第十四章 「Ⅲ」 星暦3020/8/13
扉の奥には、薄暗い廊下が在った。壁は灰色で、床は衝撃を吸収する白いゴム製だ。シュナは拳銃を構え、アオに続いて廊下を進む。
「メインルームには入れないのか?」
「ああ」
「……でも、」
「伏せろ!」
アオは振り返りざま、シュナの頭を掴んで床に押し付ける。直後、壁の小さな穴から何かが飛び出し、向かいの壁に突き刺さる。後ろに居たサロスが青い顔になった。
アオは舌打ちをする。アフティがすかさず銃を壁に向け、その小さな穴に弾丸を撃ち込んだ。穴は鉛玉で塞がれる。
「……衛兵が起きるか」
「任せろ、先行く」
アフティが槍を構えて先に立った。アオは少しばかり眉宇を顰める。が、何も言わずに小さく頷いた。
「アフティ、」
「大丈夫だ」
不安気な顔になったシュナを、ナイトが止める。
「アフティは死なねぇ」
ナイトは言って、白剣を構えた。
壁の隙間に青白い光が走り、薄暗かった廊下が光に包まれてゆく。奥から甲高い起動音が聞こえて来た。
廊下の奥から、白くて細いフォルムのロボットが現れる。アフティは足を止め、槍を構えて腰を落とした。
「……突っ切るぞ、無駄に戦うな」
アオが言って、掌を奥に向ける。
現れたロボットは、室内用になっているのか、長剣やライフルの類は装備していなかった。代わりに、腕や足に仕込み刀が在り、小型の銃の銃口が指先に覗いていた。
ナイトとアフティが同時に飛び出した。ツァールトとサロスは同時に小銃を構え、シュナの両脇に立つ。アオは顔を顰め、言った。
「後ろから攻撃が来る。三秒後に銃撃が右上」
「っ!?」
サロスが盾を構え、すぐに跳弾の音がする。アオは言葉を続ける。
「五秒後に左下から毒針、十秒後に左右の真横から散弾。走れ」
シュナが壁の穴に銃弾を撃ち込み、三人はアフティとナイトを追って走り出す。
「うーん……面倒だねぇ」
ツァールトが薄い笑みを浮かべて、持っていたスナイパーライフルを前に向ける。既に銃剣の鞘は外されており、鉄色の刃が鈍く光っている。
「ぶっ放すか」
ツァールトは唇を舐め、自分に合わせてストックを伸ばす。バイポットは折り畳まれたままで、スコープカバーも外されていない。が、構わずツァールトはレバーを引いて銃弾を装填した。
「行くぞ、シュナ!」
「おう!」
サロスとシュナは左右に分かれて銃弾の通り道を開け、銃とナイフを構えてアフティとナイトに近付いた。
「っらあ!」
アフティが後方にロボットを蹴り飛ばす。ロボットはばらけ、後方からも五人に襲い掛かった。が、セイヴァーのアフティとサロスはそれを気にせず前に突き進み、オールラウンダーのシュナとナイトがその二人に続いてロボットを蹴散らして行く。
そしてガンナーのツァールトが、冷静に、床に転がるロボットを始末してゆく。ゴンッ、と鈍い音がしてロボットが破壊された。
「くそ、うっじゃうじゃ来やがる!」
アフティが壁を蹴って跳び上がり、ロボットの顔面を踏み付ける。
アオが無線を入れた。全員の無線が連動して起動し、声が聞こえる。ノイズ混じりで流れ出したのは、フィリアの声だった。
『こちら、第二外基地っ! 今、Xの中ですか?』
「フィリア!?」
ナイトが驚きを露わにし、それでも腕は止めずにロボットの首を飛ばす。青白い電撃が迸った。
『外にもロボットが出てきてるんです。人工物には入れないって命令が解除されたらしくて……応援も呼んだし、僕とソレダーで食い止めますから、外は気にしないでください。ソリアが集めたXの情報を言いますね!』
「頼む!」
シュナがロボットの右腕を切り捨てる。
