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DOORs  作者: 日凪セツナ
2/18

第一章 「Ⅱ」 星暦3014/9/13

 少年はベッドの上で起き上がった。

 白い壁に天井、清潔感漂う部屋に、つんとした薬品の匂いが漂っている。病院だろうか。少年は頭に手を遣って周囲を見回した。

 少年は、幼さはまだ色濃く残るが、それなりに端正な顔立ちであった。髪は腰まで在る、透き通るような銀髪。大きな凛とした双眸は空色だ。

 少年の頭には、血の滲んだ包帯が巻かれていた。他にも、怪我の治療痕のようなものがあちこちに見える。

 そして少年の左手首には、華奢な少年には似合わない、武骨な器具が取り付けられていた。

 全体の形は、やたら大きなブレスレット、と言ったところだ。だが繋ぎ目は複雑な金具でロックされており、長方形の画面と数字のボタン、その他幾つかのボタンが付いていた。

「起きたかい」

 白衣の男が部屋に入ってきた。少年は振り返る。

「住民ナンバー四八二番。名前は……潰れて読めないな……何て言うんだい?」

「…………」

 少年は戸惑ったように男を見上げたが、俯き、小さく唇を動かした。

「……シュナ」

「シュナ君か。気分はどうだい? 怪我は痛むかな」

「いえ……」

 男……医師は聴診器をシュナの胸に当てた。

「何故、シェルターの外に出たりしたんだい? 今の人類の状況は分かっているだろう」

「え、と……」

 シュナは視線を彷徨わせる。その様子に、医師は怪訝そうな顔になった。

「分かりません……俺が何で此処に居るのかも……そもそも……俺が、誰なのかも……」

「……記憶喪失?」

 医師が困ったような顔になった。

「……世界の状況は分かるかい?」

「いいえ、覚えていません……」

「なら教えてあげよう。何か思い出すかも知れない」

 医師は窓に近寄り、カーテンを開けた。どんよりと淀んだ、灰色の空が見える。

「一年程前、ロボットと人間の戦争が始まった」

 医師は椅子に座り、シュナを見遣る。

「当然、ロボットが優勢だ。だが人間も抵抗をしぶとく続け……今は、街一つを囲んだこのシェルター内に立てこもり、辛うじて抵抗を続けている。ロボットを操っている黒幕を我々は『X』と呼んでいる。シェルター外にも基地を作り、何とかXに対抗している状況だ」

「……X……」

「お、何か思い出したかい?」

「……いえ、只、」

 シュナは固く手を握り、俯いた。

「その言葉は……その名前は……何故だか、不愉快です」

 そして、吐き出すように呟いた。



『シュナ…………せ、』『また…………が』『Xに殺され……』


 頭の中で、完成しない声がする。シュナは病院を出ると、不快そうに頭を軽く振った。

 戦争中だ、動ける患者を置いて置く余裕は、何処の病院にも無い。幸い大きな怪我もしていない、シュナは目覚めて早々に街に放り出された。

 やはり、見覚えの無い風景だ。シュナは自分の左手首にはまっている装置を見遣る。もしかしたらこれが、自分の正体を掴むヒントになるのかも知れないが、どのボタンを押しても、一向に反応が無かった。

 住民ナンバー四八二番。それが唯一、『自分』に繋がる鍵であったが―――元々、人口爆発によって把握しきれなくなった市民を整理するための番号であるらしいこれは、社会システムが崩壊している今では、さして意味の無いものらしい。

 シュナは周囲を見回すと、街の中心――――だろう、多分―――に向かって歩き出す。中心部には、奇妙に古めかしい時計塔が在った。周囲の家との雰囲気が全く合っていないが、それ故に奇妙な存在感を放っているあの塔からならば、街の全てを見下ろせるだろうか。

