思い出の……。 その2
見渡す限り本、本、本、本、本、本……。世界が本で敷き詰められている。
「まるで、どこか違う世界に来ちゃったみたい……」
一体この世界の知り尽くすのに、どのくらいの時間がかかるのでしょうか。
そんな事を考えていると、背後に強い視線を感じました。
「えっと、どうかしたの?」
振り返ると、ノンノちゃんが「何言ってんのこの娘」みたいな念の籠もった目で私を見ているではありませんか。
「あんた、いつもそんなこと言ってるの?」
「え、そんなことって?」
「だから、『どのか違う世界に来ちゃったみたい』ってヤツよ」
ノンノちゃんは、私の声を真似て話します。
「おおっ! 似てる似てる! ノンノちゃん凄いっ!」
「いやぁ、それほどでもあるわー……って違うわよっ!」
照れからの、流れるようなノリツッコミ。
ノンノちゃんん表情はコロコロコロコロ変わっていきます。
「私が言いたいのは、アンタが何時もそんな童話に出てくるプリンセスが発するメルヘンチック的ワードを宣ってるのかってこ・と・よっ!」
「プリンセス・ワードかどうか知らないけど、言ってるかも?」
「何で最後に語尾が上がってるのよ……」
あぁ、アンリさん。こんなお花畑娘に付き合わされて。とノンノちゃんがアンリさんを嘆き始めました。
……そこまで言います?
「私は言うわ」
「えぇー……」
ノンノちゃんのアンリさん愛には困ったものです。
「ミツルのメルヘン脳も困ったものだけどね」
べ、別にメルヘンじゃありませんっ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
休憩の後、再び私たちは整理を始めました。
本を手にとる度に読みたくなる衝動が襲ってきますが、そこは私の城壁のように堅牢な精神が立ちふさがり、進行を阻んでいます。
さて、この辺りは終わりましたが、ノンノちゃんの方はどうでしょうか。
「ノンノちゃーん。こっちは……」
終わったよ。と伝えようと思ったのですが、私は言い淀んでしまいました。ノンノちゃんの様子がちょっとおかしい気がしたのです。
気になった私は、静かにノンノちゃんの方へ歩み寄ります。
その結果、背後まで近づいた訳ですが、私に気づいた様子は全くありません。
ノンノちゃんの肩にポンッと手を起きます。
反射的にビクッと肩が跳ね上がります。
ギギギギッ。と油の抜けた機械の如くぎこちない動作で、首を私の方に回します。
目が合いました。
「やっほー」
と軽い感じに話しかけます。
「…………」
無言。
あれ、なんだかノンノちゃんの顔が悪くなっていっている様な――、
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!」
悲鳴。