつけて怯んだ隙に、脇を抱え込み廊下に出る為に扉を蹴った。
「ふっぎゃっ!」
何か間抜けな声が聴こえたが、男2人は振り返る事なく、宿屋の裏口から飛び出し、闇夜に消えて行った。