『かなり昔に作られた人工知能です。ロボットは相当数抱えていて、でも全てが戦闘用な訳じゃ無いですよ。メインルーム付近は戦闘行為が禁止されています。皆が今居るのは恐らく、第五入り口ですね。侵入者対策が一番しっかりしているところです』
「アオふざけんなこの野郎―――!」
サロスが悲痛な叫びを上げながら、ロボットの胸元を真っ二つにする。
『直線で二百メートル。それからゆっくりと地下に向かいます。更に三百メートル進むと、小型の昇降機が在ります。それでメインルーム付近に入れます。パスワードは、』
爆音がした。アフティが前方に投げた火薬玉だ。
「昇降機、あれかっ!?」
サロスが火薬玉を放り投げながら、ロボットの向こうに見えるガラス戸を見遣った。そしてその隣に在る、小さな扉を睨み付ける。
「あれがロボットの排出口……、」
サロスが銃を扉に向ける。が、それを感知したロボットがサロスの、伸ばされた右腕に群がった。
「不味い!」
それに気付いたシュナが、ナイフを腰の鞘に収め、サロスの腕を掴んでいるロボットに飛びかかる。
「シュナ! 駄目だ、」
アオが叫ぶ。その目は、シュナが飛びかかったロボットの頭に在る、小さな傷を捉えていた。脳裏に、この先に用意されている結末が蘇る。
『ヴェルグ・シュナイダーは星暦三千二十年、X本部でロボットに殺される』
その『殺すロボット』も、同じの筈だ。アオは苦々しく顔を顰めた。
自分が『Ⅱ』で最期に見た光景、頭に傷の在る、白いロボット――――
「あああああっ!」
サロスが叫び、右腕を思い切り振り回した。二体のロボットは剥がれ、残り一体は壁に叩きつけられる。シュナは寸前で体を剥がし、難を逃れた。
「はあーっ、はあーっ、はあーっ、」
サロスは、だらりと垂れさがった己の右腕を掴み、荒い息を吐く。アオは一瞬、呆気にとられたような顔になった。
「退けサロス」
サロスの後ろに下がっていたナイトが、腰帯につけているグレネードランチャーを扉に向けて撃つ。一斉発射された弾丸はロボットの排出口に吸い込まれ、奥で爆発した。ナイトは間髪入れず、薬莢を排出、新しい薬莢をセットして引き金を引く。
二度目の銃声と爆音が響き、倒れたロボット達で扉が塞がれた。
アフティが、電撃を発する槍で最後のロボットを切り捨てる。破壊されたロボットが、一同の足元には積み重なっていた。
「昇降機……パスワードは、」
少なからず憔悴した顔で、アフティは無線を掴む。が、無線は既に切れていた。
「……電波が届かない場所に来たんだな」
「ふざけんなこの野郎っ!」
アフティが無線を床に叩きつけた。そして、疲れ切ったように床に座り込む。
「アオ、てめぇ、全部知ってんだろ? 何で楽な道を選ばない」
「知らない。俺はこの道しか通ったことが無い」
「だがよ、」
「前回は一人だった。一人なら何とか切り抜けて逃げられる」
そしてアオは腕を組んだ。ナイトが怪訝そうに眉宇を顰める。
「……パスワードは俺が知っている。『進め(MAKE WAY)』だ」
ツァールトがパスワードを打ち込み、心配そうにサロスを見遣る。サロスは右肩を押さえて呻いた。
「……折れちゃいねぇ、が……やばい、完全に、外れてる」
サロスの額に脂汗が滲む。アオが開いた昇降機の扉を掴んで一同を振り返った。
「……サロス、大丈夫か」
「大丈……うぐっ……!?」
「……サロス、歯ぁ食いしばれ」
ナイトがサロスの右腕を掴む。
「痛い痛い痛い痛い! ちょ、駄目! ナイト、ツァールト!?」
ツァールトが左側からサロスの肩を掴み、体を固定させる。
