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1年目:上京

5月の中旬、GWが開けて世間が労働に勤しんでいる今日この頃。

夢と希望に包まれて俺は憧れの東京に引っ越してきた。


...夢と希望は言い過ぎだ、特に目的があるわけではない。

昔から大都会に対する漠然とした憧れがあって、思い付きで実現させた。

俺の住んでいた愛知県も名古屋という都会はあるが、中途半端だ。

大して遊べるところもないし、一部の駅以外は基本しょぼい。


せっかく憧れの東京に来たので、住居も思い切って有名な足立区にしてみた。

治安は昔に比べてマシになったと聞いているが、実際はどうなんだろう。

2階建てアパートの2階、6畳1Kの風呂トイレ別で家賃は5万円。

駅からは徒歩5分と聞いていたが実際は10分くらいかかる。


荷物もほとんど捨ててきたので引っ越しと開梱は1時間もかからなかった。

窓の外を眺めながら今後の生活を考えてみる。

とりあえずは生活に必要なものを買いそろえよう。

お金が尽きる前にバイト先も探さないといけないだろう。

...とりあえずお腹すいたからご飯食べに行こうかな。


部屋を出て鍵をかけた後、階段を下りて道路に降りる。

とりあえずは駅周辺のご飯屋さんに入ることにしよう。

駅前に日高屋があるのをは知っていた、というか引っ越しの受け入れで来た時に見た。

テレビや漫画ではよく見ていて知っていたが、愛知県に日高屋はなかった。

安くてうまいと噂なので楽しみだ。


「アイテル セキ ドーゾ。」

店内に入ると外国人の店員が声をかけてきた。

各座席にはタッチパネルが付いていて、勝手に注文ができる。

メニューを一通り見てみる、うん、安いな。

野菜たっぷりタンメンと春巻きを注文する。


初めての日高屋、値段の割には美味しくてボリュームがあるといった感じ。

通いたくなる中華屋というよりも困ったときの選択肢だ。

近くに美味しい中華料理屋がないか探していきたいな。


せっかく外に出たことだしこのまま近所を見て歩くことにした。

駅前にはイトーヨーカドーがあるし、飲食店も充実している。

4店舗もパチンコ屋さんがあるかとおもえば、すぐ近くに花屋さんがある。

この街が凝縮されているのだろうか、それとも東京はこれが当たり前なのだろうか。

ワクワクを抑えられず近所を散策しながら、東京に来たきっかけを思い返していた。


--------------------------

昨年のお盆休み、高校時代の友人たちと飲み会をしていた時の事。

みんなはすっかり社会に馴染んだ様子を醸し出していた。

「いやぁ、マジで仕事きついわー。うちの会社残業多すぎ。」

「寛記はまだ就職する気ないの?もう24歳だろ?」

「うるせえな、金には困ってないし別にいいだろ。」

「杉浦ぁ、今はよくても将来困るぞぉ。諦めて働いて金ためろぉ!」

「ああもう!酔っ払い鬱陶しいな!ほっとけ!」


24歳って社会人2年目だろ、偉そうに社会人面されてもなぁ。

フリーターとして社会に貢献はしているわけだし、何が悪いんだろう。

みんなと解散した帰り道、ふと宝くじ屋が目に入った。

...金がどうこう言うなら一発逆転目指して買ってみるか。


そうして買った宝くじ、忘れた頃に確認したら100万円当たっていた。

ナンバーズで数字4つ選んだだけだから正直かなり驚いた。

100万円って、学生の頃はあり得ない大金に感じていた。

実際社会に出てみると現実的な大金なんだよなぁ。


物を買ったり飲み会で使ってもいいけどなんかなぁ。

そういえば愛知県以外で暮らしたことないな。

...東京行ってみたいな。

一か月10万円で暮らすとすると、120万円あれば働かずに暮らせる。

50万円くらいは貯金あるし、まるっと東京の引っ越し資金にしよう。

--------------------------


...まあ、若気の至りというか軽いノリだったな。

一か月の予算10万円は家賃を引くと5万円、水道光熱費で3万円。

食費と遊びの費用、今考えたら全然足りないよな?

うーん、半年遊んで暮らして細かいことはその後考えよう。


しばらく歩いていると河川敷にたどり着いた。

漫画のように斜めになっているわけではない。

地面に座りながら川を眺めてみる。


人生なんて一回しかないし、正解なんてない。

周りと同じレールに乗ることよりも、今しかできないことを楽しむべきだ。

自分の人生だけだったら自分で責任を持てる、俺は遊んで暮らしたい。

東京、足立区、短い間だが俺の遊び相手になってくれ。

俺はこの街で今までやらずに流してきた憧れを全部消化してやるんだ。


川を後にし家路につく。

知人も少ない初めての土地、この先俺はどれだけ楽しく過ごせるんだろう。

まずは家に帰ってペヤングを2つ食べるとしよう。

新しい土地への不安は微塵もなく、足取りはずっと軽かった。

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