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カエも乱入する

「今回の捜索で掛かった費用は全てギルド長が支払うと申し出がありました。また、捕虜の尋問に協力したいとも」


魔王の執務室に現れたカミルとマリアの姉弟、カミラから冒険者ギルドからの申し出を聞いていた。

「捕虜の尋問って言うけど、また痛め付けて遊ぶ気じゃないの?」


新しく用意された自分の机に頬杖を付きながら、ニュクスは言い放った。

「あんなことをされたんじゃね。リーゼなんか、前世は子供だったのに」


ニュクスの言葉を聞いたカミラは魔王の横、本来ならエミリアの机に座っているマリアに視線を向けた。


何故、そこに座っているのかと言うと。エミリア本人が仕事を出来る状態じゃないからだ。

昨日、目が覚めたカミルはこっぴどく魔王3兄妹に叱られ、とうとう婚約をしたのだ。

勿論、エミリアは承諾したのだが、嬉しさのあまり一睡もしておらず、魔王が様子を見に行くと枕に顔を突っ込み未だに悶えていたので放置されている。


そして、魔王の秘書代理に選ばれたのが、リーゼが拷問を受けた一件以降、冒険者ギルドに顔を出していないマリアだった。


「異常だった。泣き叫ぶ転生者を寄ってたかって暴行して、骨が折れたりしたら魔法で治してたけど、適切に処置されてないから歪になって腰が曲がってたし」

リーゼが寝ている間に、こっそりとニュクスと一緒に治していたが、身体のダメージは大きかった。


「………冒険者ギルドは今世での“ナチ党”の台頭を防ぐ事を目的に活動しています。今回の行動はミハウ部族長と事前に取り決めた枠内の行動です」




『って言ってたんだけど、ナチ党って何?』

『と、唐突だね。君と言い、イシスと言い』


朝の出来事を急に念話で相談してきたカエに、ライネは驚きつつも、本当に困っている様子に“無下に出来ないしなあ”と相談に乗ることにした。


本当はカエが突然“16歳未満の兵士は給料を全額保証した上で一度除隊させる”と勅命を出した煽りで、荷物を隊舎から実家へ運び出す作業の真っ最中で忙しいのだが。


『まず………。(political)(party)って判らないもんね?』

『政治的な価値観や目的が同じ集団だっけ?近代の選挙制度で出来た概念だったよな?』


なんだかんだ魔王は、言葉だけでなく、政治制度も勉強していた。

『大体合ってるよ。で、ナチ党なんだけど、“National(国民)soziali(社会)stische(主義) Deutsche (ドイツ)Arbeiter(労働者)partei()って正式名称で、世界大戦を起こした連中だよ』

普段余り感情を出さないライネが嫌そうに説明を始めた。


『“前の戦争で押し付けられた不平等な条約を解消する”とか“アーリア人至上主義”や“反ユダヤ主義”って言った、当時国民受けが良かった主張を掲げて当時のヨーロッパ中に一気に広がったんだ。

僕が住んでたイギリス………。カエの時代だとブリタニアって呼ばれてた国だけど、ナチ党と同じ思想、“ファシズム”を掲げた政党が台頭してきたから戦争が始まると直ぐに関係者は全員逮捕されたし、戦後も………………ってカエどうしたの?』


何か、カエからモヤモヤとした感情が流れてきた。

『ブリタニア人なのか………』

『え?』


何故急にカエが困惑したのかライネには判らなかった。

『まあ、その。ブリタニア人も嫌がる程、酷いってことか』

カエのイメージでは、ブリタニア人は青い刺青を全身に入れ、暴力が全てのヤバい部族連合というイメージだった。


『………多分、カエが想像している程、イギリスは酷くないよ。ドイツと違ってローマ化してるし、カエが生きてた時代から2000年は経ってるんだから』

アルトゥルが言った、“ドイツと違ってローマ化している”は、ドイツ本土と違い、先にブリタニアが属国化したと主張する考えからだった。


『話を戻すけど。ナチ党は聞こえが良い事を主張して、選挙で過半数を取った途端に独裁制を始めてね。内政では最初こそ国民の為に色々と政策を実行してたけど、外政では、さっき言った条約の破棄を宣言して、再軍備も始め、周辺国を次々と併合し出したんだ』

