エピローグ 「拝啓 六年前の俺へ」
風が、銀髪を撫でる。水色の瞳を細め、シュナは顔を上げた。
「なぁ、ソリア」
「何よ」
「俺の選んだ道、正しかったよな?」
シュナの視界には、果てしなく続く廃墟が広がっていた。シェルターから遥か二百キロ、ロボットによって滅ぼされた、地方都市だ。
「何億人って人が死んだ。死なない道は選べたんだ。だけど、」
「シュナ」
ソリアはシュナの顎に手を遣り、自分を振り向かせる。そして、優しく微笑んだ。
「貴方は正しい。何億人もの命を、一人の人間が背負うことは不可能よ」
「そうだ。お前が間違っていたら俺は此処に居ない」
アオが、鉄の手でシュナの頭を叩いた。シュナは露骨に顔を顰める。
「お前な! 重いんだよ!」
「そうか?」
「ソリア! 此奴の人格データ何でアオにそっくりなんだよ!」
「だってそれが一番、彼らしいもの」
ソリアは笑って肩を竦めた。
「あら、ツァールトからメールが来てるわ。明日、金髪兄弟連れてくるって」
「へいへい」
シュナは溜息を吐いて瓦礫を持ち上げる。頭上に広がる空は、以前はどんより曇って居ることが多かったが、最近では晴れて、青空が見えることが増えてきていた。
「で、何でそんな自問をするの?」
「いや。だとしたら、俺は……もう必要ないから分解したけど、あのメールで六年前の俺に、メールを送りたいな」
「どうしてよ」
「記憶失って、戦争中で、凄く不安だったけど」
シュナはそして朗らかに笑った。
「案外、楽しい未来が待っているって」
(了)
これで終わりなのですが、番外編が一つあります。よって連載のみ続きます。ストーリーは此処で終了です。