「待って待って待っ――――うごっ!?」
ナイトがサロスの肩を、体重を乗せた一撃でねじ込んだ。ゴキュッ、と、鈍い音が響く。シュナは顔を顰めて耳を塞いだ。
「入ったな」
「……し……死ぬかと思った……」
サロスがその場に崩れ落ちて汗を拭う。
「……くっ……」
そんな戦士達の様子を見、アオは小さく笑った。
「アオ?」
「いや。此処から先は、俺は行けない。お前達だけで行け」
「は?」
「大丈夫だ。シュナ、此処から先はお前が道標だ」
アオはシュナ達五人を昇降機に入れ、一人で外に立つ。
「ルートは変わった。シュナ、お前は死なない」
「……アオ?」
「このドア『Ⅲ』で、人類は救われるだろう」
アオはそして、にかっ、と笑った。いつも、貼り付けたような無表情が基本のその顔が、妙に既視感の在る笑顔に変わる。
「メールを見れば全部分かる……いや……言ってしまおうか。シュナ」
そしてアオは、機械仕掛けの右手をシュナに差し出す。
「俺は記憶を取り戻して、タイムマシンを作って、Xに侵入して、メインルームに入れなくて、殺された。あの時は皆が遅れて来た。……独りだった」
「……お前、もしかして、」
「そうだ」
アオは目を細める。
「俺は、お前だよ。シュナ」
シュナと握手を交わし、アオは手を引いた。
「ロボットを掃討したから、お前はもう、今日は死なないだろう。お前が今日死なない未来は、俺が今日生まれない未来。俺が今日生まれない未来は、俺が持っている記憶をお前が持っている未来だ」
アオの姿に変化が在った。淡い光のようなものが現れ、アオの、冴えるように青かった髪は銀色になり、白い瞳は水色に、人工皮膚は、日焼けした本物の皮膚へと変わる。背も少しばかり小さくなり、黒い鉄の手は、細い人の手へ、そして機械で覆われていた胴体も、鍛え抜かれた生身へと――――
「……シュナ」
サロスが呆然として呟いた。
昇降機の前に立っていたサイボーグは消え、そこには、彼らの仲間であるシュナ本人が立っていた。
「同じ人間は同じ世界に二人とは存在しない」
アオが―――アオで在った青年が、シュナの胸に手を当てた。
「やっと、俺達は一人に戻れる――――だがまあ、楽しかった」
青年が言って――――ざぁっ、とその姿がばらけ、消滅した。同時に、
「くあっ……!?」
シュナが胸を押さえて蹲る。空気の抜けるような音がして扉が閉まり、昇降機が動き始めた。
「シュナ!」
「シュナ、大丈夫か!」
サロスとツァールトがシュナの横にしゃがむ。シュナは歯を食いしばり、その間から荒い息を吐いた。
「アオ……」
シュナは呟き、痛みが引くのを待って起き上がる。その顔は、以前記憶を取り戻した時のように、酷く憔悴していた。
「シュナ、落ち着いたか? 顔色が悪いが……」
サロスがシュナの汗を拭う。シュナは青白い顔のまま、小さく笑って見せた。
「平気だ。二度目だから、な」
シュナはそして、よろめきながら立ち上がり、止まった昇降機から出る。アフティが無言で肩を貸した。
「アフティ……」
「見え見えの痩せ我慢すんじゃねぇよ」
一同は、地上の数倍、天井の高い、しかし横幅は狭い廊下を歩いて行く。薄暗い廊下には、僅かな腐臭が漂っていた。
「出口だ」
淡い光が漏れ出る扉に、ナイトが駆け寄る。
扉の向こうは、唐突に、広い空間が広がっていた。シュナは顔を上げ、目を瞬かせる。
天井は高く、床も低くなっている。一同が歩いているのは空中に作られた廊下だった。壁も遠く、全体がひんやりとした空気に包まれている。
「……これ、メインルームなのか?」
「……違う」
