第23話:俺が犯人である証拠
【登場人物】
・氷室稲置
ミコ(小石)のマネージャーだったが無職になったがめでたく再就職した。19歳。高校時代は生徒会長をしていた。料理がそこそこできる。変人をなぜか吸い寄せてしまう人生を送っている。殺人事件の容疑者に……。
・淡野瑞希
主人公の後輩の女子高生。剣道有段者。眼鏡が似合うショートカット。大阪出身で関西弁。稲置の懐刀。兄弟は兄と妹が一人ずつ。
・速水小石(はやみこいし。ハンドルネーム:ミコ)
女子高生VTuber。主人公の後輩で、過去に引きこもりだったところを助けられてから配信者のマネージャーの仕事をしてもらう関係。副業で探偵をしている。港区事変で何者かに襲撃されかける。
・青島慎次
40代の刑事。池袋警察署に勤務している。刑事部捜査第一課所属。
「青島はん、急に何ゆうてんの? 先輩が犯人やなんて、ほんま冗談きついわあ」
「淡野さん、残念ですが冗談ではありません。不可能な選択肢を除外していって、最後に残ったものが例えどんなに信じられないものだったとしても、それが真実なんです」
青島刑事は、どこかで聞いたようなセリフを吐いた。どこかの国の名探偵が言いそうな。
「そんなこと、言ったって」
「……そんな、馬鹿な」
血の気が引くという感覚を、稲置は久しぶりに覚えた。小石に配信で顔晒された時なんて、可愛いものだ。
「……容疑者なら桜音ちゃんだってそうですよね? どうして稲置くんだけがアリバイが無いって言いきれるんですか?」
小石が、立ち上がった。
その小さな体で精一杯、40代男性の厳つい刑事の顔を睨みつける。
「……例の被害者のアバターを乗っ取られて配信されていたという件ですが、我々警察は次のような結論に至りました。配信の乗っ取りは無かったと。そして生配信は被害者本人、つまり火将ノエルが行っていたと。その時間帯は彼女は生きていたと我々は考えます」
「なんやてっっっ?!」
「「……」」
そういうことか。
「配信は夜の19:00から20:00にかけて行われています。その間、火将さんが生きていたとするなら、犯行はそれ以降の時間帯に起きたことになります。そして桜音さんは駅前のケーキ屋で19:45に目撃されていて、店を出たのは20:35です。店員から裏を取ってあります。そして氷室さんから我々警察に通報があったのは21:00。店と現場はどんな移動手段を使っても15分はかかります。桜音さんには犯行は不可能です」
そんなはずはない。
確かにノエルちゃんが倒れていて、その横で配信画面が付いていたんだ。
「嘘だ。確かめてくださいっっっ。配信会社のサーバーでもなんでも!!」
「氷室さん。問い合わせていますが、ユーザーのアクセス履歴は個人情報になるので、公開できないそうです。乗っ取りがあった証拠は押さえようがないんですよ。となると我々はあなたの証言だけを信じるわけにはいきません。分かってください」
「そんな」
生きた心地がしなかった。喉に、コルクが詰まったみたいだ。
「マンションに出入りした他の住人や客人はいなかったんですか?」
小石は冷静。しかしその顔色は普段より悪い。引きこもりで色白なせいだけではないだろう。
「何人かはいたそうですが、その全員にアリバイがありました。裏はとっています」
「……じゃあ配信乗っ取りの証拠を見つけない限り、犯人は稲置センパイってことになるわけですね」
彼女は、くたびれたように微笑みながら、こちらを向いた。強がっているのが見え見えだ。
彼女に、そんな歪んだ表情をさせているのが自分だという事実がなにより稲置を苦しめていたのだった。




