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イシス忍び込む

えー、私事ですが結膜炎になったようでして。スマホの画面が霞んでいる影響から、ネタが出来ているのに、いつも以上に四苦八苦する羽目に。



「高炉により、安定して銑鉄を供給出来ますが。一度火を入れると、数年間は燃やし続ける物ですので、原料の鉄鉱石と

燃料の石炭を安定供給する必要が有ります」


カエが会議室で鍛冶ギルド代表のビスカ氏から、“高炉”の説明を受けている最中にリーゼが入ってきた。

「魔王様、竜騎士がイシス様達を発見しました。“ナチと交戦中”と発光信号が有ったとの事です。至急、裏の厩舎まで」


リーゼに耳打ちされたカエは、「結構、計画通り建設を開始してくれ」と、ビスカ代表に指示を出し、裏庭へ向かった。



厩舎が在る裏庭では、ズヴェルムの周りに机が幾つか置かれ、その内の1つに人が集まっていた。


「連中は強力な火砲を持ち合わせていますが、対空砲の射撃は有りませんでした」

そこそこ書き込んでいた地図を落としたので、間に合わせで騎士団が持っている大まかな地図で偵察員兼航法士がヤツェク長老とランゲ騎士団長等に報告をしていたのだ。


「おいおいおい、一体何だそれは」

側に居た竜騎士が、ズヴェルムの胴体に、得体の知れないベルト付の架台を取り付けようとするポーレ族の兵士5人に声を掛けた。


「兵装支持架です。ヤツェク長老の命令で取り付けろと」

「“兵装支持架”?………一体何を?」

竜騎士がチェスワフ長老の様子を伺うと、次の任務を下令された。


「ズヴェルムに爆弾を運ばせて空から落とすのじゃ」

「何ですって?」

鞍とは別に、まるで篭の様に骨組みしかない2組の鎧状の兵装支持架の上側の面をズヴェルムの背中に載せ。腹側に、爆弾を括り着ける下面を入れて挟み込む形になった。腹側の兵装支持架を持ち上げ、ボルトを閉めた後にしっかりと固定用するためのベルトが巻かれる。

「良いか?」

「ああ」

取り付け作業をしていた内の2人は、お互いズヴェルムを挟む形で兵装支持架の取っ手を掴み、思いっきり引っ張った。

兵装支持架がキチンと固定されたか確かめたのだ。

「オーケー、大丈夫だ」


裏庭の隅に置かれた荷馬車から、他の兵士3人が重さが9キロ程度の爆弾を8個運び出し、兵装支持架に取り付け始めた。

「良いか、やり方を説明するぞ」


ヤツェク長老が上質な洋紙のロールを空いていた机に拡げた。

「まず、投下方法じゃが」

ロール紙には鍛冶ギルドの紋章とゴブリン文字と人狼の使う文字が併記されていた。


「鞍から見て斜め右の位置に在るレバーを引くと順番に爆弾が落とされる、投下のタイミングは………」





遺跡に入る事の出来る石橋の裏にイシスは貼り付いていた。

ロキに“琥珀浄瓶をひっくり返しても平気になったよ”と言われたので遠慮なく、裏面を歩いて行く。

肩まで有る髪の毛が垂れ、物陰から飛び出す事を恐れ、軽く編んでから服の中に髪の毛を捩じ込む程にイシスは手慣れていた。


そして、例の琥珀浄瓶はイシスが腰に着けている雑嚢の中に入れていたのだが。


「何かへん」

イシスの視界を琥珀浄瓶に設置された大型モニターで映していたが、さっきから上下逆さの映像なのでニナが不思議がった。


「これで良いか。まあ、急に装置が壊れることはないだろうし」

ロキはロキで、安全バー付の座席に座れないエルナの為にベルトで身体を手摺に固定する作業をしていた。


「えーっと。みんな座ったね」

ロキが改めて確認してから、リモコンのスイッチを押すと安全バーが下がった。


「おー」

「わー」

「ふわー」

転生者じゃない、トマシュ、ニナ、エルナの3人は感嘆の声を上げた。


「よいしょっと………」


ロキはモニターの脇に置かれた演台に登ると軽く咳き込んだ。

「えー、皆さま。本日は琥珀浄瓶にご搭乗頂き………」

まるでキャビンアテンダントの様な口調でロキは注意事項の説明を始めた。

『御手洗いはあちらのドアを出て右手に、また非常時はこちらの非常ドアから………』


(何言ってんだコイツ?)