 世界でただ一人、自分だけが取り残されたかのような、奇妙な感覚であった。誰もが当然のように生きている中、自分だけは、自分が進むべき道を見失っている。

 シュナに見える世界は、只、暗闇だけが広がっていた。

「っ……」

 時計塔に着くと、シュナは迷うことなく階段を上り始める。案外に重い左手首の器具が、一歩ごとに揺れて、酷く痛んだ。

 時計塔から見下ろす街は、見事なまでに灰色であった。シュナは無表情に街を見下ろしていたが、遠くにシェルターの外への門を見付けると、すぐに踵を返す。

 Xを倒さなければ。

 記憶を失っても、その義務感だけは、シュナの中に残っていた。

 だが――――どうやって。

「……レジスタンス」

 シュナは足を止めて呟いた。

 戦いを続けていると言うことは、何処かにそういった類の集団が居る筈だ。シュナは階段を降りながら、痛む頭に手を遣った。

 目が覚める前の記憶らしきものがちらつくが、はっきりとした像は完成せず、只、木霊する声だけが頭の中で響いていた。

 シュナは人気の無い通りを抜け、狭い路地を通り、広場に出た。そして、道を訊こうと人を探す。ぽつぽつと露店は出て居るものの、人影はまばらで、その人々の顔にも生気は無かった。シュナは怪訝そうに眉宇を顰め、道の端で蹲っている男に駆け寄る。

「あ、そいつは―――」

 誰かが後方から声を掛けたが、シュナは構わず男の前にしゃがみ、肩に触れる。

「あの……」

「危ない!」

 鋭い声が飛んできた。シュナは咄嗟に後方に飛び退く。が―――焼け付くような痛みが、シュナを襲った。

 頬に手を遣れば、傷ができ、血が滲んでいる。シュナは驚いたような顔で男を見遣った。男は悪意を剥き出しにした顔でシュナを睨み、ナイフを握っている。

「不味い、」

 男がナイフを突き出した。シュナは―――考えるより先に、ナイフを避け、伸び切った腕を掴んで捻り上げる。男は体勢を崩して前のめりに倒れ、シュナはその背に膝を付いて関節技を決めた。

 男が悲鳴を上げる。が、シュナも自分の行動に戸惑っていた。

 もしかしたら自分は、レジスタンスなのだろうか……シュナは男から離れ、落ちたナイフを拾い上げる。

「……く、」

 男は起き上がり、右肩を押さえてシュナを睨んだ。そして改めて、シュナに飛びかかる。

 シュナは男に比べればかなり小柄である。故に、武器が無くても平気だと判断したのだろうが――――冷静さを欠いているのだろう、男はシュナの手にナイフが在ることを失念していた。

「―――らあっ!」

 男の横顔に跳び蹴りが決まったのは、次の瞬間であった。

「ぐげっ!?」

 男はシュナの眼前で横に吹っ飛ばされ、無様に石畳に叩きつけられる。シュナの前に着地し、攻撃者は呆れたような顔になった。

「ったく……ガキ相手に大人気ねぇな、ホント」

 攻撃者は、燃えるような赤髪の少年であった。シュナとそう変わらない年にも見える。簡素な服の左袖には、紺地に白の刺繍で、武装した女の横顔が描かれた腕章が在った。

「大丈夫か、お前。気を付けろよ、Xの脅威に長く晒されて、自暴自棄になってる奴も多い」

「はい……あの、」

「此奴は、俺が自警団に引き渡す。お前は早く家に帰れよ」

「あの、俺、」

「ああ、俺はレジスタンスのサロス。礼は良いから早く帰れ」

 少年、サロスは倒れた男を俯せにし、両手に手錠を掛けて立たせる。

「あの、すみません俺、実は―――」

 シュナはサロスの後を追い、その肩を掴んだ。

「行く場所が無いんです。俺を、レジスタンスに入れて貰えませんか?」

「…………は?」

 振り返ったサロスは、きょとんとした表情でそう言った。



 時計塔から程近い、シェルター内の工業区域にサロスとシュナは踏み込んだ。

 機械油の独特な臭いが漂っていて異様な雰囲気ではあるが、街の中心部よりは幾らか活気が在るだろうか。作業着姿で行きかう人々は互いに声を掛けあっており、その表情には多少ではあるが明るさが在った。

