俺と瀬戸姉弟
「僕と姉の」を読んだ方がこの話の世界観が広がるのでは?と思います。でも、読んでなくても大丈夫‥かな?
登場人物
沢田、瀬戸南、瀬戸慶、ちょっぴり宮田(南の元彼)です。
よろしくお願いします。
「沢田ー!放課後カラオケ行かなぁい?割引き券あるんだけどー」
「ゴメンけど、先約ありー」
「え〜じゃぁ次はユキ優先で」
「またな」
背が伸びたからなのか高校入ってから、女子からアドレスやら遊びやら誘われる事が増えた。中学の頃は背が小さく女子と目線が近かったし、どちらかと言うとイジられるのが多かったんだけど。
入学当初とは違い最近は面倒だから適当に躱してた。
女子は下手に関わって拗れると厄介だかんな。
と言うか、既に拗れた後だし。
授業も終わり頬杖を付いてぼーとしていたら
「瀬戸!姉さん来てるぞ!」
廊下側からクラスメイトが声をあげた。
それに反応したのが、俺の前に座っている瀬戸 慶だ。
「瀬戸、姉がいたんだ?」と思わず訊いてしまった。
瀬戸は振り向いて、
「おう。」と短く返事すると、小走り気味に教室の前方にあるドアに向かって行った。
中学までなら、まぁ同じ学校に居るのは解るが
高校も一緒とかどんだけ仲が良いんだよ。と心の中でツッコむ。
なんとなく、瀬戸は一人っ子だと思っていた。
クラスメイトと普通に話したりするけど、微妙に距離を感じたり、他人に興味無さそうな感じを垣間見る時があった。
兄弟とかいたら人との接し方とか一緒に学んで育っていきそうなもんだけど。世話するのが好きとか甘えるのが上手とか。
瀬戸は1人でいる事が好きって訳では無さそうだが、1人でも平気っていうタイプに見えた。
まぁ、俺が勝手に分析した結果だけど。
ん?瀬戸笑ってる。
相手の姉の姿は見えないけど
アイツ本当に姉と仲良しか!
「沢田、保健室行った方がよくね?」
田中に声をかけられ痛いなーと思って膝見たら結構血ぃ出てた。
体育のサッカーでの怪我をした。
俺がボールをキープしていて、そこに佐々木がカットしようと足を引っ掛けてきたのだ。
体格差もあり簡単に倒れたし、ボールは勿論取られたし、そのまま1点追加され負けたし散々だった。
ガチムチ佐々木、頑張り過ぎだろ〜
そのまま保健室に行った。
「先生ー、絆創膏ないー?」
ドアをスライドさせながら保健室に向かって言うと、そこには女子生徒がいた。
授業中のはずなのに生徒が居るのに驚いた。
寝ているならまだしも、普通に元気そうだけど。
履いている上履きの色を見て上級生かな‥と考えていると、
「今、先生職員室の方に呼び出されて不在だよ。」
絆創膏だったよね?と言いながら鍵付きのガラス戸の付いた棚の引き出しから絆創膏を取って渡してきた。
「あれ?結構出血してるねー。先に洗い流してから消毒した方がいいかも」
女子生徒は俺の腕を引っ張って、保健室の外のベランダに付いている蛇口まで一緒にきた。
足を曲げて膝を突き出す様にして傷口を容赦なく洗い流していく。痛くはないけど水の勢いがありすぎて水しぶきが太ももにもかかる。
「ごめんね!凄い濡れちゃったね〜」
角に小さなクマと花の絵のついたハンカチを出され、傷口の周りの水滴を拭くように言われた。
(ハーフパンツにも掛かって濡れたし。冷て)
太ももやらふくらはぎに滴った水を拭いていると、女子生徒は保健室の中に戻って手招きをして来たので、言われるままついて行った。座る様に言われ椅子に腰掛けた。
すると女子生徒が俺の座っている前まできて、屈み込んだ。
俺は内心驚いた。ドキドキした。距離は割と近かったし、このアングルが微妙にエロく感じたからだ。
(いやいや、何考えてんだ俺。)
手際よく脱脂綿を片手に市販の消毒液をシュッシュッと膝の傷口にかけていく。
よく見てみたら、なんかキレイな女の子だなぁ。睫毛も長くて1本1本繊細に軽くカールしているみたいだ。透ける様な白いシミひとつない肌に小さな鼻、赤く小さく主張する唇も何もかもがドキドキした。
(ヤバイなんか急に緊張して来た〜変態か俺!)
