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VTuber探偵ミコが行く!  作者: べなお


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第36話:救いの手

【登場人物】

速水小石はやみこいし

女子高生VTuber。過去に引きこもりだったところを助けられてから稲置とは配信者のマネージャーの仕事をしてもらう関係。副業で探偵をしている。殺人容疑をかけられた稲置の無実を証明するために奮闘中。


氷室稲置ひむろいなぎ

ミコ(小石)のマネージャー。19歳。高校時代は生徒会長をしていた。料理がそこそこできる。変人をなぜか吸い寄せてしまう人生を送っている。殺人事件の容疑者にされて絶体絶命。


氷室麗夜ひむろれいや

稲置の母親。ホストクラブ狂いでほとんど家に帰ってこない。元キャバ嬢。


氷室鷯命ひむろささぎ

稲置の父親。働くことをやめたアルコール中毒者。ここまで育ててやったんだからあとはてめえらでなんとかしやがれ、と息子と娘に言い放った。キャバクラ狂い。

「それで小石ちゃん、この事件について知っていることを話してくれるかしら? 大事な息子の人生が賭かっているからね」


 スマートフォンの向こう側には、あの氷室稲置の生物学的な母親がいる。ビデオ通話だ。


 日本人離れした風貌で、正直近づきにくいタイプのオーラを発する美人だ。明るめの銀髪は枝毛一つなく、腰近くまで伸びている。瞳は灰色の混じったブルー。肌は雪のように白い。


 きっと稲置先輩は、橋の下からでも拾われてきたのだろう。顔立ち以外はあまり似ていない。


 先輩情報によると、ホスト通いが酷いとか。あれって何が楽しいのかな? 執事喫茶的なノリかな?


「……ちょっと長くなりますよ?」


「記憶力には自信があるから大丈夫よ。小石ちゃんのペースで話してちょうだい」


 かくかくしかじか。以下略。


「なるほどねえ。その犯人さんは、ずいぶんあなた達に思い入れがあるようね。タワーマンションに直接襲撃しにきて、殺害したのもあなた達の知り合いでクラスメート。ここまで手掛かりが出そろっていて、無関係の外部犯ということはないでしょ」


「…………確かに冷静に考えれば、そうですね」


 どくん、と。自分の心臓の音が分かる。


「うふふ。その間で分かったわ。小石ちゃんには犯人の心当たりがあるのね」


 ぎくり。


「もう私、誰のことも信じられなくなりそうです」


「うふふふ、小石ちゃん。嘘は愛よ」


 なぜだろう。短い言葉だけど、えも言われぬ深みがある。それを感じさせるのは、経験の差だろうか。


「あなた達に嘘をついたその誰かさんは、嫌われたくなかったのよ。あなた達を愛していたから、その嘘をついた。自分の罪を、無かったことにした。それだけのことよ」


「……例えそうだとしても、私は許せません」


 稲置先輩に罪をかぶせた、あの人を。


「ええ。私もよ。それで、現場から消えた証拠品のスマートフォンが問題なんだったのよね。私に心当たりがあるから、ちょっと探してくるわ。小石ちゃんは、後から来る男の人の相手をしてあげて。きっと、被害者の配信アバターを乗っ取ったアリバイトリックの証拠まで案内してくれるから」


「え!?」


 情報量が多すぎて、理解が追い付かない。


 先輩のお母さん、何者?


「じゃあ、後はよろしくね!」


 通話が切れた。ノエルちゃんのスマホが重要な証拠である可能性は高い。しかし、そんなものはとっくに犯人が処分しているだろう。どうして、あんなに自信満々に言い切ったのだろう。


 自分の息子がこのままだと殺人犯として逮捕されるかもしれないというのに。どうしてそこまで強気でいられるの?


 それはきっと、母親にならないと分からないことなのだろう。


 タワーマンションの部屋のインターホンが鳴る。


「邪魔するぜ。君が小石ちゃんか。なんだか顔色わりぃな。何か嫌なことでもあったのかい?」


 ロックを開けてしばらくした後に扉を開けて入ってきたのは、何を隠そう、あの稲置先輩の父親。氷室鷯命ささぎだった。こちらには息子の面影がある。見た目はアラフォーのおじさんだ。瘦せ型で身長は175くらい? 髪はオールバックにしている。白髪はあまりない。


 けど確かこの人キャバクラ好きのアル中なんだっけ? 稲置先輩がそうならないように止めなきゃなあ。


「どうして先輩のお父さんが?」


「なんだ、麗夜から聞いてねえのか。俺も詳しくは知らねえが、とにかく小石ちゃんをある場所に案内しろだとよ。なんでも、息子の容疑を晴らすために必要なんだと。前科くらい男の勲章なんだから、数年おつとめしてくりゃいいっつったんだがな」


「いやいやいやいや、殺人容疑なんですから数年で済みませんよっ。縁起でもないこと言わないでくださいっ」


 冗談じゃない。実の息子に言うセリフじゃない。


「そういう小石ちゃんは、あいつと付き合ってんの?」


「ばっ、んなわけないじゃないですかあっっっ! こんな時に変なこと聞かないで下さいっ」


 パタパタパタ、と手で顔をあおぐ。何だか調子狂うなあ。


「まあいいや。それじゃ行こうか。レンタカー借りてるからよ」


「……お酒飲んでないですよね?」


 稲置先輩から悪い噂は聞いている。水の代わりに酒を飲むような人だと。とても心配だ。


「……心配すんな。今日は度数を抑えてビールにしといたからよ」


「まずあなたが捕まってくださいっ!!!」


 おまわりさん! ここにこれから犯罪を犯す人がいますっ。


「冗談さ。今日はまだ飲んでねえ。とにかく行こうか。稲置のやつが本当に刑務所に行っちまう前にな」


「今は漫才してる場合じゃないんですよ。わかりました行きます!」


 今は考えてもしょうがない。前に進もう。


 貰える救いの手は全部つかむんだ。彼を助けるために。



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