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紅蓮のレイズ〜太陽奪還説明書〜  作者: ちよこれいと
第一章
2/22

(1)デアイ


「私が、第202期生リーダーの長谷川綾芽(はせがわあやめ)です」


 ざわついていた会場全体に届くように、人一倍大きな声で言った。全員の視線が綾芽に向いた。


「私は、レイズです」


 静まり返っていた会場が一気にざわつきはじめた。


「おい、聞いたか?今回のリーダー女だってよ」

「しかも、レイズってどういうことなの?」

「女レイズなんて聞いたことねーぞ」


 さまざまな意見が飛び交う中、綾芽は続けた。


「今、女レイズなんて……とか、大丈夫か?と、思ったヤツ……お前らよ~く聞けっ!!」


 そして、大きく息を吸い込んだ。


「私たち、第202期生は!必ず!太陽を取り戻すっ!!」


 そう吐き捨て、壇上を降り、颯爽とその場を立ち去った。




 全世界すべてを包み込んでいた太陽は、今から約200年程前に、突如姿を消した。いや、正しくは太陽が粉々に崩れ落ち、宝玉(ほうぎょく)と化して流れ星のように空から降ってきたのである。基本的には人間界、地球に降ったのだが、ごく稀に異世界へと紛れ込んでいるものもあるとか。


 今は人工的に作られた、人口太陽が空に存在している。これはただ暗い世界を光で照らすだけの役割を担っている。太陽のように優れたものではない。


 中でも優秀な適合者を1グループとし、このグループを中心に活動していくシステムだが、前期生が何らかの形で活動出来なくなった場合は、新たにグループが構成される。今日はその新たなグループ、第202期生の代表者あいさつだったのだ。




「綾ちゃん、やっちゃったネ」

「どうして?」


 無事に?あいさつを済ませてきた綾芽に1番に声を掛けてきたのは、元機動部隊所属の、山城(やまぎ)さくらだった。


「だってさ~、あんなこと言っちゃったら、絶対にやんなきゃいけないじゃン」

「私は、出来ることしか言わないわ」

「いやいや……綾ちゃんは大丈夫かもだけド……」


 前髪に止めているピンを直しながら、さくらは呟いた。


「ハハハ、そういうヤツだってわかってんだろ??」


 同じく元機動部隊所属のメンバー内最年長の雛罌粟皐(ひなげしこう)が、さくらの頭をポンポンと叩きながら会話に入ってきた。


「まぁた、そうやって大人ぶル~」


 さくらは口をとがらせた。


「俺はお前よりも大人だ」

「あ、いたいた~」

「どうしたんだ慌てて、いづみらしくないな」


 医療班所属の上田いづみが、少し小走りで近づいてきた。髪の毛からか洋服からかは分からないが、とてもいい匂いがした。


「葦井さんが話があるから、すぐに部屋まで来るようにだって~」



 宝玉を力に変えることができる人間は、適合者と呼ばれる。適合者の中でも力の違いがあり、大まかに3つに分類される。L=レイズ、R=ロイズ、H=ヘルツに分類され、その頭文字を取ったLRH(エルアールエイチ)という名の施設に皆住んでいるのだ。また、この施設は人間界にあるのだが、異世界へ移動することの可能だ。逆に言えば、LRHから全世界へと行くことも可能なのだ。その最上階が、LRH最高責任者の葦井(よしい)龍の部屋である。


「失礼します」


 綾芽、皐、さくら、いづみの4名が呼ばれた。全員、第202期生メンバーである。


「何ですかァ~?」

「何ですかじゃないだろ、残りのメンバーについてだ」


 葦井はメガネを人差し指で少し上げながら言った。ちなみに各期生は6名で構成される。


「えっ!マジですカ~どんな子~?」


 テンションの上がるさくらをよそに、葦井は続ける。


「1人は、前からここにいる子だ。かわいいんだぞ~」

「……嫌な予感しかしないんだけド」

「確かに」


 さくらと皐は冷めた目で葦井を見る。


「どうして?」


 綾芽は意味が分からないと両手を広げてみた。


「あ、そっか。綾ちゃんはこの前ここに来たばっかだから知らないのカ」

「うん……」

「まぁ、なんだ……簡単に言うと、葦井さんは変態なんだよ」


 申し訳なさそうに皐は言ったが、面白がっているようにも見えた。


「ふ~ん……」


 綾芽は疑いの目で葦井を見つめた。


「何だその目は!今回は本当にかわいいんだぞっ!!」

「いや、誰もかわいくないなんて言ってないですヨ~」


 すると、4人の背後からは怒りに満ち溢れた重々しい空気が流れてきた。


「俺のこと、かわいいって言わないで下さいって何回もお話してますよね?耳付いてますか?」


 声のする方には、小柄だが美形の眼鏡をかけた男の子が立っていた。


「おぉ、夏樹。さぁさぁ、こっちにきてきちんと挨拶しなさい」


 葦井は夏樹を自分の側まで来るように促した。


「……初めまして。LRHのシステム課に所属していました、氷室夏樹です」


 夏樹は葦井の言葉は無視し、その場で少しだけ会釈した。


「わぁ、今回は本当ニ……」

「……かわいいわね~」


 全員の反応に苛立ちを隠せない夏樹だったが、何でもないという素振りをした。


「こらっ、夏樹!俺を無視するんじゃない!」

「はぁ?変なことばっかり言っていると、その中途半端に長い髪の毛……凍らせますよ……?」

「うぅ……」

「葦井さん……。何ビビッてんすか」


 皐は苦笑いした。


「……皐。夏樹のこういう発言は決して冗談ではないのだ。よく覚えておくように」

「ふふっ、はいっ……」


 皐は笑いが止まらなかった。


「そんなことは置いといて、残りの1人は?」


 夏樹は葦井に問うが、何故か綾芽が答える。


「もう1人は、今から迎えに行くのよ」

「あぁ、行って来い。待ちくたびれているだろうよ」


 満面の笑みの綾芽をよそに、他の皆は不安そうに聞いた。


「……どこに?」

「刑務所よ」


 綾芽の言葉に、唖然とするメンバーであった。

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