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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

大国様シリーズ

大国様が本気で義父を攻略するようです・九

作者: 八島えく

注意:このお話は、男性同士・義理の父子同士の恋愛表現がございます。閲覧の際はご注意ください。

 あなたは私だけのもの、だなんて言いたくありません。

 あなたを縛りつけてしまうような相手になりたくないんです。

 だから心を押し殺して、人格者であろうと努めています。


 でもうまくいきません。あなたが私ではない誰かと笑い合っていると――。


 怒りに体が燃えて、狂ってしまいそうです。



 ~大国様が本気で義父を攻略するようです・九~



 月見の団子を食べようとしている猫をつっついた。猫の毛の色たるや、みたらし団子みたいで、逆にお前を食ってやろうかと猫を眺めてみる。その視線に気づいたのか猫は少し身構えた。

 出雲の屋敷ではなく兄・月読の屋敷で、俺――建速素佐之男(たけはやすさのお)は、猫とじゃれていた。

 この猫は兄のペットで、随分昔に伊勢の外宮で捨てられていたのを拾ったそうだ。


 珍しく俺は出雲とは別の場所にいる。というのも、しばらくここで義理息子――大国主の療養に付き添っているためだ。

 大国主――俺が大国と呼ぶその男は出雲の社に祀られている神で、地上(ここはたいてい中つ国と呼ばれる)の神のボスみたいな立場にある。

 

 その大国がなぜ療養かというと、ひと月前の無茶が原因である。

 その日、俺は避暑と称して兄の屋敷に逃げていた。それを追った大国は、クソ暑い外を歩きに歩いてばったり倒れた。

 発見が早かったから大事には至らなかったけど、念のため念のためと俺がひどく心配したせいで現在ひと月以上兄の屋敷に居候させてもらっているというわけである。兄には頭が上がらない。


 月見用の団子は、兄が仲よくしてる女神からもらった。あんまりものを食べない兄貴も、その女神の作るものなら食えるという。

「にゃー」

「あん? なんだよみたらし団子」

「みー」

 猫が俺の手をぺすぺす叩く。その手が、俺の後ろの方をさす。

「何かある……って、あ。大国」

 いつもなら完璧な微笑でもって俺を見つめるが、今の大国は少し弱っているためかその余裕もないらしい。羽織を肩にかけて、わずかに微笑むだけ。それでも絵になるんだからことさらむかつく。


「お義父さん……」

「どうした? 具合、悪くなっちまったか? 喉渇いたか?」

「いえ、いたって良好です。月読殿のお屋敷に長くご厄介になってしまって……」

「大丈夫だよ。兄貴はよくなるまでいていいって言ってくれてるし、気にすることないって」

「しかし……。いえ、そうですね。元気になりましたら、また改めてお礼をしなければ」

「だな。うちの兄貴は優しいから」

「ええ。……そう言えば今宵はお月見でしたっけ」

「そう。兄貴は今手が離せないから、俺がこうして月見の団子を猫から守ってんの」

 兄の猫(あとで聞いたが名前は『みたらし』だそうだ。まんまじゃねーか)がめざとく団子に手を伸ばす。俺はその猫を抱えて団子を守る。

「みー……」

「夜になるまでの辛抱だ、みたらし」

「ああ、そろそろ逢魔が時ですね。月もそろそろ出るかと」

 大国は俺のとなりにそっと座る。弱っていてもボスはボスというんだろうか、仕草ひとつひとつが完璧だ。

 

 しばらくして、兄が自室からこちらの居間へ戻って来た。どうやら『仕事』は終わったのかな。

「スサ、ちょっとお使いを頼んでもいいか?」

 兄が申し訳なさそうに聞く。

「いいよ。何すればいい?」

「せめて内容を聞いてから承諾しなさい……。いや、今宵の月見の共にと、カグツチへお酒を届けるはずだったんだけど……こちらの『仕事』がまだ片づかなくてな。私の代わりに行ってくれまいか」

