10話
パッチリと気持ちよく起きた朝。人間からしたら夜の領域である。ユアは魂や血を分け与えられたことで調子を取り戻したのか、ムスッと不機嫌になりながらも起き上がった。
「気が立ってるからって、あんなに酷くしなくてもいいのに〜〜」
少し文句を漏らして、衣服を着替えた。本日は外に出て情報を集める。前から決まっていた情報収集の日。足手まといだと言われるが、自分にできることはやりたいのだ。
なぜ、自分の国は滅びなければいけなかったのだろうか。それを知りたいのに、私では無理なのだろうか。きっと、セツは私のことを外に出したくないのだと思う。でも、そんなセツの事情なんて御構い無しだ。
「待って! セツ!! 今日は私も連れて行ってもらうからね」
屋敷から出ようとしていたセツに声をかけた。案の定、ため息を吐かれた。
「足手纏いだ。守るのも楽ではない。屋敷でおとなしくしていろ」
「わかった! セツの言うことを聞くから連れて行って!!」
「全然、わかってない」
再度目の前でため息を吐かれたが、私に何を言っても無駄だと思ったのだろう。
「言うことはちゃんと聞くように……」
その一言で自分の外出が許されたと分かると、急いで彼の後を追いかけた。
ユアなりに情報収集をしようとするが、セツはユアのことを足手纏いだと決めつけている。そのため、ユアが何かをする前に先に彼が行動を起こしているのだ。
自分で情報を集めようと思っても、全部セツが行なってしまう。
「ユアはそばにいればいいから。情報集めは全部俺がする」
彼の言うことを聞くと言った手前、破ることはできない。破ろうと思えば破れる。しかし、その後何をされるか考えるとしたがっておいた方が身のためなのだ。
悪魔特有のものなのかは知らないが、なんでも安易にこなすことのできるものは狡いと思う。彼のそばを離れないように動いてはいる。だが、私は内心面白くなかった。
セツはユアが知りたいと思う情報を知っていた。ユアの国が滅んだ真実をもう手に入れていた。しかし、セツはユアにそれを言う気がなかった。
ふと、可笑しな気配を感じたセツ。ユアの方を見る。
「この場を動かずに待っていろ。絶対に動くな」
そう言い残してどこかに向かって走っていった。
ユアは一人残される。人が多くない場所であったのが幸いだ。人が多い場所であったら、人々の通行の妨げとなっているはずだ。一人残されるのは寂しい。だが、何かあったから私を置いていったのだろう。
危険に巻き込まないように。きっと、わたしの守りも完璧だと考える。理由を問われたら、なんとなくとしか言えないけどね。
「お嬢さん。ちょっといいだろうか?」
後ろから肩を軽く叩かれて、ビクッと反応する。突然、声をかけられたことも触れられたことも驚いたのだ。
振り返ると女の人にも見える肌が真っ白で顔の整っている美形。とにかく人形のような作りの人。漏れてくる言葉は単調であるが、キレイとしか表しようがない。世界規模のランキングがあったら、上位に入賞するくらいの美人といえる。
「お嬢さんはこんなところで何をしている? 私はお嬢さんに道を教えてもらいたくて尋ねたのだが、わかるだろうか?」
見惚れていた。声も大きくないのに透き通るような声で聞き入ってしまった。すぐにハッと気を取りなおす。
そんなことを言われてもユアは道などわかるわけがないので、潔く首を左右に振って知らないことを相手に伝えた。
「では、お嬢さん。心細いので一緒に来て欲しいが、いいだろうか?」
そう言って手を差し出してくる相手に戸惑う。セツにここで待っていろと言われたために動くことはできない。しかし、困っている人をこのままにしておくこともできない。
二つの出来事がせめぎ合っている。迷いに迷って相手の手を取ろうとした時に、セツが現れた。
「その手を掴む必要はない。やってくれたなっ!デレアスモス!!」
セツはユアの手を引っ張り、自分の後ろに隠した。彼は怒気を帯びていた。その時の私にできることは、セツの服をギュッと掴むことだけであった。




