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VTuber探偵ミコが行く!  作者: べなお


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24/28

第24話:世界から取り残された二人

【登場人物】

・???

???


・スティーブ・ラセター

???

 リモート通話ツールは、あの誰もが忘れたがっているパンデミック、ウイルスの大規模流行により、怪我の功名こうみょうというべきかはともかく、普及した。


 かつての大地震でチャットメッセージングアプリが普及したのと同じように、災いは絶望や死以外の何かをも、この世界にもたらすのだ。


「……淡野さんはやはり邪魔だったわね。予想以上の手練てだれだったわ」


「君がそこまで言うなんて、珍しいね」


 彼と彼女は、PCの画面越しに話す。その二人の間の空気に温度があるとしたら、冷たい、だ。ひんやりと、危険な冷たさ。


「相手の実力が高ければ高いほど強くなるタイプのようね。手の内もまだ隠してるようだし。けれど人間性は単純だし、ウィークポイントも露出しすぎてる。次は無いわ」


「君が言うならそうなんだろうね」


 彼は思った。彼女に目を付けられた標的が気の毒だと。彼女は一度決めた標的は必ず逃さない。その恐ろしくもしたたかな執着心が彼女にはある。


「あなたは相変わらず毎日、日本酒を飲んでいるのかしら? その年でその体たらくだと、長生きしないわよ。スティーブ」


 彼女は、その深淵から空間に低く響き渡るような声で、彼の名前を口にした。彼を心配しているわけでは決してないことを、彼は十分わかっていた。


「僕は日本の文化を愛している。その中でもサケと築地のスシは最高だ。これが無いのならカルフォルニアに帰るよ」


「全く、クリエイターというものは難儀な生き物ね。私も人のことは言えないけれど」


 全くその通りだ。声帯模写、変装、体術もお手の物の殺人鬼に言われたくはない。


「それよりも、証拠は残さなかったのだろうね? 余計な事をしては、僕が手伝った偽装トリックが水の泡だぞ」


「深夜に黒のハンググライダーが目撃されるわけないじゃない。空域監視が厳しいのは国会議事堂や大使館、空港の上空だけよ。ドローン落として捕まる方が馬鹿なのよ」


「まあ、心配しているわけじゃないけれどね」


 江戸切子で獺祭だっさいを飲む。美味い。舌に確かに残る米の旨味を感じる。命の味だ。


「それで、きっと速水小石が動いてくるだろうけど、彼女は氷室稲置がいなければ恐れるに足らないわ。どんなに発信力があっても、目の前に立ってしまえば震えてうずくまることしかできない。やつらはそういう生き物よ」


「本当に目の前までたどり着けてしまう奴は君くらいだよ。ところで、今度六本木のビルで日本の芸術家が個展をやるんだが、一緒にどうだい?」


 彼女は、間髪入れずに感情をこめずに返した。


「興味ないわ。人間の心と体で遊んだ方が飽きないもの」


「残念だよ。速水小石に嫉妬してしまうな」


「あなたも私のおもちゃになってみる?」


「興味深い誘いだが、平均寿命の近くまでは遠慮しておこう。痛くて苦しいのは嫌いでね」


「好きな人なんているの?」


「むしろ殺してあげた方が楽になるような人間はいそうだがね。ともかく僕は寿司屋に行くよ。イワシの握りを食べたい気分だ」


「あなたのインスタグラムを楽しみにしてるわ」


 二人の間の世にも奇妙な空気感。それは世界から取り残された者たち同士でしか共有不可能な、禍々しくも妖艶な色をしていたことだろう。

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