「それくらい、なんてことないさ。カグ兄んとこなら、黄泉の屋敷でいいか?」

「うん、黄泉のお屋敷に届けると言っておいたから。……ごめんな、スサ」

「兄貴が気にすることないよ。居候させてもらってんだから、これくらいはさせてくれ」

「ありがとう、スサ」

 兄は、そろーっと団子をつけ狙っているみたらし団子を見逃さずしっかり捕まえた。みゃーんと強く抗議する猫の声も、聞こえないふり。



 

 ――思えば、ことの発端は数か月前のことだ。

 酒を酌み交わした翌朝、大国は俺に向かって宣言した。


『お義父さん、私と子作りしてください!!』


 もう何も言えねえ。俺は大国の義父で、大国は俺の義理の息子だ。血のつながりがないとはいえ(厳密には一応あるっちゃあるんだけど)父と子だ。俺の常識で考えたら絶対ありえない。だいたい俺にはクシナダがいるし。


 大国は俺をからかってんのかとも思ったがどうも違うらしい。


 奴は本気だった。真剣に俺と一緒になりたいと願ってる。

 その真剣さに嘘はなかったから、俺もちゃんと受け止めてやろうと思った。

 受け止めてやった上で、逃げてるんだけど。



 中つ国じゅうの女という女を追っかけまわし、関係を持った数は八百万……。国つ神きってのタラシとして有名な奴が、どうしてこんな荒っぽくてきれいでもなんでもない俺を選んだのかまるでわからなかった。


 別に好かれるのは嬉しいことだ。でも相手が大国だからさすがの俺もどうしたらいいか見当もつかない。

 本音を言うと、求愛されている間が全盛期なんだ。手に入らないから余計に燃える。

 でもいざ手に入ると熱も冷める。その冷める時が俺には怖くてたまらない。


 捨てられる、見放される、拒まれる、相手にされなくなる、一番じゃなくなる……。

 そういうネガティブな気持ちがどろどろにまざって俺を混乱させる。

 だから俺はあいつの気持ちに揺らいでたまるかと必死にはねつける。


 はねつけてる間は、大国が俺を見てくれるから。見てくれてるだけでいいから、結ばれた後の放置が怖い。

 そうして俺は、大国の気持ちを踏みにじる。一緒になる資格もない、どーしようもない馬鹿が俺だ。



 さて、俺は今黄泉の国を出歩いている。国つ神が黄泉や高天原へ行くときは、ちゃんとした申請が必要なんだけど、俺の場合はほとんど顔パスで通らせてもらえる。黄泉では顔がきくからだ。

 ただ、なぜか療養中の大国までついてきているという状態なのが解せん。


「なあ、大国……カグ兄に酒を届けるだけだぞ?」

「いえ、私もカグツチ殿に挨拶しておこうかと思いまして」

「ああ、そう……。具合は? 黄泉は結構瘴気が強いから、あたるときついぞ」

「大丈夫です、何の問題もありません」

 そう言って大国は笑うけど、俺にしてみればまだ心配だ。「そっか」と納得したふりをして、あいつが倒れないように、じっと気をつけて見守ってやることにする。


 カグツチの屋敷は、黄泉で二番目に大きなぼろ屋敷だ。ちなみに一番は母上。

 カグツチが屋敷を留守にしてても、ペットに預ければいいだろう。大国を常に気にしながらカグツチの屋敷を目指す。


 

「あれ、旦那?」

 後ろから声がした。

 振り向くと、初めてみる顔がふたりいた。


 ひとりは着物を適当に着崩した男。顔には赤い刻印みたいなものがあちこち掘られてて、着物からたまに見える腹にも似たようなものがある。ぼさぼさした茶っぽい髪にぼろい下駄。目は蛇みたいにきらきらしている、気がする。

 もうひとりは目を引く美少年だった。隣国の着物で、頭には鋭い角が生えてる。ということは鬼なのかな。


「旦那ー!」

 着物の男が、いきなり俺に抱き着いて来た。えっ、何こいつ俺知ってる?