こういう事の積み重ねでイシスからの評価がガタ落ちしていくのをロキはまだ知らない。


アホな事をやっているロキを尻目に、イシスが石橋の裏を歩き続けると、今度は木製の跳ね橋が5メートル程在った。

「っと!」

跳ね橋に1歩出たイシスは防壁の上に立つ兵士に気付き飛び退いた。


石橋と違い、橋脚が無いのと。遺跡の門が防壁に対して凹む形で設けられているため。防壁の上に立つ兵士にも見られる位置に在った。“さて、以外に見られるぞ”とイシスは周りを伺う。


『行けるかい?』

中でロキが話した内容が念話で聞こえてきた。


防壁上の兵士が明後日の方角を観た瞬間に、イシスは“ト、トン”と跳ね橋の裏面を2歩で渡りきり、跳ね橋の付け根。門の基礎部分に飛び付く。


『あれ?イシスちゃん?』


「おい、無事か?」

兵士の声が聞こえ、耳を澄ますと咳き込む音も聞こえた。


「何とか………」

「どうしたんだ一体?」

先ほど水濠に落水した兵士が門の近くを通り掛かったのだ。


イシスは基礎部分に上下逆さに張り付いた状態から、器用に身体を回し、元の状態に直った。

取り敢えず水濠は渡れた。次はどうやって防壁を越えるか、イシスは見渡す。

『左手、アーチ在るでしょ?』


「判らない、何か………その……」

「幻覚か何かを見たのか?」

右手には、対岸からも確認できたが。防壁と門の間に補強の為に防壁が斜めに張り出しているのが此処からも確認できた。

反対の左手には、高さが1メートル程のアーチ状で鉄格子が嵌められた穴が在るが、チョロチョロと水が流れ出る様子から排水口のようだった。


「………いや」

「隠すな、俺も見た。前世で近所に住んでたユダヤ人の爺さんを見た」


声がその穴から聞こえてきたので、イシスは排水口からの侵入を諦めた。

基礎の石材の隙間に指を差し入れ、ゆっくりと右手方向へ進み、進路を確認する。

『もしもーし?』


張り出し部分の向こう側に回れば、防壁や門からは角度がついて見え難い位置になる。

“あそこなら入れそうだ”イシスは張り出し部分の脇に在る狭間から侵入することにした。


防壁の上に兵士が居ないのを確認すると、崩れた拳大の石材を幾つか手に取り、対岸の方へと投げた。


古典的なやり方だが、イシスは水音を確認し。一拍間を置いてから、飛び出た。


『え、ちょっと!』

ロキが思わず言葉を発した。


張り出し部分を飛び越し勢いよく防壁に足を着くと、三角跳びの要領で防壁を蹴り返し、張り出し部分に飛び付いた。


『あー、ビックリした』

ロキの発言を無視するかのように、イシスは周囲を見渡すと。素早く張り出し部分を登り始めた。


『あの?イシスちゃん?聞いてる?』


「何か、イシスちゃんに尻に敷かれてない?」

思わずアガタがフランツに耳打ちした。


「!?」

『うわ、わああああ!?』

張り出し部分の直ぐ脇に開けられた狭間で口に加えた煙草に火を着けようとしていた兵士と目が会った。


兵士は腰に着けた拳銃に手を伸ばしつつ、叫び声を上げようと口を開いた。

「あっ!クガッ!?あ"?」

「黙ってろ………」


兵士は声を出そうとしたが、言葉になら無いどころか、息が出来なくなった。

イシスが兵士の喉仏付近に手を突き刺し、気道を握り潰したのだ。


「うわっ!」

いきなりの惨劇に、アガタがニナをフランツはトマシュをショーンはエルナをデイブは自分自身の目を手で覆った。


「あー………」

一方のロキはイシスに喉に突き刺された兵士が血を流すのを見て気を失った。

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