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Safinia  作者: 東雲 秋葉
9/9

贅沢な時間って…… その3

「あっ」

 コーヒーを飲み終え、さてお店を出ようかといったところで、ノンノちゃんは何か閃いた、思いだしたという感じの、思わずの声を上げました。

「ノンノちゃん、どうかしたの?」

「そりゃあもう、どうかしてたわよ。私だけが言って、コイツが言わないだなんて不公平にも程があるじゃない」

 詳細は分かりませんが、どうやら自己嫌悪に陥っているみたいです。

「と、言うわけで。ミツル、ちゃっちゃと吐きなさい」

「は、はい?」

 吐く? 吐くって何を? 質問の意図は分かりかねますが、吐けば良いんですよね?

 えっと、ちょっと前屈みになって――

「オロロロロロロロ――」

「誰が嘔吐の真似をしろって言った!!!!」

 叫ぶ声とともに頭に鋭い痛みが押し寄せてきました。

「いったー…………」

 顔を上げますと、え? もしかしてそれで私の頭殴ったのですか? ノンノちゃんがコーヒーカップのソーサーを持っていました。

 しかも、叩かれたときの頭に受けたときの打撃の面積を考えると……。

「まさか、ソーサーの縁?」

「ん? なにか言った」

「い、いえ。何も言っておりませんよ」

 このお嬢さん、やる気満々じゃないですか!!

 まずい、下手なことをいったらまたあれで叩かれる。しかも今度はきっと容赦のない一撃が襲ってくるに違いない。あの人にはそれだけのことをやる、覚悟がある――!

 考えなさいミツル。アナタは出来る娘。この状況を突破する鍵は自分の中に眠っているはず。

 ノンノちゃんはなんと言った?

『と、言うわけで。ミツル、ちゃっちゃと吐きなさい』

 吐く。オロロロロロとするわけではなく、吐く。

 ノンノちゃんが前に言って、私が言わなかったことを吐く。

「あぁ、贅沢な時間の使い方のことか」

 そうでしたそうでした。そんな話をしていたような気がします。このお店のパンケーキが美味しくて、忘れてしまっていました。

「なに数10分前くらいのことをキレイさっぱりと忘れてんのよ。アンタの頭の中は……」

「え、なにその残念そうな顔!」

「ミツル、私が悪かったわ」

「何に対して謝ってるのっ?」

「ミツルが悪い訳じゃないの。そのお花畑が悪いのよ」

「それ、遠回しに私の頭が悪いって言ってるよね!? そうだよね!?」

「ええ、そうよ」

「……」

 もうやめて! 私のメンタルはそこまで強くありません!

「ほら、黙ってないで早く答えなさい」

「あぁ、うん。えっとね――」

 私の贅沢な時間の使い方。

「いろんな人とお話しすることかな」

 楽しい話を聞くのが、私は大好きです。

 その人も笑顔になるし、私も幸せな気分になりますから。

「はぁ、相変わらず他人優先思考ね」

「別にそういう訳じゃないよ。楽しいことなら1人じゃなくて、皆でやった方がもっと楽しくなるって思うだけだし」

 時間の使い方。1秒、1分、1時間。どのように使うかはその人によって大きく変わっています。楽しみ方もそれぞれです。

 そんな使い方は勿体ないとか、他の人が思うことでも、自分にとっては大切な時間だってあることでしょう。

 でも、確かなことが一つ。

「ねぇ、ノンノちゃん」

「ん? なによ?」

「ノンノちゃんにとって、この時間って贅沢な時間?」

「……そうねぇ。……まぁ、悪くはないかな」



 楽しい時間は、共有できます。

 

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