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潜伏中

「なあ、俺達も小銃は持ってるけど。何でアイツらガスマスクなんか作ったんだ?」

デイブはガスマスクを収納缶から取り出し、弄くりながらぼやく。


「ベトナム戦争で使わなかった?俺らは結構使ってたけど」

「………いや、何処で使うんだよ?」

正直、第2次大戦で化学兵器が使われた事が無い筈だが、ショーンが使った事が有ることに疑問を感じた。


するとショーンはデイブの手からガスマスクを取り、顔に当てて見せた。

「ほら、煙が目に入らないだろ?火事になったときに、煙にやられにくくなるし、粉塵も防げる。後、バズーカとか結構発射した時の熱が酷いから顔面を火傷しないように被ったり。ホントは駄目だけど、フィルターで水を濾過出来るから、怪我人の治療で水が足りない時とかに使ったな」


遠巻きに見ていたアガタが試しにガスマスクを着けようとしたが、耳が邪魔してなかなか上手く付けれずにいた。

「どうしたの?」

四苦八苦しているアガタが気になり、ショーンが声を掛けてみると、「いやさ…」と訳を話た。


「ガスを撒かれる前に着け方を練習しとこうかなって。………あ、出来た!」

アガタが手を離すと、ガスマスクが顔から少し離れ、隙間が出来ていた。


「アガタ、着け方が違うよ。まず、顎からガスマスクに入れて、それから顔全体に被るんだ。後、髪の毛を捲き込んでるよ。ガスマスクと顔の間に入るとそこからガスが入るんだ。後、最後はベルトを締めてから、吸気口を手で塞いで思いっきり息を吸って………」

ショーンが手取り足取り教え始めたので、アガタはされるがまま、着け方を教わった。





「どっちかで良いが、コレを魔法で探せないか?」


出発前の打ち合わせ中にトマシュとイシスにフランツは跳躍地雷、所謂Sマインを手に持って見せた。


「何ですか、これ?」

始めてみる金属製で出来た円筒形の物体を2人は注意深く観察した。


「地雷って言ってな。踏んだりして、此処に圧力が掛かったり、張られたワイヤーが引っ張られると爆弾する兵器なんだ。で、これは特に凶悪で、一旦、人の目の高さ位まで飛び上がってから爆発するんだ」

円筒からの中心から飛び出た円柱をフランツが右手で指差した。

円柱の先から、毛の様な触手が3本飛び出ているのがイシスの興味を引いた様で、ジーっと眺めていた。


「魔法は使われて無いんですよね?」

「多分な。でも、何かしらの改良がされてるかもな」

なんせ、フランツ達が居た世界の武器とは言え、此処は魔法がある世界だ。改良だけでなく、再現出来なかった技術の代用として、何かしらの魔法が使われていても不思議ではない。