 時計塔の鐘が鳴る。正午の鐘だ。サロスは「腹減ったな」と呟き、シュナを振り返った。

「お前は?」

「あまり」

「そうか」

 サロスはそれ以上、何も言わずに前を向く。シュナは左腕の装置を撫で、サロスの背を見上げた。

 サロスは、レジスタンスとなるには幾つかのテストを受ける必要が在る、と言った。

 信用に足る人物かと言うことを見定める、面接や身元の審査。相手に対する知識。単純な戦闘能力。機転が利くか否か。人類の希望であり、唯一の軍隊とも言えるレジスタンスは、それだけ高い能力が必要とされている。

「着いたぞ」

 サロスは小さな倉庫の前で立ち止まった。え、とシュナはその倉庫を見上げる。

 周囲に在る工場の方がまだ大きいくらいだ。此処は本部ではないのだろうか。

 サロスがシャッターを外から開け、電気をつける。やはり、自動車が二台やっと入るほどの、狭い倉庫であった。壁には大量の工具が掛けられ、雑に木箱が重ねられている。幾つかの作りかけの武器のようなものも在った。空気は埃臭く、くすんだ窓から入って来る日光は茶色に濁っている。

「こっちだ」

 しかしサロスは、この工場を素通りし、一番奥のドアを開いた。

「……これが、入り口ですか」

 ドアの向こうには、地下へと続くであろう階段が在った。サロスは頷き、腕章の縫い目から、半透明のフィルムを取り出す。布と布の間に入れてあったらしい。

 壁に取り付けられているインターフォンを押し、サロスはインターフォンの上部にある隙間にフィルムを挿入する。フィルムが吸い込まれ、画面に緑色の文字が現れた。

「あー、暗証番号入れるからちょっとそっち向いてくれ」

 シュナは大人しくそっぽを向く。カシャカシャとキーを叩く音がし、最後に甲高い音が鳴った。

「認証完了……こっちを閉めないと奥のロックが解除されないから、速く入ってくれ」

 シュナが階段に入ると、サロスはドアを閉めた。一瞬の暗黒の後、ぼんやりとした灯りが階段を照らす。天井には、等間隔で裸電球が吊るされていた。

「先に行け」

 サロスに言われ、シュナは階段を降り始める。コンクリートの壁に囲まれているせいか、奇妙な寒気を感じた。

 数段離れて、サロスも降りてくる。見張っているのか、とシュナは気付き、振り返らずに足を速めた。

 階段は途中でゆっくりとカーブしていた。シュナは壁に手を付き、慎重に段を踏みしめる。

 二、三分程降りただろうか。二人は、鉄の扉の前に立っていた。

 サロスが扉を引き開ける。薄明かりに慣れた目には痛いような光が、シュナの目に飛び込んできた。

 同時に、楽しげな人の声。シュナにとっては、目が覚めて初めて耳にしたものだった。

 扉の向こうは、大きな部屋になっていた。奥にはまた幾つかのドアが在るが、今は閉じられている。円形の部屋の中央には巨大な机が在り、その両脇に椅子が並べられていた。その左側には、低いテーブルとソファが並んでいる。机を挟んで反対側には、壁際にぐるりと椅子が在り、その上の壁に、コートや帽子、銃火器や剣などが吊るされていた。

