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トマシュ、誤解される


「んっ…ふあぁ~~!」


ポーレ族に割り振られた隊舎に戻ると、トマシュは自分のベッドに腰を掛け、欠伸をしながら身体を伸ばした。


「あー………、長かった」


思わず愚痴を漏らす程、色々な事がこの二日で起きた。

特に昨日の夜からは一睡も出来ず、夕方になって隊舎に戻ってきたところマリウシュ部族長から「捜索に出た者は明日まで休め」と許可が出たのだ。


「はぁ~…」

ため息を吐くと、外で日の入りを告げるラッパの音が響いていることに気付いた。

「もう夜か………」

夕陽が部屋に差し込み、一面茜色だった。


「うーん………」

先に戻っていたアルトゥルが短く唸った。


トマシュがアルトゥルの方を見ると、外着と靴下を脱ぎ捨てそのままベッドに飛び込んだ事が容易に想像出来た。

一方のライネは脱いだものを全て畳み、机に並べていた。


(相変わらずだなあ。これでアルトゥルが前世も含めると70歳以上とか想像つかないな)


カミルのベッドはいつも通り片付けられたままだった。恐らく、まだ戻ってきてないのだろう。


トマシュはゆっくりと外着を脱ぎ、ライネのように机に畳んでからベッドに潜り込んだ。

(確か明日は日勤だったな)


起床ラッパが鳴った後、次の休みまで日があることを思い出しながら、トマシュは眠りに着いた。




「………おい、トマシュ!」

「うっが!?」

身体を揺すり動かされ、トマシュは目を覚ました。


起こしたのは、トマシュの同期の初年兵だった。

「食事後に集まれって、マリウシュ部族長から命令があったけど何か知らないか?」

「ふぁ?」


寝惚けながら身体を起こすと、既に日が上がっていた。

「あれ?ラッパは?」

「俺達の隊舎にラッパ手が来ないんだ。今、ライネ先輩達が本営に確認しに行ってるよ」

「お前、魔王様と仲良いんだろ?何か聞いてないか?」

他にも何人か同期が部屋に入ってきた。


「いや何も」

気付けば同期ばかり10人もトマシュが居る班の寝室に集まってきていた。

「おーい!」

1人、息を切らしながら窓から顔を出した。

「どうしたよ?」

「ああ………。ラッパが来なかったのは第5中隊の隊舎だけだ。他の中隊はいつも通り課業をするみたいだ」


第5中隊はトマシュを初め、入隊したばっかの若い兵士を主に集めた中隊だが。

「まさか………っ!?」

「あ、やっぱり何か知ってるのか?」


トマシュは思い出した!魔王がとんでもないことを言ってた事を。

「“16歳未満の兵士は一度除隊させる”って」


「除隊って嘘だろ!」

「除隊なんかされてみろ。俺達、何処で働きゃ良いんだよ!」

殆んどの初年兵はトマシュと同じく、家計が苦しい者が多い。

兵士以外の仕事も無いわけではないが、魔物に食い殺されるのを覚悟で巣の近くに行く冒険者や、落石に怯えながら穴を掘る鉱山労働者でようやく今の半分。各ギルドで何とか見習いになれたとしても、四分の一の給料が貰えれば良い方だった。

更に朝昼晩と3食支給されるのは彼等には魅力的だ。


「ただ、“16歳未満の者は魔法学校に入れる”って言ってたし、学費も免除だって」

「でも、学校つったって、稼ぎがなきゃ兄弟を食わせらんねえよ」

「そこは何とかするってカエは言ってたし」


「………カエ?」

誰だソイツと同期がざわついた。

「あ、魔王様の事」


「お前、魔王様とそう言う仲なのか」

「良く手を付けたな」

魔王を見たことがない同期連中が冷やかす一方。


「そっちの趣味かよ」

「娼館に行かなかったのはそう言うことか………」

魔王の姿を見たことがある同期は、別の意味で騒ぎ出した。


「なんだよ一体?」

「ほら、魔王様ってさ」

魔王の姿を知らない同期は、知ってる同期から伝え聞いたとたんに開口一番叫んだ。


「お前!ロリコンかよ!」

「んなっ!?何でそうなるんだよ!?」


トマシュが慌てて訂正する。

「アレでもカエは18だよ!」


「若っ!」

「合法ロリやん」

「見た目が子供なんだから歳は関係無いじゃん」

「てかよ、愛称で呼ぶとかどんだけ仲良いんだよ!」


「えっ!?ちょっと?」


只でさえ初年兵は雑用を押し付けられる事が多く、娯楽に飢えていた同期の質問攻めにあった。


「どうやって近付いたんだよ?」

「そうだよ、教えろよ!」


「ち、近付くって。向こうから来たんだよ。ほら、召喚の儀式をした時、僕の班が墓場に居ただろ?その時に向こうから話し掛けてきたんだ」


「何て?」

「色々聞かれたよ。歳とか志願兵だとか。後そうだ、シラミの薬を一緒に買いに行く約束を」


トマシュが周りの気迫に圧され、口を滑らした。

「おまっ、デートかよ!」


トマシュが“しまった~~!”と心の底から公開した。

「ち、違うって!街の物価調査で」


「思い出した!一昨日、一緒に手を繋いでた女の子か!!」

「「「「何ぃぃい!!!」」」」


よりにもよって、同期に二人で居るところを見られてた。

「何してたよ?」

「えっ!ちょっと!」

トマシュが制止しようとしたが、目撃していた同期は見たことを話し出した。


「二人で薬局で買い物したり、屋台で買い食いしたりしてたなあ」


(もう勘弁してくれ~!)




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