『周辺国を併合?反対運動とか無かったのか?』


『無いわけじゃ無いさ。只、“前の大戦”でドイツが負ける前はドイツの領土だった地域だったし。ドイツ人も多く住んでいたのと、現地のナチ党が政治工作をしたり、武力で脅したりして、反対派は黙らせられたんだ。でも、余りにも度が過ぎてね。最後は要求を拒否した国に攻め込んで、それが原因で世界中の国がドイツと戦いだしたんだ』

『それが原因ね………』


『その後は、悲惨な戦争が6年も続いてね。僕は当時学生だったけど、クラスの同級生は何人も戦争に行って戻ってこなかったし、婚約者もドイツ軍の攻撃で死んだし。軍に入って戦争に行ってる間に家も破壊されて、人生を滅茶苦茶にされた』


『人生を滅茶苦茶にされたと言うが、リーゼは?彼女も父親と兄を戦争で亡くなった上に故郷を失った』

『それが何で、ナチと協力を?』


『聞いた話だと。今世、まだ名付けられる前に神官が来て、親元から引き離されたそうだ。そのまま、転生者を集めて作った組織で魔法や戦闘訓練を受けたそうだ。“魔王から世界を護るため”とな』

『くそ………』

ライネが汚い言葉を使うのを聞くのは、始めてかもしれない。


「また、アイツ等は………!」

ライネが投げた金属製のゴブレットが床に叩きつけられた。

「ライネさん!何の騒ぎですか!?」

音を聞き付けて、隣の部屋の初年兵が顔を出した。


「Noth…。何でもない、手が滑っただけだ」

ライネの説明に納得した訳ではないが、“除隊させられ気が立ってる”と思い、自分の部屋に戻った。


頭を掻きむしり、気持ちを落ち着かせてからライネはベッドに座った。

『戦争が末期になって、僕達イギリス軍やアルトゥル達アメリカ軍がドイツ本土に進行すると、老人や子供が兵士に交じりだしたんだ。大人達が残ってないから、ナチ連中は残ってた家族を戦争に駆り出したんだ。それで、善悪がつかない子供を騙して国民突撃隊に入れたり。協力を拒んだ人達の死体を何度も見た。多分、アイツ等は、また恐怖で人を騙して協力をさせてるんじゃないかな?』


『それで、そんな状況でドイツはどうなった?』


『最悪だった。占領地の瓦礫の下から子供や老人、女性が出てきた。働き盛りの男はみんな戦争に行って捕虜になったか、死んでしまったかだ。残った人達が瓦礫を取り除き、少しずつだけど日常を取り戻そうと努力はしてたけど………。ナチ党の犯罪も色々と明らかになってね。ユダヤ人を収容所に入れて虐殺してたんだ。それ以外にもナチ党が散々やらかしてきた事に激怒した人達がドイツ本土の外に居たドイツ人を虐殺し始めたんだ。何百万人死んだか判ってないが………………。皮肉なことに、ドイツ人至上主義を掲げてたドイツが戦後、労働者不足になってトルコから移民を大量に受け入れたんだ』


ふと、カエは思った。

『その世界大戦で何万人死んだんだ?』


ライネの返事はカエを困惑させた。

『戦争中の死者は民間人を含めると7千万人以上。たったの6年間で』

『7千万………』


『イデオロギーの違いから“絶滅戦争”に発展したんだ。当時はドイツ中心の全体主義(ファシズム)の枢軸国、ソ連中心の共産主義(コミュニズム)、英米中心の資本主義(キャピタリズム)の連合国に世界が別れて、イデオロギーの為に7千万人もだ。戦後は資本主義陣営と共産主義陣営の“冷戦”が始まってね。昨日、アルトゥルが話した通り、核兵器による相互確証破壊が有るから大きな戦争だ起きなくて平和だったけど、その平和も不安定だった。僕はアルトゥルより長生きしたけど、ソ連は未だに圧力を掛け続けたし』

ドイツに限らず、欧州各国は2度の世界大戦で労働人口が歪になってしまいました。

連合国側のフランスは植民地だった北アフリカのアルジェリア等から、イギリスも植民地だったインド等から移民を受け入れることになります。

更に冷戦後はポーランド系の移民(医者)にイギリスの医療制度を支えてもらったりしてもらいました。

昨今の難民問題が持ち上がる前まで、移民に寛容的だったのは、移民を使って経済や社会制度を回してたからです。


(´・ω・`)何だかな~

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