「ぎゃあっ!?」

「うわ~旦那お久しぶりっすー! いやぁこんな痩せちゃって……ちゃんと食ってんですか?」

「いやいや誰!? 黄泉のモンか……!? いや黄泉ではみかけてないから……とにかく誰?」

「えーやだなーいけずー。わての腹かっさばいて神剣引き抜いたんは旦那じゃないっすか」

「腹……?」


 腹を開いて剣? というと何となくわかってきた。

 高天原を出て間もないころのことだ。一年ごとに娘を食っていくという怪物を俺が酒に酔わせて殺し、その体内から剣を見出して姉に渡した。


 ……とすると、こいつ……まさか。


「お前……オロチ? ヤマタノオロチか?」

「せーかい!! いやぁまたお会いできて光栄ですわ~」

 相変わらず抱き着いて腰とか背中とかすりすりしてくるんだけどこいつ! 

「うわ、どこ触って……!!」

「旦那の尻っすけど」

「いやそういうこと聞いてんじゃなくて! ひぇっ、こら、腰はやめろ……! っつか隙間に手ぇ入れるな……っ!!」

「んーガリガリっすね。マジでちゃんと食ってんです?」

 だめだ聞いてない。

 腹とか肩とかさわさわされてる。直に。うわやばいくすぐったい。こういうのはまるで駄目なんだって……! でもやめてっていってもやめないし、振り払っていいのかこれ?


「この……阿呆!!」

「うごふっ」

 俺にべたべたくっついてきたオロチの顔に容赦なく蹴りを見舞ったのは、美形の鬼っこだった。スカートには切れ目がついていたらしく、そっからすらっとした足が現れた。しかもスパッツとはなかなか防御がかたいし。

 オロチは盛大に向こうへぶっ飛び、地面に何度もたたきつけられてようやく止まった。

 美形が態勢を整えて俺に向き直り、深く頭を下げる。

「うちのバカ父が申し訳ない」

「父……?」

「そこのオロチ……じゃなくてバカ蛇は僕の父親だ」

「リン、そこは言い直す必要ないで?」

「えっと、名前を聞いてもいいか?」

 リンと呼ばれた美形の鬼は、俺と大国に一礼する。


「初めまして、スサノオ様、大国主様。僕は竜胆(りんどう)。……俗に酒呑童子と呼ばれている鬼でございます」

「酒呑童子……大江山の鬼ですね」

 大国が納得する。

 そういえば、大江山の鬼はオロチの息子で、たいそう美形だと聞いたことがある。あまたの女から恋文をもらっていたけど、読まずに焼いたとかなんとか。

「左様。普段は大江山におりますが、この父……じゃなくて絶倫蛇の手伝いでこちらへ参りました」

「だからリン、言い直さなくていいんだって痛い痛い痛い」

 あろうことかこのリンとやら、オロチの顔をぐりぐり踏みにじってる……。本当に親子なのか? 

 色々とオロチとこのリンには聞きたいことだらけなんだが、とりあえず一番最初の疑問から潰していこう。


「オロチって、蛇……だよな?」

「へぇ。旦那に退治されたあと大江山で療養しましてなぁ、ゆえあって黄泉のイザナミ様に気に入っていただけまして。黄泉の番人やらんかって誘われてこっちに来てるんですわぁ。人の形になってんのはイザナミ様に蛇の姿を封じてもらってるからっつうことです」

「何でわざわざ人の形に? 蛇の方が番人としてはいいんじゃないか?」

「『デカい。軽量化しましょぉ』ってことだそうですぜ」

「それでいいのかよ母上……。んじゃ、もう一つ。お前、クシナダのことはどうなったんだ? 食いたいほど執着してたじゃねーか」

「わて、自分より強いお方に惚れるみたいでしてなぁ。奥様には手出しせんのでご安心くだせー。っつーか手ぇ出したら逆にひっつかまるくらいクシナダ様はお強いし」

「ああ、そうだな」

 結婚して間もないころは泣き虫で弱くて、俺が守ってやらなきゃって庇護欲をそそられるほどだったが、今のクシナダは俺がいなくても充分強いしやっていけそうなほど逞しくなっている。蛇だったら素手でひっつかめるほどだ。


