第十三章 さくらとの和解
翌日の昼間、俺はさくらに電話した。
二ヶ月ぶりだった。コールが三回鳴って、さくらが出た。
「……悠斗?」
「久しぶり」
「うん」
少し間があった。
「ごめん」
俺が言うと、さくらは何も言わなかった。
「あの時、大学でふらふらしてるだけって言ったこと。本当に悪かった。さくらが何を背負って大学に行ってるか、俺は何も分かってなかった。自分の愚痴ばっかり聞かせて、さくらのことを一度も聞かなかった」
さくらはしばらく黙っていた。
「……悠斗、何かあった?」
「あった」
「何が」
「色々な人に会って、いろんな話を聞いた。それで俺、薬剤師になろうと思う」
「……薬剤師」
「薬学部に入るために、来年から受験勉強する。じいちゃんばあちゃんに役立てる仕事がしたくなった。それだけじゃなくて、ちゃんと知識を持って人の役に立ちたいと、初めて本気でそう思った」
さくらはしばらく黙っていた。
「悠斗が変わった」
「そうか」
「うん。なんか分かる。声が違う」
「変わったかどうかはまだ分からんけど、変わらないといけないとは分かった」
電話口で、さくらが小さく笑った気がした。
「私、悠斗のこと怒ってたけど。でも実はちょっと心配もしてた」
「そうか」
「大阪で一人で、ちゃんとやれてるかなって。愚痴ばっかり言ってくるし、なんか辛そうやし」
「心配かけた」
「かけた」
間があった。
「さくら、これから夢の話、ちゃんと聞かせてくれ。俺、さくらのこと何も聞いてなかった」
「……うん。今度ゆっくり話そ」
「ああ」
「悠斗」
「何」
「頑張りや。本気で言ってる」
電話を切った後、俺は少しだけ笑った。
窓の外に、冬の大阪の空が広がっていた。
灰色だったが、どこかに光があった。




