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異世界の死霊術師  作者: 主任
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第1話:シャットダウン

初めての作品です。

未熟ながらも精一杯書きました。


「そっち行ったぞ! 仕留めろ!」


 鎧を着込んだ騎士風の男の叫び声が洞窟の岩々に反響する。


「ほいほいっと。まかせてまかせて!」


 ローブに身を包んだ女が火の玉を放った。


「ガッ……!」


 放たれた火の玉は狙い通りに着弾し、相対した者の身体を焼き、遂にはピクリとも動かなくなった。


「っ! 終わったな……怪我ないか?」


「だいじょぶだいじょぶ! ダーリンが守ってくれたから傷一つないよ!」


「はははっ。それじゃ戻るか」


 砂糖でも撒いてるのではないかと疑うほど甘い雰囲気を纏いながら2人は洞窟を後にした。






…………この物語の主人公の亡骸を置いて。


 


――――――――――――――――――――――




「か〜っ! 今日も疲れた!」


 自分の部屋に入るや否や、ベッドに飛び込む。


「これで明日から夏休みか……楽しみだな〜」


 李美根黒(りび ねくろ)は学校生活があまり好きではなかった。

 喋る友人が居ないという訳ではないが、むしろその逆で困っていた。


「……シテ……ル…」


 薄暗い部屋の中に反響する音にビクリする。


「……コロシテヤル」


 当然ながら辺りを見渡しても自分以外誰もいない。

 親は数年前に他界しており、家族が上がり込んでいる訳でもない。

 自分以外の声が聞こえるはずないのだ。


 そしてその声はだんだん近づいて来て……


「殺してやる! コロスコロスコロッ!」


「うるせぇ! 大声出すなよ!」


「あっごめん」



――――――――――――――――――――――



「で? 今日は何の用だよ……?」


「何の用って……昼に無視しといてよく言えるね! クロ!」


 傍から見たら異常そのものだが、クロこと根黒は何も無い、誰もいない空間に対して話しかけている訳では無い。


「昼って……学校じゃ喋れないの分かってるだろ? そりゃかまって欲しいってのは分からなくはないけど」


「かっ! かまって欲しいなんて言ってないよ!」


 クロには……と言うより李美家には代々死者やその他霊類と意思疎通をする適性があり、昔から生者と死者の橋渡し役として活動していた。


 歴代の橋渡し役は霊の視認から会話、調子が良ければ接触まで可能だったという。


「分かった分かった……てか密室で大声出さないでくれ。頭に響く」


「しょうがないでしょ……クロには僕の声しか聞こえないんだから自然と気合いが……ね?」


 しかし時代が移ろいゆくにつれて、橋渡しの必要性は薄れ、それに応じてか、子息の適性も会話するほどしか出来なくなった。


「これは高級耳栓の出番かな?」


「なっ! 本気で殺すよ!? ってああもう! 触れないんだった!」


「はっ……俺が死んでから殺しに来たらどうだ? 速攻で成仏してやるけどな!」


 いつも通り他愛もない事を言い合いながら部屋から出る。


「ま、まさかとは思うけど耳栓買いに行くの……?」


 珍しく声のトーンが落ちている。


「いや、カップ麺買いに行くだけだよ。よく考えたら耳栓代がもったいないからな」


「そ、そう! じゃあ良かった」


 (相変わらず扱いやすいなコイツ)



――――――――――――――――――――――



「クロってほんと醤油味ばっか買うよね」


「いいだろ。好きなんだから」


 コンビニで買い物を済ませ、家への道の公園を横切る。


「ここ懐かしいな……丁度そこで死んだんだよね〜ははっ」


「そんなヘビー級の話題を投下しないでくれよ……」


 彼曰く、公園にある10mくらいの遊具から転落し、今に至るという。


「ちょっと登ってみようよ」


「まさか俺を他界他界させる気じゃないだろうな?」


「そんな事しないよ! 触れないから落とせないし!」


「ははっ。それもそうだな」


 彼に促されるまま、遊具の階段を登る。

 近所では割と有名な滑り台で、よく小学生の度胸試しに使われてるらしい。

 少し夕日でも見ようと手すりに手をかけ、空を見上げる。


「――そうそう。丁度そこの手すりがポキっといって僕は落ちたから気を付けてね」


「え?」


――遅すぎる忠告を活かすことも出来ずに重力に引きずられ……




 こうして李美根黒は17年の生涯に幕を閉じたのであった。



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