シュナはソシオを起動し、顔を掻き揚げる。そして、ゆっくりと部屋全体を見回した。
「……アオが、言ったメール……」
シュナは、アオが指定したメールを開く。アフティがそれを覗き込んだ。
『拝啓 百年後の君へ
シュナ……ヴェルグ・シュナイダー。今俺は百年前に居る。メインルームは広いコンピュータ・ルームの先に在る。そのメインルームは約百年前に、ロックが掛けられている。全てをXに任せ、他の人間が介入できないようにだ』
書いて在った文章に、アフティの顔が歪む。シュナはしゃがみ、画面をスクロールさせた。短い文章の下に、添付ファイルが現れる。
「百年前!? っざけんなよ、そいつらのせいで俺らが今困ってるってか!?」
アフティが怒鳴り、シュナは苦い顔で添付ファイルを開く。
「……圧縮ファイル?」
シュナは画面に触れた。ざあっ、と、画面が白黒の砂嵐に変わる。
「おい、壊れたんじゃ、」
サロスがシュナの隣に立って画面を覗き込み、顔を顰めた。が、シュナは数度目を瞬かせ、じっと画面を見詰める。水色の目に映る画面にはしかし、砂嵐が揺れているだけだ。
「……百年前……Xの経緯……研究者……ロック……変わらない歴史……」
シュナは口の中で呟く。
「……どのドアを選ぶか……は、」
ずざっ、とシュナは立ち上がった。
「痛っ!?」
シュナの上に屈んでいたアフティの顎とシュナの頭が激突する。シュナは頭を押さえ、しかししかめっ面のまま、周囲を見回して歩き出す。
「おい、シュナ?」
「無線を繋ごう。ソリアに聞きたいことが在る」
シュナは、今し方出て来たドアの横の小さな扉を開く。そこには、コネクタのようなものと、ボタンが幾つか在った。シュナはポケットからケーブルを取り出し、ソシオとその壁の基盤を繋ぐ。
ソシオが再起動した。
「……このファイルは、俺からのメールだ」
「は?」
「……百年前に戻った俺が、その方法を、俺に送って来たんだ」
シュナの言葉に、ツァールトだけが表情で理解を示す。
「メインルームのロックが掛けられる前、百年前に戻るんだ。その為にタイムマシンを使う。だが……」
シュナはソシオの無線を起動する。
「アオが居た世界だと、此処まで行き付けなかった。だから一発で奥まで……此処まで来られるように、アオは来たんだ」
「それは分かるがよ、それだったら別にルートとか、ドアとやらを変えなくても良いだろ? 百年前に戻れば、わざわざ同じことを繰り返さなくてもよ、」
「それは出来ねぇんだよ、ナイト」
シュナは壁に寄りかかった。そして、高い天井を見上げる。照明がついていないせいか、天井の、回線の灯り以外の部分は闇に包まれていた。
「百年も戻るには、それなりのエネルギーが必要になる。またXまで来るか、それでも……恐らく、二回目は不可能な状況だったんだ」
「だが、」
「ツァールトは死んでいた」
シュナは苦い顔で続ける。
「アフティは死んでいた。ソレダーは死んでいた。ナイトはロボットに拘束されて、生死不明だ。サロスだけが無事で俺の死体をシェルターまで持ち帰った。それがドア『Ⅱ』でのこの後の状況だ。ソレダーが居ないのは人数合わせか? 気に入らねぇな……」
シュナは唇を舐め、腕を組んだ。
「運命は決まっているなんて言葉、嫌いなんだけどな」
「……つまり、帰りがけにサロス以外が全滅、てか?」
「いや。アオが居なくなった以上、それは……いや、アオがこの時点で居なくなっただけ、これから誕生する可能性は十分に在るか」
シュナは目を伏せる。
「つまり、此処で成功させないと、死ぬんだよ」
「……なら指示を出してくれないか」
ツァールトがライフルを壁に立てかける。
