第25話:頼んだよ
【登場人物】
・氷室稲置
ミコ(小石)のマネージャーだったが無職になったがめでたく再就職した。19歳。高校時代は生徒会長をしていた。料理がそこそこできる。変人をなぜか吸い寄せてしまう人生を送っている。殺人事件の容疑者にされて絶体絶命。
・淡野瑞希
主人公の後輩の女子高生。剣道有段者。眼鏡が似合うショートカット。大阪出身で関西弁。稲置の懐刀。木刀は5本持っている。
・速水小石(はやみこいし。ハンドルネーム:ミコ)
女子高生VTuber。主人公の後輩で、過去に引きこもりだったところを助けられてから配信者のマネージャーの仕事をしてもらう関係。副業で探偵をしている。
・青島慎次
40代の刑事。池袋警察署に勤務している。刑事部捜査第一課所属。とある事件で腹を刺されたことがある。
「稲置。もうネタは上がってんだ。その腕の刺し傷もどうせ言い逃れのためにつけたんだろうが。こっちはYou〇uberには、突撃されるわ事件ひっかき回されるわ、ネットで総叩きにされるわで普段から散々な目にあってんだ。お前らはとにかくやり過ぎた」
青島刑事は吐露する。
噂は聞いていたが、どうやら警察という組織は配信業に対してかなり強い憤りを感じているようだ。実際に配信活動と称して、法律違反ギリギリの行為を繰り返している者は後を絶たない。
しかし、俺たちは違う。
違うのに。
「信じてくださいよ、青島刑事。俺たちは迷惑系配信者とは違う。健全なゲーム配信系なんだ。そりゃ本人はちょっとばかり引きこもりで性格が終わってるかもしれないけど、それでも配信で自分の子供出しておむつ代をせびったり、不倫をネタにして小銭を拾ったりはしてないんだ」
「稲置先輩、どさくさに紛れて言いたいこと言ってない? あと最後の二つは誰の事?」
流れ弾を食らった小石をスルーして、青島刑事は続ける。
「……そんな奴がいるのは初めて聞きましたがね。とにかく我々はもう疲れているのです。礼儀も苦労も知らないてめえらのような若造が、ネットでこれ以上調子に乗るのがね。ネットという箱庭の中でおままごとするのは勝手ですが、現実世界にそのノリを持ち込まないで頂きたい」
「俺たちは配信者の代表でもなんでもない」
話が噛み合わない。
どうやら青島刑事、というか警察組織側の脳内には明確なストーリーがあるようだった。俺たち配信者は、数字のためならどんな手段でも取るという、先入観が。
そしてそのこと自体は、あながち冗談でもない。
この世界はヴァーチャルな戦場なのだから。
「とにかく、氷室さんにはこのまま取調室にいてもらいます。まだ他にも聞きたいことがあるのでね」
「……分かりました」
「お二人はお帰りください。何時までかかるか分かりませんし、今日で終わる保証もないので」
二人はどんな顔をしているだろう。見てみると、不安がにじみ出たような顔が二つ並んでいた。
「……強引な取り調べはせんといてくださいよ。その時はあたしが出るとこ出ますさかい」
淡野。
「……お帰りください」
淡々と対応。
「稲置先輩、先輩が無実だっていう証拠をかならず見つけてきます。だからそれまで待っててください」
小石が敬語を使うのは珍しい。初めて出逢った時を思い出す。
「ああ。頼んだよ」
その時わたしは決めた。あの時の恩を、先輩に返そうと。
そして私の大切な人に無実の罪を着せ、ノエルちゃんの命を奪ったこの事件の真犯人を、必ず捕まえてみせると。




