第30話:情報提供者その1
【登場人物】
・速水小石
女子高生VTuber。過去に引きこもりだったところを助けられてから稲置(元主人公)とは配信者のマネージャーの仕事をしてもらう関係。副業で探偵をしている。殺人容疑をかけられた稲置の無実を証明するために奮闘中。格ゲーでマネージャーをボコボコにするのが生きがいらしい。
「54Pのみんなありがとー!!! みんなのおかげで事件現場のマンションの管理人さんに連絡付きそうだよ! 連絡先教えてくれた人、後でアマギフ送ります!」
54Pとは、私、速水小石の本名から取ったファンネームだ。
こいし = 5(こ)4(し)。
VTuberは皆、配信を聴いてくれているリスナーさん達を呼ぶための名前を決め、その関係を特別なものにする。
普通にリスナーさんって呼ぶ配信者もいるけどね。そこは好みかな。
なんで本名から取ってるかって? 配信でミスって本名バレしたからだよ!!!
「じゃあ連絡するからいったん配信止めるね。みんなはアーカイブ観てて!」
慣れた手つきでマウスを操作し、リズミカルに配信画面を切り替えるとリスナーからDMされた電話番号をスマートフォンに入力する。
通話ボタンを押すと、コール音が数回して、もしもし、と言う30代くらいの男性の声が聞こえてくる。
「どちらさまですか?」
「私はエデンハイツさんで起きた殺人事件を調べてる探偵です。お話を聞かせてもらっても良いでしょうか?」
事件現場のマンション名を伝える。何度か咳払いをしたあと、管理人の男は数秒の間を置いて返事をしてきた。
「その件は刑事さんにお話ししましたが?」
「私、登録者数百万の配信者なんです。お話を聞かせてもらえないと、配信で色んな事を喋っちゃうかもです。そうなるとマンションの入居者の方々はどう思うかなって?」
「……脅迫ですか?」
「いえいえ。むしろ逆に、協力してくれたら配信でマンションの宣伝を無償でさせて頂きますから。ただでさえ殺人事件が起きたマンションです、これからのことを考えましょうよ」
こんなやり方、本当はスキじゃないんだけどね。
私は稲置先輩のためには、鬼にだってなるんだ。
「……正直、既に数人の入居者さんから退去したいという話をもらってるんですよね。こっちはちゃんとセキュリティにも気を使って建物の設計からやってたんだけどねえ」
どうやらマンションの管理人にも色々あるみたいだ。
「風評被害で離れる人はいつだっていますよ。私もそういうのを乗り越えてここまで来たんです。真面目にやってればそれを見てくれてる人は必ずいます。どうか私に協力してください」
稲置先輩でも、きっと同じようにやるだろう。
素直に自分の思いを伝える。それこそが、誰かの心を動かすための一番最適な方法であって欲しいと願いながら。
「……実はうちのマンションのオーナーから、他言無用って言われてる話があるんだけど……」
「…………教えてください」
あのマンションの、オーナー。
事件と関係あるのだろうか?
「老夫婦が住んでる部屋があるんだけど、事件後に誰も姿を見なくなったんだ。電話してもインターフォンを押しても無反応さ。勝手に旅行にでも行ったのかなって最初は思ったけど、昔同じことがあった時は私に一言挨拶があったからね。ちょっと心配でね」
「それは少し不可解ですね。若い人ならまだしも、高齢の方が二人そろって音沙汰無しですか。事件に巻き込まれた可能性もあるのに、なんでオーナーの人は口止めしたんでしょう?」
「さあ? 事件をこれ以上大事にしたくなかったんじゃないの?」
「うーん。でも犯人はまだ断定されてないわけですし、隠すメリットが良く分かりません。良かったらなんですが、現場に伺ってもよろしいでしょうか?」
「別にこっちは構わないけどね。くれぐれも入居者に余計な誤解を与えないように頼みますよ?」
「OKです。仕事仲間を行かせるのでよろしくお願いします」
突破口を、何が何でも見つけてやる。




