第3話:捕縛
「うっ……ここは……?」
まだふわふわとして安定しない意識を取り戻しながら、辺りを見渡す。
場所は依然洞窟内だが、篝火や焚き火がある事からキャンプ場を彷彿とさせた。
「お頭! 男の方も目が覚めたみたいですぜ!」
俺が目覚めたのを確認し、仮面を着けた男が大きな声で呼びかける。
周りには同じ仮面を着けた人が何人か居た。
「へぇ、アンタがあのアホな罠にかかったっていう男かい。なかなか男前じゃないか」
奥から出てきたのは同じように仮面を着けた女だった。
お頭と呼ばれているだけあってか、他の男よりも服装や仮面が豪華だ。
「誰だ……!? そして何が目的だ! それと……レナはどうした!」
身体に力を込めるが、拘束用のロープが擦れる音がするだけで解放される気配は無い。
「はっ! オマケに芯も強いときたかい! ますます気に入ったよ!」
女首領は目の前で豪快に笑い、そこに別の仮面の男が話しかける。
「というか珍しいッスね、このへんに非武装の生者が来るなんて。連れの女はこっち側だったみたいッスけど」
「確かにな……ん? そういえばお前は何であの連れの女と普通に喋ってたんだ? しかも見えてる様子だったしな……」
「何でって……まあそういう体質としか……見えるようになったのはついさっきだけど……」
そう言うとしばらく女首領は考え込むような動作をして――2本のナイフを懐から出した。
「なっ! 何を……」
本格的に身の危険を感じ、暴れてみるも、やはり拘束からは逃れられない。
「ああもう! 動くんじゃないよ! 別に殺しゃしないから!」
そういうと女首領は逃れようと必死に動く手を掴み、2本のナイフの先端で一つずつ傷をつけた。
捕まった手を見ると血こそ出ているものの本当に小さな傷、それこそ痛みなど感じないレベルの傷だった。
「お、お頭……これって!」
「二つの傷口からちゃんと血が出てる……! 」
女首領と男の会話に周囲にいた手下達もざわめく。
「どうしたんだ? 血が出てるくらいで騒いで……」
奥の方にいた手下の1人がそう言ったが、根黒も全くもって同意見だった。
「バカッ! 俺達の目的を忘れたか! 受肉できるまでこの洞窟で暮らすって言ってただろ!」
「てことは森に行けるようになるって事か?」
「森だけじゃねぇよ! 外ならどこでも行けるんだよ!」
「おっ、お頭! やりましたね! これでこの湿っぽい穴蔵ともおさらばですぜ!」
全く状況が理解出来てない根黒をよそに、手下達は思い思いに騒いでいた。
しかし、そんな手下とは対照的に女首領は1人、押し黙っていた。
仮面のせいで表情から何を考えているかは分からないが、そんな女首領の様子を見て、手下達も騒ぐのを控えようとしたが……
「ぐすっ……」
――辺りが一瞬にして静まる。
手下達もこれは想定外だったのか、先程とは違うベクトルで騒ぎ始める。
「うぐっ……良かったよ……! 本当はこのままダメかと思って……」
「おおおお頭!? どうしたんですか!」
手下の言葉にビクリとし、我に帰ったのか、数回咳払いをして続ける。
「あ………………お、お前はあの女を助けて欲しいんだろぉ? だったらこっちの要求を」
「あ、そのキャラ続けるのか」
一瞬にして場が凍りついた。