1年目:読書(漫画)の梅雨
俺は漫画が好きだ。
高校生の頃ブックオフに入り浸っていたし、大学生になってからは漫喫に拠点を変えた。
お気に入りの漫画は紙で買っているし、月に数冊は電子書籍を購入している。
働いていないからお金に余裕はないが、東京に来てからも暇な時間はいつも読んでいる。
今は梅雨で外に出ることができない、正確には億劫だ。
梅雨が明けたら観光で色々巡りたいが、今は家に閉じこもっていたい。
そうだ、せっかくまとまった時間があるので積本を消化していこうじゃないか。
何も気にせず一日中漫画に浸る、こんな贅沢なことがあるだろうか。
とりあえず5日間くらい家から出なくていいように、近くのブックオフにいった。
スマホにメモをしている読みたい漫画リストを見ながら、安くなっている漫画を買い漁る。
両手に漫画でパンパンのビニール袋を持ち、家に帰る。
これを2度ほど繰り返した後、最後にコンビニでカップ麺とお菓子、冷凍ポテトと炭酸水を大量に買い込んで家に帰った。
今日だけで4万円ほど使ってしまったが、数日間の生活を想像すると笑みが止まらない。
部屋の端にタイトルごとに大量の漫画を並べる。
きらら系の日常漫画から頭を使うような推理系漫画、王道のバトル漫画など様々なジャンルを買い込んでいる。
俺は同じ漫画を平均3周する。
1周目はストーリーを楽しんで、2周目は細かい見落としを網羅する。
そして3周目で全てを知ったうえでストーリーの機微を楽しむのだ。
さあ、何から読もうか。
きらら作品は頭を使う作品や鬱漫画の間に読みたい、心の潤滑剤になる。
なのでまずはシュールな作品から読んでいくとしよう。
気になっていた「アンダーニンジャ」から読んでいくことにした。
歴史の背景に必ず絡んでいた日本の隠密集団"忍者"。
現代も多くの忍者が日常に溶け込んでいて、裏で治安維持を行っている。
地上の忍者たちと地下で国家転覆をたくらむアンダーニンジャ達との戦い。
ニート暮らしをしている主人公の無気力感が非常にいい。
下っ端忍者が雑な忍務を与えられたかと思えば、実はかなり重要な案件だと徐々にわかる。
堕落したように見えた主人公も、実は名家の実力者であることがわかる。
戦闘シーンに期待をしていたのに...。
あっけにとられたのも束の間、色々あって主人公が代替わりする。
が、いまいち誰が主人公なのかわからないまま進んでいく。
十郎?十二郎?加藤?五十嵐ではない事は確実だ。
単行本の表紙を見た感じだと十郎だろうか。
全体的に無気力で無機質な空気感が流れ、その空気のままボケが発生している。
突っ込み役は全員一般人、どちらかというと忍者がボケの立場という不思議。
ぬるっと物語が進んでいると思いきや、いきなり核心に迫ったりもする。
最新刊まで読んだところで一息ついて考えてみる。
忍者ってかっこいいな。
鍛え抜かれた身体能力と冷静な判断力、そして痛みに対する耐性。
最新技術で透明化もできるし、忍者以外が相手なら無敵なんだろう。
摩利支天を手に入れたら何をするだろうか。
エロ系は虚しいし、犯罪は後悔しか残らないしなぁ。
人助けってガラでもないし、結局なにもできないんだろうな。
...手に入らないものを深く考えても仕方ないか。
次は「よふかしのうた」を読んだ。
夜を自由に駆け巡る吸血鬼に憧れた少年の話。
吸血鬼になるための"吸血鬼に恋をする"を目指して夜を過ごしていく。
変わり者の少年と変わり者の吸血鬼の恋愛の話。
ほのぼのした日常シーンの落ち着きとギャグ要素のクオリティの高さ。
たまにある戦闘シーンの迫力、少年たちの葛藤。
キクさんを中心としたシリアルシーン、コウ君とナズナちゃんの結末。
全てが一級品で最高だった。
ナズナちゃんに恋をした状態で血を吸われると眷属になることができる。
だけど感情が欠乏した少年には恋がなんなのかわからない。
ナズナちゃんとの毎日はとても楽しい、初めて自分以外を大切だと思えた存在。
毎日一緒にいるのにまたすぐに会いたくなる。
"この感情が恋じゃないなら じゃあなんなんだよ"
甘酸っぱくない、ガムシロップ入りのアイスコーヒーを飲んでいるかのような恋愛。
最後の方は混ざり切らなかったシロップが甘かったけど、飲み切った寂しさが心に大きな穴をあけた。
この物語はハッピーエンドなのだろうか、それともバットエンドなのだろうか。
ストーリーについて考えると胸が締め付けられるので、推しキャラを考える。
ナズナちゃんかコハコベさんがやっぱり人気なんじゃないだろうか。
二人?二鬼?ともものすごく可愛いし、可愛いし、可愛い。
アザミ君やススキっぴ、この辺りも人気上位だろう。
というか登場人物みんな好きだ、ラヴ君も最高だしね。
※ハルカを除く
この人の作品は絵柄がかなり好みだ。
「だがしかし」の時も思っていたけど、目が可愛い。
ふにゃっとしているナズナちゃんの顔とラブ君のことでドヤ顔しているコハコベさんが可愛い。
絵柄よし、ストーリーよし、テンポよし。
今まで読んだ漫画ランキングでも5本指には入ってくるのではないだろうか。
ずっと漫画を読んでいたが、空腹感で日が暮れていることに気がついた。
ずっと読みっぱなしで少し疲れたので食事休憩を取ることにする。
漫画を読み切ったあとのこの余韻がたまらなく愛おしい。
自分だったらどうしたか、どうあってほしかったのか、自分の感情と向き合いながら考えるのが楽しいのだ。
食事をとりそのままシャワーも浴びた。
これで再び漫画の世界に溶け込める。
次は「デット・エンド・シーク」を手に取った。
夢を叶えられなかった事に強い後悔を抱いて死んだ人に、夢を叶えるための死の猶予を与えられる物語。
"夢を叶えるまでの猶予"なので、夢を叶えたら先延ばしにしていた死が確実に訪れる。
死を恐れて夢を諦めた瞬間、猶予は取り消され死が訪れる。
与えられたのは夢を叶えるための慈悲だろうか、それとも確実な恐怖だろうか。
病弱な主人公の樹は20歳という若さでこの世を去った。
...はずだったが、理を名乗る青年によってこの世にとどめられる。
"夢を叶えるまで、人生のロスタイムを楽しもうよ"
樹の夢とは、普通に生きる事。
生きる事を選んでも、生きる事を諦めても、普通に生きる事は叶わない。
死ぬ度胸もなく生きる希望もなく、今日も毎日を消化する。
最初から最後までずっと湿っぽい話だった。
後悔をやり直す機会を与えられるが、叶えることで全てが終わる。
夢は叶えることが目的ではない、叶った後が必ず存在するはずだ。
後のことはケアされず、ただ夢を消化する事だけを押し付ける。
しばらくはずっとモヤモヤが解消されなかった、この感情の起伏がたまらない。
3作品も読むと流石に疲れてきた。
今日は休んで、明日また漫画に没頭しよう。
時間も漫画もたっぷりある、しばらくは漫画欲に溺れたい。
もう少しだけ、梅雨が続いてくれると嬉しいな。