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2話

 少女は暗いところにいた。

 真っ黒の湖が少女の目の前にある。少女の目の前にあった湖は広がり、少女の片足が湖に浸かってしまう。

 片足を湖からぬこうと思って足を動かすが、全然足が取れることはなく、底なし沼のように足がどんどん沈んでいく。ぬけない片足をなんとかぬこうともがけばもがくほど、足が沈む。そんなことをしているとまた、湖が広がり、深さも増していた。

 腰くらいまで沈んでしまった身体。少女はただ目を閉じた。もう、この黒い湖からは抜け出すことができないのだと、何故か本能で感じていた。だが、怖さは感じることはなく、心地良さを感じた。




 しばらくしてから声が聞こえた。いざなうような優しく甘い声。


『こちらにおいで。愛姫あいひ。君にもう一度、新たな人生をあげよう。どう生きるのかは君次第だよ』


 愛姫は声にさそわれるように手を伸ばしながら、真っ黒な湖の中もっと深い場所に進んでいく。

少女は肩まで湖に沈んでしまい、手も見えなくなったがそれでも前に進み続けた。

 その先の何か(・・)を求めて……。


「……ぁ」


 ついに少女は沈んでしまう。そして、真っ黒な水の中、また声が聞こえた。不思議と息は出来た。しかし、視界だけは意味をなさず、黒だけの世界で、自分の存在さえも見えない。

 だが、何度でも言う。怖く(・・)はないのだ。


『おいで。こちらにおいで』


 少女は声に誘われ、方向感覚がままならないまま、声だけを頼りに進んだ。

 おいで、おいでと何度も誘われながら……。

 少女が辿り着いた先は……濃い闇、暗黒と表現出来る世界。


『ふふっ、やっとこちらまで来てくれたね。嬉しいよ。僕は君に会えて嬉しい』


 愛姫は聞こえる声に質問する。


「貴方はだぁれ? 私は死んだはずだよ?」


『確かに君は死んだよ。でも、もう一度生きたいなら、何かを成し遂げたいと思うなら生き返らせてあげる』


 甘い甘い言葉で少女を誘惑する声。


「無理だよ」


 少女は小さく呟いた。声は優しく少女を包み込むように話し掛ける。


『何故、無理だと思うのかな?』


「死んだ人間はどんな手を使おうとも生き返らないってなんとなくだけど、小さな私でもわかるよ。だから、父様(とおさま)母様(かあさま)も……」


 話していくうちにどんどん小さくなる少女の声。

 少女に話す声はそれについては何も言わず、話し掛ける。


『絶対に人は生き返らないよ。君の言っている通りね。でも、僕は君が気に入ったからもう一度生きるチャンスをあげようとしてる。それに君が乗るのか乗らないのかは自由だよ?』


「……。」


『早くした方がいいよ? 僕は気まぐれだからね。ただ、君は僕に手を指し伸ばせばいいだけだよ? 僕には君を生き返らせる力がある。本当なら出来ないことを実現する力。でも……』


 少女に話し掛ける声は詰まった。少女は何事かを声に聞く。


「でも、なんですか?」


 少女は喉を鳴らす。


『くすっ、でもね? 僕でも一回しか出来ない芸当だよ。さぁ? どうする? 二度とないチャンスを逃すか、有効的使うか。君次第だよ』


 声は優しく笑う。


(俺的にはこのチャンスを使って生きてほしいけどな)


 さぁ? 君はどっちを選ぶ?



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