表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VTuber探偵ミコが行く!  作者: べなお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/25

第8話:世界はたまにご褒美をくれる

【登場人物】

速水小石はやみこいし

女子高生VTuber。ハンドルネームはミコ。主人公の後輩で、過去に引きこもりだったところを助けられてから配信者のマネージャーの仕事をしてもらう関係だったが喧嘩してクビにした。配信で稲置がバックレたことにして、彼の顔を晒して指名手配した。副業で探偵をしている。今回ようやく登場。


氷室稲置ひむろいなぎ

小石のマネージャーだったが無職になった?。19歳。高校時代は生徒会長をしていた。料理がそこそこできる。変人をなぜか吸い寄せてしまう人生を送っている。前回は母校で後輩といちゃいちゃしていた。小石との喧嘩の行方は一体?

「それで、土下座の準備とシャネルのバッグは買ってきたのかな? 稲置先輩?」


「……すまん、これしか買えなかった」


 稲置は手のひらサイズの、綺麗に包装された箱を小石に手渡した。場所は小石の配信用の部屋。港区のタワーマンションの一室だ。窓から眺める景色には、人々の喧騒が随分遠くに見える。高いところは得意ではないので、あまり見ないようにする。


 何故か小石は和装をしていた。時期的な大人の事情では決してない。多分。


「……バッグじゃないみたいだけど、シャネルとは書いてあるわね」


「俺の予算限界だ」


「開けても良い?」


「どうぞ」


 箱から出てきたのは、美しいコンパクトミラーだった。シャネルの店員に聞きながら、現実的な予算内で何とか探し当てたものだ。


「シャネルってこんなのも作ってるのね。知らなかった」


「あと土下座はしないからな。俺は間違ったことを言ったつもりはないし、したつもりもない。思ったことをそのまま言っただけだ。だが、ほんの少しだけ正直すぎた。本当のことを言うことだけが優しさじゃない。その点に関しては俺が悪かった。すまん」


 この気持ちだけは、嘘だけど嘘じゃない。


「……まあ、小石もちょっとだけ言い過ぎたかもです」


 小石は背を向けて、その表情を隠した。どんな顔をしているのだろう。覗いてみたい気もする。


「そこで、相談なんだが、今色々あって無職なんだ。小石のところでマネージャーか何か募集してないか?」


「……そういえばちょうど、マネージャーが一人空ができたところだったんですよ。稲置先輩が来てくれたらうれしいです」


 そう言って小石は、こちらを向きながら満月のような穏やかな笑みを浮かべた。雲の陰り一つない、火星まで届きそうな、綺麗な光を放つような瞳をしていた。


「それは良かった。そのマネージャーに感謝しないとな」


「ええ」


「ところで給料についてなんだが、今までの1割でもいいから上げて……」


「今までって何のことですか? この前の人と稲置先輩は別人なんですよね? ちょっと何言ってるのかよくわからないです」


「……いや、今のは大人のジョークみたいなもんで、本当はどっちも俺なんだよ」


「?」


「? じゃない!!!! どう考えてもわかってるだろ!!! おい!!!」


「今までの人はデリカシーのかけらもない仕事もできない無能だったんですよねえ。ほな稲置先輩とは違うかあ」


「急に関西弁になるな!! 今デリケートな業界なんだからちゃんと忖度しろ!!! デビューできないだろうが!!!」


「デビューってなんのことです?」


「そういうのは流せ。一応言っておくことに意味があるんだよ」


「まあいいですけど、これからもよろしくお願いしますね。稲置せ・ん・ぱ・い♡」


「ああ。ここからは全力で行くぞ。一気に駆け上がる」


 これから何があったとしても、俺たちは一緒だ。きっと何度も喧嘩するだろう。そのまま離れ離れになるかもしれない。それでも、別に良いじゃないか。


 地球の裏側の人ともつながれる時代だ。いざとなったら、北欧辺りにでも逃げれば良い。戦争が起きたら、隣の国に逃げれば良い。世界はそれを拒むほどは残酷じゃない。


 世界を恐れる心はあなたの中にあるのかもしれない。世界は確かに恐ろしいが、たまにご褒美をくれたりする。こんなふうに、ほんの1万円とちょっぴりの勇気一つで、温かい気持ちになれたりもする。


 それはきっと見落としがちで些細なことだけれど事実だ。俺はそう思いたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