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30話

 悪魔の国、デレアスモスが壊した国が今後どうなるのかは不明だ。案外、本当に悪魔の国になってしまうかもしれない。



 暗い中にいる多くの人影。誰がある言葉を発したときに、周りは騒ぎになりはじめる。


「おい、知らせだぞ!」


「悪魔の王がなくなったそうよ」


「えーー! 何だって!?」


「スピリト様とは、連絡を取れないのかしら?」


 さまざまな反応がある中で、ある一つの議論がされた。人影ははっきりとはしないが、悪魔たちであろう。


「ねぇ、次の悪魔の王って誰がなるの?」


「え〜、俺やりたくないよ」


「私も嫌よ」


「じゃあ、スピリト様を呼び戻そうよ」


「やっぱり、スピリト様が王になるべきだよね!」


 悪魔の王を譲りはじめる者たち。悪魔にとって王は必要な存在である。なぜなら、それがいなければ、ルールを守らなかったものを罰することができないからだ。だから、王様を決めることは必須のことであった。



 王に罰を与える役割を持つものもいる。それが、補佐官のことである。唯一、王様に手を出しても許される者だ。もし、補佐官以外のものがそれを殺せば、実行した者は死ぬ運命。悪魔の持つ役割、課せられたそれから外れる行いをした場合、呪いが発動するらしい。

 このことを知っている者は少ない。スピリト様はご存知であるだろうが、上位の悪魔でも知らない者も多くいる。


 第五位の悪魔である私がそれらを知ったのも偶然のことだもの。

 私の名前はシャルメ。悪魔の一人だ。


 デレアスモス様が国を移すというから皆でいろいろと準備して待っていたというのに、本人の訃報とは――。

 とても迷惑なことね。悪魔のルールを破ってスピリト様に殺されてしまうなんて、本当に面倒なことをしてくれるわ。悪魔の王なんて私もやりたくないわよ。


 ルールを守らなかったから、現在補佐官を担っているスピリト様に罰せられても仕方がない。しかし、王のことを考えると、モヤモヤとする。


 スピリト様が補佐官であることを知っている者は少ないわよ。私がこれを知っているのは、強い悪魔たちの情報を集めるようにしているから。それを行っていてもやっぱりわからないことが多いわ。

 ちなみに、デレアスモス様が亡くなったことを知らせたのは私である。


「おい、スピリト様の居場所を知っているやつはいるか?」


「スピリト様の友人だったら知っていると思いますが――」


「そいつの行方は?」


「わかりませんよ」


 ガヤガヤとうるさいくらいに悪魔たちが話し合っていく。悪魔の王は重大な役割を持った存在。しかし、それを誰もやりたがらないことも事実なのだ。先程もいったが、私もやりたいとは思わないわ。


 悪魔を監視し、ルールを破ったら罰を与えたり、国の統治をしたりするなど面倒よ。好きでもない情報収集はやりたくない。なによりも自由の身でありたいのよ。


 大きな役割に縛られて生きるのは嫌いだわ。



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