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31話

 力が強い者が王になるべきだという風習は、悪魔たちが押し付けあった結果。実際は上位悪魔である程度の実力があれば悪魔の王になることができる。さらにいうと、上位十位以内の悪魔に限られている。


 自らが王になりたいと挙手する者はいない。だから、押し付け合いになる。


「お前、王になれよ」


「いやいや、スピリト様がいるだろう?」


「スピリト様は王になりたくなくて、デレアスモス様に王座を渡したのよ。王をやらせるのは、無理でしょう」


「デレアスモス様は王に乗り気だった変な悪魔だったよね〜。スピリト様が投げ出して彼を支持したからというのもありますが……。で、誰かデレアスモス様のような方は――」


「いない」


 十位以内に入る実力がある者とされている悪魔たちが、ここにはいない一人の実力ある悪魔を除いて、話し合っていた。しかし、そのいない存在にも被害は及ぶ。


「セツはどうでしょうか? スピリト様の友人らしいですよ?」


「あいつはどこにいるかわからん」


「それは、スピリト様も同じではありませんか!」


「スピリト様はいいんだよ!!」


「えー!! 何がいいの!? 差別だよ! 偏見だよ! なんにも良くないよ〜。 僕、やだからね?」


 突然、響き渡る声に会話は中断される。それを発しているものの姿はなかった。


「悪魔の王はセツがなるから。僕は今まで通りのポジションで……。実験に悪魔のみんなが協力してくれるなら、検討するよ?」


 後半の言葉に顔を真っ青にして首を激しく左右に振っている悪魔たち。


「セツが悪魔の王になるならそれでいいよ」


「ああ、決まったならそれでいい」


「私もセツに決まったなら、何もいうことはないわ」


 皆が賛成の意を唱えていく。王が決まったなら、無理にスピリト様を王にする必要もない。いや、スピリト様を王にしたら、悪魔全員が恐怖で支配されそうだ。恐ろしい被害は悪魔の王である一人で十分だ。


「物分かりのいい者たちばかりで良かったよ。じゃあ、僕はデアちゃんから手に入れた心臓でやることがあるから」


 スピリト様の声が聞こえなくなった。

 彼の最後の衝撃の言葉には、顔色をなくすものや卒倒するものもいた。自分の心臓を抑えるものもいた。

 他に、何も聞かなかったことにするという選択をしたものもいた。



 スピリトがセツと結んだ条件は二つ。

 一つめは、セツとスピリトの二人で銀竜の対処をすること。

 二つめは、悪魔の王をセツがやること。

 セツはこの条件を了承して、ユアを助けることを彼に手伝ってもらったのであった。



 悪魔の王が死んでしまったら、次の王を決める必要がでてくる。そして、前に悪魔の王を断り、デレアスモスに押し付けた自分(スピリト)に回ってくる可能性が高い。

 スピリトは自由に研究など、自分のやりたいことに没頭したかった。王になればその時間は減ってしまう。だから、セツに王をやってもらうことを条件につけた。そのおかげで、悪魔の王を免れた彼。


「ルールを破ることなんてしないでよね、セツ。僕に面倒事が舞い込んでくるのはごめんだよ」


 スピリトが自身の影にしまい込んでいたらしいチェサを取り出した。それに心臓を埋めなおす作業を実行しながら、彼の言った内容に俺は違う返事をした。


「はあ、なぜ俺の家でそれをやる必要があるんだ!」


 自分の実験部屋でやってくれ。見せつけてくるのをやめろ。しかし、そのような不満が通用するはずもない。


「セツへの忠告と森の空間に行くよりもこっちの方が近かったから。あと、セツへの嫌がらせも含んでる」


 返す言葉は思い浮かばなかった。

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