「あ、リン……は、名前があるんだな」

「はい。酒呑童子というのは種族名のようなものです。竜胆という名は、頼光……僕が懇意にしている者がわかりやすいようにとつけたのです」

「そっか」

「して、スサノオ様と大国主様は、こちらへ何をしに来られたのでしょうか」

 いけね忘れるとこだった。

「あ、カグ兄に、月見用の酒を届けに来たんだ。ほんとは兄貴が来るはずだったんだけど、仕事が長引いてるみたいで」

「さようでしたか。あいにく、カグツチ様はペットを連れて中つ国へ御用です。僕でよければお預かりしますが」

「いや、屋敷に置いてくからいいよ。ありがと、リン」

「いえ。……ところでさっきから気になっておりましたが」

 リンが、俺の後ろを覗き込む。


「大国主様、お顔の色がすぐれませんね。瘴気に当てられましたか」

 リンの言葉に俺は振り向く。大国は俺の袖を掴んで、じっと立っていた。

 何だか顔が真っ青だ。よく見たら震えてる。どうして気づいてやれなかったんだろう。

「だ、大丈夫か、大国? 具合、悪いか? 先に中つ国へ帰るか?」

「いえ……瘴気のことは問題ないのです」

「でもこんなに震えて……」

「その……恥ずかしながら、私…………」

 大国が、耳を澄ましてなければ聞こえないくらいの声で暴露した。


「私……蛇が苦手なのです」



 その後俺は、オロチとリンと別れてカグツチのお屋敷前に酒を置いておいた。

 兄の屋敷に戻ったあと、カグツチから電話があり、『確かに酒は頂いたよ』と知らせてくれた。


 兄はまだ仕事が片づかないらしく、心配になったみたらしが仕事部屋へ入って行った。

 

 俺はリンからもらったジュース片手に、綺麗な月を眺めている。隣には大国がいる。

 心なしか大国は機嫌が悪い。悪いというか何か怖い。ついだジュースに一度も口をつけてない。


「あの……大国?」

「何でしょうか」

 声がめちゃ低い。やっぱり、人の形をとっていたとはいってもオロチは蛇だ。あんなにでかい蛇と一緒にいたらたまらなかったんだろう。気づいてやれない自分が憎い。

「えっと……ごめんな、蛇が苦手って知らなくて。すぐに用を済ませてこっちに戻るべきだったよ」

「いえ、オロチ殿のことは何も気にしておりません」

「そうか? あの、気に障ったならごめん、俺何か怒らせるようなことしたか?」

「怒るとは?」

「いや、何か帰ってきてからのお前、機嫌が悪いから……」

 大国はジュースの入ったグラスを傍らに置いた。視線を流すようにして俺を睨んでくる。

 