「消毒液滲みたよね。ハイ。コレでお終い!」絆創膏を貼り終わり、女子生徒はこちらを見上げながら、ふんわりと笑った。
「あ、ありがとうございます。」(別の事考えてて平気だったっス)
キーンコーンカーンコーン‥‥
「あ、しまった!授業おわっちゃったね〜。行かなきゃ。」そう言うとそそくさと保健室から出て行ってしまった。
「あ!ハンカチ‥!」と思わず声に出してしまったが、既に出て行っているので聞こえるはずもなく‥‥
(てか、洗って返すべきか。名前聞くの忘れたけど、そのうち会えるかな〜)
なんて考えながら教室に戻った。
着替え終わって教室の席に着くと、前に座っていた瀬戸が話しかけてきた。
「遅かったな。足酷かった?」
「ぃんや、絆創膏で治る程度だと思うわ。」
「良かったな。」
「それより、今保健室でキレイな先輩に手当てしてもらってさ〜。いい匂いするし、透明感があってさ」
「だから遅かったのか。沢田、サボりだな」
クスッと笑いながら瀬戸が言ってきた。
「瀬戸、なんか余裕だなぁー。普通さもう少し食い付いて来ない?クラスとか名前とかさ」知りたくない?と俺が言うと
「えー?別に。興味ないし。‥‥ーーあ、始まる。」
丁度、予鈴が鳴り会話が止まった。
『興味ないし』って、カッコいいな。
高1男子の発言にしては不健全な気もするけど。
翌日から洗ったハンカチをポケットに入れ、移動する時など保健室の先輩を捜すようになった。
2日経った。なかなか会わないもんだなぁ。そもそも上級生と接点ないしなぁ〜‥
‥‥‥あ、瀬戸の姉がいるじゃん。上履き緑だし同じ3年だよな多分。
瀬戸の姉に協力して欲しいからと瀬戸に仲介頼んだらヤな顔された。
「姉ちゃん関係ないし、沢田に会わせるのがヤダ」
『ヤダ』ってなんだよ。瀬戸、お前背も高くてイケメンのクセしてシスコンかよ〜残念イケメンだな。
‥と、心の中で思った事をしまって、顔に出ないようにキレーーイにしまって、一緒に探してもらえるよう頼んだ。
約束を取り付けてもらって、帰り図書室で待ち合わせた。瀬戸と一緒に図書室まで歩いていた。
「な、その先輩他に特徴ないの?」
俺は保健室での先輩の容姿を浮かべながら
「特徴‥って程でもないけど、右手首の内っ側に小さい黒子があったかな。色白でキレイな肌してたから、なんとなくそれが印象的だったんだよねー」
「手首に‥‥一応その時のハンカチ見せて」
ハンカチを渡すと同時に図書室に着いた。
「あー‥やっぱり、これ姉ちゃんの‥」
俺は図書室のドアを開け、室内を見渡し校庭に向かっている机に座っている女子生徒をみた。その女子生徒の他に人は居なかった。
瀬戸がボソッと何か言ったがあんまり気にしなかった。
女子生徒が少し動いて焦げ茶気味のサラリとした髪が流れ、横顔が見えた。
「瀬戸!あの先輩っぽい人がいる!」肘で突きながら言うと、瀬戸はため息を吐きながら
「‥姉ちゃん」
大きくはないその声に反応して、女子生徒は振り向いた。やっぱり保健室の先輩だった。て、え!?瀬戸の姉さんかよ!
「メールで言ってたのって‥‥て君、保健室の‥」
俺に気づいて話しかけてきた。
「あの、ハンカチ渡しそびれて‥一応洗いました。」
「わざわざありがとう!そっか、1年生と3年生じゃあまり接点ないもんねー。慶、役に立って良かったね〜」ハンカチを受け取りながら、ふふっと笑って瀬戸にも話しかけていた。
こうして並んでみると改めて美男美女な姉弟だなぁと思った。俺たちは瀬戸の姉さんの提案でみんなで帰ることになった。
瀬戸が微妙な顔をしていたが気付かないふりをした。
俺は瀬戸の姉さんと話してみたかったし。
「沢田くん、慶のこと瀬戸って呼ぶのなら、わたしの事は南って呼んでね!」
瀬戸が微妙な顔‥どころか思いっきりしかめ面した。
俺はもちろんスルーした。
瀬戸、ヤキモチなのか?!ヤキモチを焼いているのか?!姉に?南先輩のセカンドバッグを持ったりしてるし、もうなんか、姉弟にみえないよ!
それから、時々3人で帰ったり校舎で見かければお喋りしたりする様になった。俺は南先輩をすぐ見つける事が出来たし、会えた時はなんとなく嬉しく思った。自然に目で追う様になり、南先輩の声を聞く度、胸の辺りがやわやわと淡く刺激される様になった。
そんなある日、何気ない会話から南先輩と瀬戸が本当の姉弟ではない事を知った。驚いたがストンとモヤモヤしていた物が落ちてきて、すぐに納得出来た。顔の作りあんまり似てなかったしな。
南先輩と瀬戸の微妙な距離感のモヤモヤの正体が解って、瀬戸の気持ちがわかった(本人が自覚してるかは知らないが)と同時に何故モヤモヤしていたのかを考え‥‥あー俺、先輩のこと好きになってたんだなぁと自覚した。でも、今のままで充分楽しかったし関係を壊したくなかったので何もしなかった。
そうするうちに、南先輩は高校を卒業して元同級生と付き合いだしたらしい。同じ委員会だったヤツらしい。瀬戸の機嫌は最高に悪かった。俺は、その時告白されて付き合っていた子がいたが、それを聞いた時ちょっと面白くないような気持ちになった。
「クソ男と別れた。」
学食でカレーを食べていると瀬戸がコロッケパンを食べながら言ってきた。(お前昨日もコロッケパンだったよな?)
「やっとですかぁー宮田だっけ?南先輩、様子は?」
「んー元気な様でいて、実は落ち込んでる?感じ。」
「まぁ、お前が居れば大丈夫だろ。」
「おう。新しい男は俺が探すわ。やっぱり、真面目なヤツじゃないとな。収入もそこそこで‥」
いやいや!そこは俺が!みたいになんないのか瀬戸‥。何もかもが残念イケメンだな。
「‥‥まぁ、頑張れよ。瀬戸」
久しぶりに南先輩に連絡しよーかな。
読んでくださりありがとうございました!
書ききった興奮?で見返しもあまりせず投稿したので、誤字脱字おかしな日本語が満載かもしれません;