「………んー。特に、魔法が掛かっている様子は有りませんね」

イシスは色々と調べたが、何の変哲もない純粋な地雷の様だった。


「地面の中や草むらに仕掛けられていた場合は見付けられそうか?」

「んー………………、ちょっと厳しい。いや、表面は鉄ですか。これなら何とか」

鉄製なら魔力の波長が当たると霧散するため、トマシュが得意な探知魔法で何とかなるのだ。


「そうか、それはよかった」


「うっ!」

トマシュが鼻を左手で押さえ、その場にしゃがみこんだ。

「どうした?」

フランツの呼び掛けに、トマシュは右手上げて「大丈夫です。急に、立ち眩みが」と答えたが。


「鼻血?」

トマシュの鼻から血が出ていた。

「探知魔法を使ったら急に意識が」

イシスが清潔な布で拭っている間も、トマシュは頭痛がする上に吐き気を覚えていた。


「探知魔法を?」

まさかと思い、イシスも探知魔法を使ってみると、強力な魔力の波長を感じ、頭を押さえた。

「いった……。フランツさん、探知魔法が妨害されます。これじゃ、短距離の転移も無理です」


あまりの魔力の大きさに、トマシュの魔法剣もじんわりと、熱を帯始めた。


「フランツ。物音だ」

伏せた状態で見張っていたショーンが兵士達が引き揚げて行った西の方角を指差した。

「仕掛けてきたか」


フランツもショーンのその場に伏せ、様子を伺う。

「まただ、何だ?」

なにかが近付いて来る音と、機械音が聞こえてくるのだが、木々が邪魔で様子が判らない。


トンっトトンットン…。


「砲撃音!?」

迫撃砲(モーター)だぞ」


シュルシュルと風切り音を鳴らしながら近付いて来たそれに気付き、デイブが「来るぞ!」と叫ぶ。


フランツも白い尾を曳きながら発射させた5発の内1発が此方に落ちてくそれに気付き叫んだ。

伏せろ(Take cover)!」

全員が頭を抱えた状態で伏せ、それが隣の木に当たったが爆発せずに、地面を転がった。


「え!?不発?」

若しくは、火薬類が詰まってない只の鉄球だったのかと、ショーンが様子を伺うと、それが弾け跳び、白煙が広がった。


「Gaaaaas!」

ショーンの叫び声を聞き、フランツとデイブは大慌てで奪い取ったガスマスクを取り出す。

既にガスマスクを着けていたアガタとショーンは大丈夫だが。他のメンバーは大急ぎで着ける必要があった。


「トマシュ、ニナの髪を退かせ!」

何のガスかは判らないが、着け方が判らないニナ達に優先して着けさせた。


「キツイ」

「我慢して。良いか、外しちゃ駄目だ」

エルナは髪が短いので、直ぐに着けることが出来たが、ニナとイシスはまだ手間取っていた。


「急げ、フランツ!もう、そこまで来てる!」

「判ってるよ!ニナ、暴れるな!」

デイブがエルナにガスマスクを着け終えたが、状況が判らないニナが振りほどこうとしていた。手の空いたデイブが暴れるニナを押さえ付けたことで、どうにか着けられたが、足元の蔦からガスが立ち上がり始めた。


「トマシュ、ニナが外さないように見てくれ」

フランツがトマシュにガスマスクを着けながら注意をした。

「馬は?どうなります!?」

「諦めるしかない」

トマシュは心配したが。馬用のガスマスクが無い以上、どうすることが出来ない。


一緒に、木の上の足場に隠していた馬達がガスを吸い、暴れだした。

「あ、クソ………」

フランツが自分のガスマスクを着けている時に咳き込み、悪態を吐いた。

「催涙ガスだ、毒ガスじゃない」


幸いなことに馬が死ぬことは無いが、フランツは少し吸ってしまった。

「イシス、馬を下ろすか静かにさせられないか?鳴き声で位置がバレる」

催涙ガスの苦しみから、首を大きく振り鳴き声を上げる馬の様子を恐がったニナは、必死にトマシュの腕にしがみついた。


「寝かせます」

イシスが1頭ずつ頭を撫でて回り、馬は静かに伏せた。


「無理矢理寝かせただけです。何時まで持つかは………」

催涙ガスで目や呼吸器系がダメージを負っているのに無理矢理寝かし付けたのだ。馬の為にも安全な場所に移動したいが。



周囲が催涙ガスで覆われ。視界が悪くなるのを見計らってか、再び物音が近付いて来た。

「フランツ、兵士と………オートマタだ」

足場代わりの蔦の隙間から下を窺っていたデイブが音の主を見付けた。

「でけえ。.50口径は有りそうな機関銃を持ってるぞ」

神聖王国の転生者が開発した15ミリ機関銃を両手で構え、高さが2メートルは優にあるオートマタを先頭に、ガスマスクを着けた神聖王国の兵士が左右に四人、笠形に広がりながら後ろを付いて歩いていた。

「オートマタも、神聖王国の神殿に置かれていたのより大きいです」


先日、転移門を通じて送り出した鮫とタコのゴーレムが戦った水陸両用型はある程度の浮力を保持する為に装甲を抑えられていたが。目の前に現れた陸戦型のオートマタは純粋に戦闘の事だけを念頭に造られていたため全体的に大きくなっていた。


シュタールヘルム(ドイツ軍ヘルメット)にSS式の野戦服。ナチだ」

ヘルメットの左側に鍵十字が描かれたヘルメットとフィールドグレーの制服から、フランツは一目で見抜いた。


「ナチ、あれが………」

カエ達と“本当に居るのか?”と疑っていたナチの兵士が目の前に現れた。

一体、何故。大森林に現れたのか。調べることが増えてしまった。

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