「君が目指しているのは、人類の安寧か、それともアプサラスが助かることか。君が此処に居ると言うことは、後者なのだろうが」
ツァールトは小さく笑う。
「今此処から出ないで、全てを終わらせるなら。君以外、人類を救える救世主は居ないんだよ、シュナ」
「……だけど、どうやって百年も前まで戻るんだよ?」
サロスが困惑顔になった。シュナは腕を組んだまま、サロスを見上げる。
「あのメールには、俺の記憶が在った」
「は?」
「どうやって百年前まで戻ったか。どうすればいいのか分かる……何をどうすればいいかはもう分かってる」
シュナはそして、小さく、自嘲気味に笑った。
「分からないのは、俺が生きて、戻って来れるかどうかだ」
メインルームは、半透明な板で仕切られていた。その奥には、操作基盤と思われるものが在る。
その操作基盤の隣には、小さなコンピュータが乗っている机が在り、そのパソコンの隣に、青いヘッドホンが在った。既視感に、シュナは顔を顰める。
「……行けるのか、シュナ」
「ああ」
シュナは目を閉じて踵を返し、壁に寄りかかる。そして、ソシオを見遣った。
「なあソリア。準備は?」
『偉そうに言わないで。完了してるわ。そっちも準備、終わらせたんでしょうね』
シュナは、いつもの調子のソリアに苦笑した。そして、アオが作らせた基盤―――シェルター内のタイムマシンと、Xのエネルギー中枢を接続し、使用者の記憶をデータ化してタイムマシンに送る為のそれを見詰める。
「……ああ。あと少しで完了だ」
『……そう』
「帰って来られるかは分からない。だけど、あの仮説が正しいことはアオで証明された」
『……『パラドックスを無くして前のドアが存在できるようにすれば、そのドアに戻ることが出来る』? アオは、』
「消えた。アオが存在できるのは『Ⅱ』だけ、此処は『Ⅲ』として成立したから。……記憶は俺が継いでいる」
重ねるような言葉に、ソリアは暫時言葉に詰まる。
「……人間の意識だけなら、百年前に戻れる。そしてXが百年後に止まるように設定すれば、存在するドアは『Ⅲ』だけだ。俺の意識を過去に送り、誰かの体を借りる。当然脳は拒絶反応を示すから、ドア『Ⅲ』が存在する道を俺が選べば、つまりドアを変えなければ俺は存在し、俺の意識は此処に戻って来られる」
『……仮説よね』
「仮説だ」
だが、とシュナは苦笑する。
「実験する価値は在るだろう? 成功したら、記憶の再構築は起こらない。誰かが消える可能性も無い」
『貴方のリスクが大きすぎるわ』
「覚悟の上さ」
シュナは半透明の壁から体を剥がし、微笑む。
「……起動してくれ。行ってくる」
『……戻ってきなさいよ』
無線の向こうから、起動音が聞こえて来た。シュナは基盤をソシオに差し込み、そのソシオをXに接続する。
「……さあ、レジスタンス第十七支びゅ……」
シュナは口を押えて横を向いた。サロスがきょとんとして目を瞬かせたが、ナイトは呆れ顔に、ツァールトは何かを察して笑いを堪えている。
「……決め台詞を噛む奴が居るかい。仕切り直しだ」
「~、レジスタンス第十七支部、特殊戦闘部隊アプサラス、『トラベラー』! 最後の任務だ! 行ってきます!」
シュナは赤面して言い直した。アフティは下を向いて肩を震わせている。
「最後まで締まらねぇな、お前は」
「五月蝿えよ」
Xが、ソシオと連動して動き始めた。シュナの体に電撃が走り、その姿がぶれ始める。
「……体は残ってるだろうから、頼むよ」
「ああ。行ってきなさい」
ツァールトが優しく言って――――弾けるような音と共に、シュナは意識を失った。