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男が呼んだらしい、迎えの車が来て何も分からないまま何処かへ少年、二人は連れてこられた。


濡れた体を暖め渡された着替えを済ませ、待つように言われた部屋の壁は真っ白で大きな白い机が一つとパイプ椅子が三つ、天井の片隅に監視カメラがついている。


並んだパイプ椅子に寄り添うように座り、机の上に用意された紙コップにはオレンジ色の飲み物が注がれていた。

それを飲み終えると、しばらくして部屋の扉が開き先程の男が現れた。


「怖かったでしょう」


その男の後ろには見知らぬ女がおり、気遣うように声をかけられた二人は戸惑った様子に見える。


「少し聞きたいことがあるの……いいかしら?」


女は二人と向き合うように座った。


「まず名前と何歳かな?」


「俺は兄の陽斗(はると)、十二才です……弟の」


警戒した様子の陽斗は茶色の大きな瞳で女と男を交互に見て答えた。

ちゃんと拭いていないのか瞳と似た色の髪は、しっとりと濡れている。


「……月斗(つきと)、十才」


陽斗と似た大きな茶色の瞳を伏せ震える小さな声で答えた。

陽斗が拭いてやったのか、月斗の柔らかそうな茶色の髪はきちんと乾いている。


「そこにいる、君たちを保護した無愛想な男の名前は(れん)


興味がなさそうに憐は鋭い黒い瞳で兄弟を一瞥すると壁に寄りかかり、煙草を取り出した。

燐の黒髪は陽斗より濡れていて肩にタオルをかけ、滴が伝い落ちている。


「私は彼の同僚、名前は鞍馬(くらま)……年齢は彼と同じで三十才、よろしくね」


鞍馬は長い黒髪を後ろで一つに結い、黒縁の眼鏡をかけていた。

手にもった用紙に兄弟と話つつ書き込んでいる。


「あの……貴方たちは警察ですか?」

「違う」


煙を吐き出し、燐は寄りかかったままで答えた。

不機嫌そうに見える男に月斗が怯え陽斗の腕を掴む。


「怖がってるじゃないの、二人とも安心して、怒ってるわけじゃないから、元々、怖い顔なだけだからね」

「……うるせぇな、ショタコンの変態女が……」

「誰が変態だ、しめるぞ、てめぇ、二人に誤解されんだろうが!!」

「ひっ!!」


苛立った鞍馬の変わりように月斗が、さらに怯え陽斗の腕を強く掴んだ。


「月斗、大丈夫……それで、あの警察じゃないって」

「……警察ではないわ、悪いけど君たちには、まだ、話せないの」

「話せない、警察じゃないって……なら父さんと母さんは……あの、両親が襲われたんです!!、警察に」


分からないことが多過ぎて陽斗は矢継ぎ早に話す。


「死んだ」

「っ」

「!?」


燐が煙草の煙を吐き出し、淡々と答えた。

怯え目を伏せていた月斗が燐を凝視し、陽斗が目を伏せる。


「何を見た?、何をされてた、お前らも見たんだろ?、それで生きてると思うか?」

「燐、やめなさいよ」


「っ、ぁ」


夏休みになって父さんも休みが取れて、月斗が行きたがっていた遊園地に明日……けど雨がすごくて気になって俺たちは眠れなくて……父さん達の部屋から明かりが漏れてて覗い……。


「ヴうぇ、かはっ!!」


おぞましい光景が陽斗の脳内でフラッシュバックし、せり上がる不快感に口を押さえたが堪えきれず吐き出した。


何を見た、されてた……。


知らない女が母さんの上に乗って動けないようにして、これ当たりだよ、石榴様にプレゼントだ、と言って母さんの首を噛んだ。


へぇ、よかったなぁ、知らない男が父さんの耳を喰い千切って喰い千切った耳を母さんの近くに吐き出して……そこを啜っているように見えた。


なぁ、石榴様は腹ん中が欲しいんだろ、俺、コイツになるからお前も、ソイツになってペア同士になろうぜ、父さんの目は開いていた耳から血が、たくさん流れているのに叫んだりも泣いたりもせず口から涎を出して笑ってた。


「陽兄っ!?」


月斗は俺の後ろにいて俺の名前を呼んで……母さんが逃げてぇ、って月斗は部屋の中を……っ。


「ぅえ、くは……つき、と……はぁ、はく、月斗!!」


胃の中にあった物を全て吐き終え陽斗は息を無理矢理整えると弟の肩を掴んだ。


「っ、お前も見たのか!?……父さんが……」


月斗が見ていないと首を振った。


「……本当か?」

「う、うん……母さんの声が聞こえて、すぐ走ったから何があったの?」

「よかった」


陽斗は安心したのか額を月斗の肩に乗せ呟く。


「……弟の方は、何があったのか見てないみたいだな」

「はぁ、厄介ね、二人とも見てると思ったのに」


燐は煙を吐き出すと携帯灰皿を出して煙草を消し、鞍馬は兄弟を見つめ溜め息をつくと眼鏡を上げた。


「陽斗くん、悪いけど月斗くんに何があったか話してくれるかな?」

「っ……どうして、月斗に」

「死ぬか、お前が見たモノと戦う為に生きるか、どちらか選んでもらうからだ」


肩から顔を上げた陽斗が信じられないと燐と鞍馬を見上げる。


「ジュース、おいしかったかしら……それにはね、毒が入っていたの」

「このまま選べなくても毒が回ってお前らは二十四時間後には死ぬ」

「吐き出しても無駄よ、もう体に回っているから」


呆然と見上げる陽斗に、二人は慣れたように説明していく。


「二十四時間っていったが……早く決めた方がいい」

「決まったら、あの監視カメラに伝えて迎えにくるから」


鞍馬は監視カメラを指差し立ち上がると紙コップを持って部屋を後にし、燐もそれに続いた。


「……月斗、父さんと母さんは……」


また兄弟だけになった白い部屋、陽斗は監視カメラを一度、睨むと決心し口を開く。

陽斗は選んだ両親に何があったか話すことを。


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