「おかえり、サロス。自警団から聞いているよ、また暴れたって」

 ソファに座っていた、茶髪の青年が近付いてくる。上品な―――敢えて言うなればサロスとは真逆の―――雰囲気を纏った青年であった。

「五月蝿えよ、子供を襲ってたんだ、仕方ないだろ」

「僕達の仕事は市民を守ることなんだ。子供を襲ってたとはいえ、平和的に解決できるように努めないと」

「へいへい。ツァールトにゃ敵わねぇな。俺はそんなに気が長くない」

「心構えの話だよ……ところで、その子は?」

 青年、ツァールトがシュナを見遣る。

「入隊希望者」

 サロスはそう言ってシュナの頭に手を遣った。

「ふぅん……サロス、君がそう言う子を連れてくるなんて珍しいじゃないか」

 ツァールトはシュナに視線を合わせて屈む。シュナは一歩退き、しかし真っ直ぐにツァールトを見返した。

「うん、強そうな子だ。身元証明をまずして貰おうかな……ああ、僕はレジスタンスのツァールト。一応、この部隊のリーダーだ」

 ツァールトが差し出した手を、シュナは握り返す。そして、困ったような顔になった。

「すみません、身元証明はできません……焼けた住民カードしか」

「面接受けるだけで良いよ」

「でも……」

 シュナは俯く。ツァールトはその様子に、シュナの前にしゃがんでシュナを見上げた。

「何か、心配かな? 大丈夫、此処の人達は襲ってきたりしないから」

「いえ、違うんです、その、俺、ちょっと記憶喪失で……本名も何も、分からないから……」

「……記憶喪失」

 流石に予想外だったのか、ツァールトはそう繰り返し、立ち上がって口元に手を当てる。サロスも驚いたようにシュナを見遣った。シュナは申し訳なさそうな顔になる。

「そうか……外に出たんだね。怪我をしているようだけど」

「はい、多分」

「……そうだね、保護は必要だ……君は何歳か……分からないよね」

 シュナは頷く。ツァールトは困ったような顔になり、ソファを振り返った。

「ナイト! どうしよう、本部に連絡しようか?」

 ソファに寝転がり、顔に本を乗せていた青年が起き上がる。寝癖の付いた髪は艶やかな金髪で、眠そうに瞬かせる目は深い青色であった。

「んだよ、騒がしい……本部に連絡? 要らねぇよ、俺達は一応独立体勢なんだから」

「うーん……この子を保護すべきか、自警団に預けるべきかなんだけど」

「そんなの、そいつの意志次第じゃねぇか」

 ナイトは起き上がり、頭を掻きながらシュナに近付いてきた。サロスともツァールトとも違う、何処か刺々しく冷たい雰囲気だ。

「ガキだな、年齢は?」

「記憶喪失なんだよ」

「住民カードは。誕生年くらい在んだろ」

 シュナは慌ててカードを差し出す。名前の部分は焼け焦げていたが、その隣、誕生年の部分は辛うじて読み取れた。

「三千年ジャスト……十四歳か」

「何だ、俺の一個下か」

 サロスが驚いたような顔になる。それ以前にシュナは、サロスが十五歳だと言うことに驚いていた。

「記憶喪失なら、信用云々以前だから良いだろう。戦闘力だ」

 ナイトは腕を組んでシュナを見下ろす。

「戦闘力はともかく、それなりに身体能力は在りそうだ。俺が蹴り飛ばした奴を、一回組み伏せてたから」

 サロスがフォローするように言った。ナイトは訝しげな視線をシュナに向ける。

「何で組み伏せてたのにサロスが介入する事態になったんだ」

「詰めが甘かっただけだ」

「お前にぁ聞いてねぇって」

 ナイトが鋭くサロスを横目で睨む。サロスは顔を逸らして肩を竦めた。

「ええと……どれくらい戦えるかはまだ分かりません。でも、俺、Xを倒したい気概だけは負けません!」

「そんな奴腐るほど居るさ、このシェルターには」

 ナイトはばっさりと言い返す。

「人類を追い詰めたXが憎い。肉親を殺したXが憎い。ロボットを操るだけで出て来ようとしないXが憎い。今の状況が苦しいからXが憎い。Xを憎んでおけば、生きやすい……今はそんな状況だ。気概だけで生き残れるなら苦労しない」

「でも……」

「――――君、戦場が怖くないのか?」

 ツァールトが言って、シュナはぎくりとした顔でツァールトを見上げる。

「こ……怖いですけど」

「なら上々だ」

「え?」

 ツァールトはナイトを振り返った。

「合格でいいじゃないか。気持ちが在れば能力は自ずと身に着くよ」

「だがなぁ、」

「ナイト、今はとにかく戦力が欲しいんだ。彼は多少ならず戦えるようだし、訓練に参加させるくらいは良いだろう?」

「……はいはいリーダー。分かったよ。本部に連絡するのは頼んだぜ」

 ナイトは息を吐いて両手を広げる。ツァールトはにっこりと笑った。

「えっと……」

「合格だよ」

 困惑顔のシュナに苦笑を見せ、サロスがその頭を撫でた。ツァールトは足早に、奥のドアを開けて部屋を出て行った。サロスはシュナの背中を押して部屋に入れ、扉を閉じる。ナイトは少しばかり不満顔ながらも、特に文句は言わずにソファへと戻っていった。