 大国と目が合った瞬間、この上なくぞっとした。グラスを落とさないですんだのは幸運だ。こんなに怖い目、久しぶりだった。

 俺に対して恨みを抱いてるような、何か憎いと感じてるような、俺を責めるような目だ。


「お義父さんは、オロチ殿に触れられても平気なんですね」

「えぇ? いや、平気じゃないって。いきなり抱き着かれて尻揉まれてんだぞこっちは」

「その割には本気で拒絶しませんでしたね。お義母さんを食おうとした敵であった相手と親しげにお話されておりましたし」

「あっちにはもう敵意ないだろ。悪さしてる風でもないし、母上がああして蛇の姿を封じてるなら何もできねーだろうし」

 こいつは何を言ってるんだ? 俺は親しげに話しているつもりはなかった。そりゃちょっとは仲良くなりたいって下心はあったけど、それ以上の気持ちは何もなかった。


「どうしてあの蛇には簡単に笑いかけるのですか。どうしてあんなに楽しそうに話されるのですか。どうして、どうして、お義父さん……」

 大国が俺にずいずい近づいてくる。鼻先がくっつきそうだ。

 どうしてって言われたって、何がどうしてなのかわからない。わかんないよ……。

「大国……?」




「なぜですか。私の時は笑って下さらないのに。触れようとすると本気で引き離そうとするのに。どうして私にも同じように、笑いかけてくれないのですか」


 大国の声と顔が、恨みと一緒に必死さが混じって来た。今にも泣きそうな大国が、俺にすがってくる。



 大国がそう吐きだしてくれたおかげで、ようやく俺は大国の不機嫌が理解できた。

「お前……、やきもちやいたのか」

 おそるおそる確認してみると、大国は素直にうなずいた。


 何だか変な気持ちだった。いつも余裕で誰に好かれても、誰にフラれても何の問題もないですって言いたげに笑うようなこいつが、よりにもよって俺なんかにやきもちやくなんて。

 いや、俺がたまに大国に嫉妬することはある。認めたくないけど、だんだんこいつの好意が心地よくて、このまま一緒になってもいいんじゃないかって揺らぐことがある。すんでのところで推し留まるけど。

 俺だけが振り回されてるようで不公平だなんて思ったことが何度もある。それと一緒に、こいつは何があっても完璧な微笑でもって起こったことを受け止めるくらい余裕ぶっこいた敵わない奴なんだとも考えてた。ある種の信頼……なのかもしれない。


 だから今日の大国にはほんとに驚いた。こんなこと言うのは変だけど、こいつでも嫉妬なんてするんだと、新たな発見をした気持だった。



「……申し訳ありません。幼稚な真似をしてしまいました」

 大国はするっと俺から離れていく。俺はまた、無意識にあいつを傷つけたみたいだ。


「大国」

 その埋め合わせはしてやらないといけないよな。

 俺は大国の手をとって、無理やりこっちに引き寄せた。

「うわっ? お、お義父さん……!?」

「いーから、こっち来い」

 奴の細い手を掴んで引っ張るのなんて俺には簡単なことだ。驚いてるあいつの顔が何か嬉しい。ざまあみろ。


「今日だけだかんな」

 そういって抱きしめてやった。ほんとにこんなん今日くらいしかやってやんねー。

「おとうさん」

「その……ごめんな。俺、そんなつもりはなかったけど……大国を寂しがらせちまったみてーで。ごめん」

「そのような……。これは私の醜い嫉妬に過ぎません。あなたが誰と親しくなるのだって、あなたの自由なのに、私が」

「いいっつの。今日は月見するんだから、お互いぎすぎすしたままなんて嫌だろ? せっかくのふたりっきりなんだからさ」

「お義父さん……ありがとう、ございます」

「俺こそ、ありがとな。……あと最初に謝っとく、ごめん」

「と仰いますと?」

 俺の腕の中でゆったりしてる大国が上目づかいに聞いてくる。うわこの視線毒だ……。

「その……やきもちやいてもらうのも…………なんつーか、悪い気しなくて、ちょっと嬉しかった、とか、思っちゃったり……して」

 恥ずかしくなって顔をそらす。自分の気持ちを正直に言うのは恥ずかしいな。こいつの前限定で。

「ふ……ではもっと嫉妬に狂ってもよろしいでしょうか」

「よくねーよ!」

「それは残念」

 大国はもう完璧な微笑に戻ってる。ご機嫌は治せたみたいだった。


 言った手前、今宵だけはずっとくっついててやる。今更親しげに話すなんてできないから、とりあえず月を眺めてぽつぽつと世間話でもしよう。


 大国、今宵の月見は、俺とおまえだけのものだ。

 だから、これ以上やきもちはやいてくれるなよ。

大国様に嫉妬させてみました。男性の嫉妬って怖い気がします。そしてオロチさんと酒呑童子君も書きたかったので、登場させることができて満足です!

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