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魔王様!新しい憑代よ!

『カエちゃん!大変(てぃへん)だ班長が目え醒ました!』

『あー………、知ってる』


急に復活してきた襲撃者二人をトマシュがマリアと取り調べていると、アルトゥルとカエのやり取りが聞こえてきた。


「その親切な人が助けてくれたと」

トマシュが目のやり場に困っているので、復活した襲撃者二人に服を着させてから話を色々と聞いていた。


「お茶です~」

「あ、ありがとう」

妖精さんがお茶を持ってきたが、二人共まだ少し表情が固い。


(まあ、昨日殺されたばっかでカエと出会せばそうなるか)

トマシュがあくまで捕まえるつもりで斬り合っていたのだが、魔王が躊躇無く二人を殺害したせいで、二人はトラウマになっているようだ。


「そして、子供に会いたくて戻ってきたと?」


今判明しているのは。

・襲撃者の拠点で保護した“ハンス”と“エマ”の両親で間違いない。

・二人共、転生者で元軍人。

・母親の方が元“男”。

・前世で二人は幼馴染で同じ部隊に居た。

・死後、川を渡ると戻ってこれない事を知っていたから、死んだ襲撃者が集団で脱走騒ぎを起こし、そのうち二人だけが無事に脱走できた。

・脱走できたのも、途中で“親切な人”がこの世行きの“汽車”を教えてくれた上に“切符”をくれたから。

・“汽車”で“クンツ”と出会って意気投合した。

・“汽車”がこの世の入り口に着いたと同時に、その“親切な人”が“複葉機”で降りてきた。

・“複葉機”には、もう二人と猫が乗っていて、そのうち1人がカミル班長と………。


「何で、馬鹿カミルが出てくんのよ」

マリアが疑問に思うのも無理はない。

結局、ロキことジョン達と一緒に死後の世界に戻ったカミルだが、紆余曲折有ってこの二人とクンツに合流して一緒に現世に戻ってきた。

そして、何をとち狂ったのか、この世界を管理してる神様のロキが“可哀想じゃん”と独断で生き返らせた上。魔王3兄妹に贈る“憑代”と一緒に二人の身体を追加注文で送り付けて来たのだ。


「で、その親切な人の風貌は?」


『魔王様!只今戻りました!』

『お帰り………。で、赤い髪に赤い目をした変な男に何されたの?』

「赤い髪で目は赤、身長は180センチぐらいかな?」


「え!?」

カエが言った男の特徴と女が言った“親切な人”の特徴が同じだった。


『え、いや。何の事でしょうか?』

『カエ、もしかしてその人、身長180センチぐらい?』





「ロキだな」

「そうね」

「何が目的なんだろうね?」


“どうせロキが何かやってんだろう”、とカマを掛けてみたら、案の定ロキが絡んでいたようだ。

「何考えてるのか判らんからな。前は一緒に海行こうとか、買い物行こうとか遊びにばっか誘ってきたりしてうざかったが」

「てか、スケベそうな目だしね、何かやだわ。あと、上から目線だし」


ロキからしたら、親切心で“他所の神様の天使だけど、右も左も判らない中可哀想だから面倒を見た”つもりだったが、当の魔王3兄妹は振り回された記憶しかなかった。


『まあ、良い。トマシュ、そっちの二人の取り調べを続けてくれ。前世の事はエミリアに確認してもらいながらな』

『判った』


机に寄っ掛かる魔王の目の前で、人狼と人猫の少女二人が身体を伸ばしたり尻尾や耳を動かしたりして感覚を確めていた。

「問題無いわね」

「やっぱり落ち着くな」


人狼と人猫の混血(キマイラ)だが、ほぼ人猫のイシスとほぼ人狼のニュクスには、今回贈られた憑代はしっくり来るものだった。

人によっては、人狼の耳に人猫の尻尾。人狼の尻尾に人熊(じゅんゆう)の耳と両親の特徴が出る場合もあるが、魔王3兄妹はニュクスが人猫の猫目なだけで、パット見ではキマイラっぽくないのが幸いしていた。


「お洋服です」

妖精のメイドさんがワラワラと服を持ってきた。


ニュクスの服は………。



身長が150センチ程度なので、エミリアのお古を丈詰めした普段着を取り敢えず着ることに。



イシスは………。



同じく身長が150センチ程度なのでマリアが見習い冒険者だったと時のお古を丈詰めした服を着ることになった。


「うーん?」

「どうしたの?」

ニュクスが着替え終えた後。ふと、生前使っていた剣を腰に指して考え込んでいた。


「周りの人なんだけど、みんなでかくね?」

もしかして、ロキのイタズラで自分達が縮んだ?

そう思い、剣を腰に指して比べてみたが剣の大きさは生前のままだった。


魔王3兄妹は身長150センチ程度しかないが、前世では背が高い方だった。


「確かに………昨日はエミリアに抱え上げられたしな」

年下の女の子に抱え上げられた事にカエは微妙に気にしていた。

「でも、ズボン履いてるし。ゲルマン系だとしたら納得だよね」

イシスの言った通り、古代地中海系の3人と違い。所謂、北ヨーロッパ系のポーレ族達が身長が高いだけで、3人は前世でも背の高いゲルマン人の傭兵を見かけていた。


「まあ、問題ないだろ?」

カエの一言にニュクスが嫌そうな顔をする。


「生意気なトマシュが私より背が高いのが腹立つんだけど」

「知らんがな………」


因に、現実の古代地中海の人は背が低く。ちょっと前まではローマ崩壊後にゲルマン民族化したせいと言われてきたが、実際の所は、帝政ローマの元、ローマ市民権を獲得したゲルマン民族との混血化や、単に肉食文化の浸透で現在のイタリア人は背が高くなったと言われている。(寧ろ肉食を忌諱していたとも言われており、ユリウス・カエサル軍団は遠征先で小麦を手に入れない時に肉を食べずに、良くわかんない根っこを粉にしたヤツでパンを作っていたらしい。肉食えよ!)



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