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3話

 私は選んだ。生きることを……。

 生きたいと思い、あの人たちを赦しはしないと心にどす黒いものが再び蘇った。



 少女は声に言う。ハッキリと大きな声で。


「生きたい!」


 声が笑う。少女の答えを聞いて内心で声を上げて笑った。そして、少女に出す声は甘くして……。


『(っくくく、はははっ!! ) 生きたいと言ったこと後悔しない?』


「後悔しません! 絶対に」


『そっか。じゃあ、君の名前を教えて?』


「な、なまえ? ですか?」


『そう。名前を教えて?』


 戸惑う少女に声は急かすように言う。少女は気づかない。生き返ることについての対価の重さに、少女は気づかない。


「なまえは、愛姫(あいひ)


愛姫(あいひ)、じゃあその名前を捨てる覚悟はある? 名前を捨てなきゃ生き返れないけどね』


「えっ! なまえをすてなきゃ……生き返れない?」


『生き返れないよ。名前を捨てることも生き返らせるための重要な儀式みたいなもの。抵抗あるなら……やめる?』


 何故か、凍りつく。声が【やめる】と聞いた時の声の低さに今までしゃべっていたときとの違いように少女は怯える。だが、少女はもう止まれなかった。

 心の内にある黒い感情を生きたいという欲望を捨てることはできなかったから。声が怖かったけれど、少女は答える。ハッキリと意思を持った言葉で……。


「なまえをすてます!」


『覚悟できたんだね。じゃあ、心を僕にくれる?』


「それも、生き返るのに必要なことですか?」


『そうだよ』


「あげます! こころ!!」


 少女は声に考えることなく即答した。声は薄い笑みを少女には見えない中浮かべる。


『最後。生き返るのに必要なこと、生き返った後に僕が説明する以外のことついて、何も問わないと誓って?』


「ぅぅうー。なっ、なんか恐ろしいけど、誓います。 何も聞かないと……」


(あーあー、面白過ぎて笑っちゃう。子どもが一番狙い目なんだよね。騙されやすい、純粋な心を持ってるからね。君は生き返ってから最後質問の重要性になんて思うのか、楽しみだ)


 俺はほくそ笑み、少女を(さそ)う。こちら側の世界。生の世界に……。

 生き返った後に気づく身体の変化は元には戻らない。



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