 ツァールトが、紺色の何かを持って戻って来る。

「サロス、皆を集めて」

「はーい」

「君は此処に居て良い。記憶喪失だったね、何か、呼んで欲しい名前は在るかい?」

「……シュナ、です」

「シュナ……」

 その名前に、ツァールトは暫時、何かを思い出したような顔になる。が、すぐに笑顔を浮かべた。

「良い名前だ。皆に紹介しよう」

 ナイトが、ソファに寝ていたもう一人の金髪の少年を起こし、中央の椅子に座らせる。戻ってきたサロスや、サロスの後に続いて現れた少年達も、同様に机を挟んで椅子に座った。

 ツァールトは、皆を見回せる机の横に立ち、シュナを隣に立たせる。そして机に手を付き、少年達の顔を見回した。

「では、皆。新入りを紹介しよう。シュナだ」

 ツァールトはシュナの背を叩く。シュナはびくりとして背筋を伸ばした。

「戦闘力はまだ不明だが、期待は出来そうだ。記憶喪失らしい。保護を兼ねてこの部隊に入ることになった」

「……よろしく、お願いします」

 シュナは頭を下げた。まばらな拍手が帰って来る。

「じゃあ、皆も自己紹介を」

 ツァールトは、一番手前の席に座って腕を組んでいたナイトを見て頷く。ナイトは息を吐いて立ち上がった。

「部隊内ランキング一位、ナイト。十六歳。オールラウンダーだ」

「部隊内ランキング二位、サロス。十五歳。接近戦闘特化(セイヴァ―)」

 ツァールトが、サロスの隣の空いていた席に近付き、サロスの隣で姿勢を正す。

「部隊内ランキング三位。ツァールトだ。十七歳、遠距離戦闘特化(ガンナー)。一応、リーダーだよ」

「えっと、部隊内ランキング四位、フィリアです。十四歳。後方支援特化(キーパー)。よろしく」

 ツァールトの隣で慌てて立ち上がったのは、茶髪茶目の少年だった。続いて、ナイトの向かいの、黒髪黒瞳の少年が立ち上がる。

「部隊内ランキング五位、アフティ。十三歳。セイヴァー」

 アフティは、色濃く幼さの残る顔を険しくし、シュナを睨んだ。アフティを小声で諌め、その隣の少年が立ち上がる。

「部隊内ランキング六位。ソレダー。十四歳、ガンナー。ナイト兄さんの弟だよ。よろしくね」

 にこっ、と、金髪碧眼の少年が微笑んだ。シュナは小さく頭を下げる。

「さて、と……もう一人いるんだけど、その子は後にしよう。規則を言うよ」

 ツァールトが小さな手帳を開く。

「一つ。レジスタンスたるもの、市民の代表である自覚を持ち、市民の安全を最優先すること。二つ、部隊内では常に戦闘訓練を積み、実践訓練などでランキング付けをして常に精進すべし。三つ、この部隊では競い合うのは是とするが、いがみ合う等関係を悪化させる行為は禁止する。四つ、」

 ツァールトは手帳を閉じ、薄く微笑んだ。その笑みには、何処か獰猛な色が混ざっている。

「共通の敵Xに迎合し部隊を裏切った場合、極刑」

 一瞬、ツァールトの声に仄暗いものが混じる。シュナは一瞬肩を竦めた。

「……まあ、細かいことは追々でいい。さあ、これを」

 ツァールトはシュナの横に戻り、シュナの左腕に、先刻持ってきたもの―――レジスタンスの腕章を付けた。

「さて、シュナ君、」

 ツァールトの言葉に、ずざっ、と、レジスタンス達が自分の腕章を見せつけるように構えた。突然見せられた結束力に、シュナはたじろいだ顔になる。五人の少年戦士を背負い、ツァールトは両手を広げた。


「ようこそ、レジスタンス第十七支部、少年部隊『アプサラス』へ」



「……あ、れ……?」

 シュナは自分の顔に手を遣った。ポーズを決めていた少年達も、驚いたような顔になる。

「……何でだろ……」

 シュナは、泣いていた。

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