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VTuber探偵ミコが行く!  作者: べなお


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7/21

第7話:生徒会長の懐刀、参上

【登場人物】

速水小石はやみこいし

女子高生VTuber。ハンドルネームはミコ。主人公の後輩で、過去に引きこもりだったところを助けられてから配信者のマネージャーの仕事をしてもらう関係。副業で探偵をしている。


氷室稲置ひむろいなぎ

小石のVTuber活動のマネージャーしていたが、前話でクビにされた?。19歳。高校時代は小石の通う高校で生徒会長をしていた。


淡野瑞希あわのみずき

主人公の後輩の女子高生。剣道有段者。眼鏡が似合うショートカット。大阪出身で関西弁。

「やっぱり桜音のマネージャーに内定するのが無難かな」


 スタバでメモ帳にボールペンで何やら書きながら、稲置は結局その結論にたどり着きつつあった。


 小石→✕✕✕

 ネットバイト募集→✕

 就職→✕

 蟹漁船→△

 北欧辺りに夜逃げする→△

 桜音のマネージャー→〇


「まあ全くやったことない仕事やるくらいなら、配信者のマネージャーだよな。桜音なら偉い人の悪口言ったり、加湿器に水入れ忘れて全世界に恥をばらまいたりはしないだろ。上司としても理想だ。伸びしろもあるだろう」


 もしブラック労働を強制されるとしても、同じ夢を持つ、共感できる人間からであれば耐えられる気がする。そもそも自分は、生徒会長時代、何もぬるま湯につかっていたわけではない。ヤンキー集団の勢力を抑えたり、教師の理不尽な体罰をやめさせたり、いじめの主犯を突き止めて警察に通報したり、修羅場はいくらでもくぐってきたはずだ。


「とりあえず、今日は母校に寄って後輩たちの様子でも見に行くかな。あいつら俺がいなくて苦労してるだろうし」


 スタバの店員さんに軽く会釈して踵を返すと、稲置は東長崎にある、この間卒業したばかりの高校へと足を運んだ。運動がてら歩いていった。


 懐かしい。


 なんていう感情は特になかった。なにせ4ヶ月前にくぐった校門だ。既視感しかない。


 今は授業中だろうか。生徒会室で誰か来るまで待っているか。


「稲置先輩、もう帰ってきたん? 社会の荒波に揉まれて弾かれてしまったんか? あたしは最初からそうなるんじゃないかと思ってたでー」


「その声は淡野」


 黒髪のショートカット、眼鏡。制服のセーラー服は折り目正しく、スカートの丈も膝下を守っている。ただしその口調は対照的に崩れている。それもそのはず、彼女は関西出身なのだ。良く知った顔が、こちらを向いて破顔していた。


「正解!」


 現剣道部主将の彼女、淡野瑞希には、生徒会長時代にお世話になった。主に荒事専門の用心棒として。


「まさに日本海の荒波にもまれてここに流れ着いてきたよ。気分はさけかな」


「鮭て笑笑 鮭ならいくらでも戻ってきてくれてかまへんなあ! 鮭だけに!」


「……お前本当に女子高生か?」


「先輩何してんねん! ここは突っ込むところやろ。今のスーパーで売ってるいくらは鮭やのうてマスや! ってなあ?」


「ってなあ? って言われてもそれ俺とお前の間でしか伝わらないぞ。あとお前に突っ込むと話が終わらなくなるから突っ込まない」


「先輩に大阪流の突っ込みを仕込んだのはあたしやいうのに、悲しいなあ。ほなお巡りさんに電話した後小石ちゃんにDMするかあ」


「お前も見てんのかい!!!」


「冗談やん笑 先輩が私に黙って彼女作らない限りは大丈夫ですう!」


「……その予定はないから安心したよ。ところで剣道部は調子どうなんだ?」


「インターハイ出場は決まってますからね。今年は強豪が多いんやけど、うちはあたしがビシバシ鍛えとるさかい、一人一殺の覚悟で優勝トロフィーを持って帰ってくるんで、心配せんといてください!」


「一人一殺だと決勝まで持たなそうだが……。まあ淡野のことだから大丈夫だろう」


 そう。むしろ心配になるのは彼女の対戦相手の方だ。


 彼女は部員や学校の名前を背負っている立場にも関わらず、屈託のない笑顔を見せていた。それが彼女の強さだ。どんなに重い責任を負っていても、それを決して表には出さない。


 稲置は、そんな彼女から少しだけ勇気をもらった。後輩が気合入れて頑張っているのだ。自分がこんなところで腐っている場合ではない。


「なんか元気そうだったから俺はもう帰るぜ。達者でな」


「生徒会の子らには会っていかないんです?」


「ああ。OBがいつまでも顔出してたら邪魔くさいしな」


「まあ正直いうとそうなんですよね」


「正直すぎるんだ、お前は。まあインターハイ優勝したらお祝いに来るよ」


「シャネルのバッグ期待してますね~!」


「お前もか。需要があるんだなあ。シャネル」

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