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ϵ( 'Θ' )϶以上のお話(とその関連)

婚約者との時間に割り込んでくる親友?との縁を切りました。

作者: ユミヨシ

「私、髪飾りをディヘル様に贈られたの。ディヘル様は貴方より、私の方が好きなんだわ」


アリアにそう言われて、ヘレンシアはショックを受けた。

ディヘル・ハルデリク公爵令息はヘレンシアの婚約者だ。

それなのに、アリアが髪飾りをディヘルから贈られた?

どういうことよ?


ヘレンシア・ミルディス伯爵令嬢からしてみればアリア・フェレントス伯爵令嬢は、長年に渡る単なる顔見知りである。


ヘレンシアはアリアの事が大嫌いだ。


フェレントス伯爵家とミルディス伯爵家は隣同士の領地でただ、幼い頃から顔見知りだったというだけの関係なのに、王立学園に16歳の時に入学して、アリアはヘレンシアに付き纏うようになった。


「私はヘレンシアの親友なの。私達は仲良しなのよ」


と言って傍から離れない。

ヘレンシアにとって我慢できないのは、ヘレンシアが2年前に結んだディヘル・ハルデリク公爵令息との時間をアリアに邪魔されることである。


ディヘルは金髪碧眼で美しく、学園で人気のある一つ年上の婚約者だ。

ヘレンシアが入学するまでは、互いに手紙でやり取りし、王都に時々、出向いて、ディヘルとデートをし、大切な時間を共有してきた。


ディヘルはとても優しくて。


「君を我が公爵家に迎えることが出来るとは、とても嬉しいよ」


そう言ってくれて。花がほころぶような笑顔を向けて、とてもヘレンシアを大切にしてくれた。


この人と結婚出来るなんて、なんて幸せなのでしょう。


そう思っていたのに、学園入学も楽しみにしていて、入学後、今までよりディヘルに会える生活を楽しみにしていたのに。


アリアが、ディヘルとの時間を邪魔してくるのだ。


ディヘルと二人きりで食堂で食事をしていれば、


「ディヘル様。ヘレンシア。私も一緒に食事をしていいわよね」


仕方なくヘレンシアは承知すれば、ディヘルの隣に座ってべったりと。


「今日も、ディヘル様にお会いできて嬉しいですわ。私は、勉学もヘレンシアより、上の成績を収めているのですよ。運動もヘレンシアより出来ますし、我が伯爵家の領地もヘレンシアの所より少し広いんですの。美しさもほら、私の方がヘレンシアより美しいでしょう」


ディヘルは、頷いて、


「まぁ、フェレントス伯爵令嬢も確かに美しいが、ヘレンシアの茶の髪も私の好みだよ」


アリアは首を振って、


「私は華やかな金髪。ヘレンシアは冴えない茶の髪。私の方が美しいですわ」


そんな事を言って自己アピールしてくるアリア。

何故、私と親友だなんて周りに言っているの?

私は貴方なんて大嫌い。


彼女と離れたかったが、べったりと教室でも隣の席でくっついてくる。


組んで何か課題をやる時も、


「ヘレンシア。貴方には友達がいないから、私が一緒に組んであげるわ」


「あ、有難う」


アリアが入学当時からべったりくっついているので、友達が出来ない。

離れたいのに。この女から離れたいのにっ。


そんなとある日、見慣れない髪飾りをつけているアリアを見かけた。

「ディヘル様がプレゼントして下さったの。ヘレンシアに髪飾りをと探していたみたいなんだけど。この色は私の方が似合いますよって言ったら、プレゼントして下さったのよ。この紫の宝石の髪飾り、私の金の髪にとても映えるわ」


アリアに髪飾りを?ショックだった。


食堂では当たり障りのない会話をアリアとしていたディヘル。

それなのに、髪飾りを?


髪飾りなら以前、貰ったことがある。

他にも婚約者として色々なプレゼントを貰って、こちらもディヘルに色々なプレゼントをあげた。

仲良く話をして、婚約者と距離を縮めてきたのだ。


それなのに?それなのに?アリアに髪飾りを?


ショックだった。



一学年上のディヘルが学んでいる教室へ向かえば、ディヘルが窓の外を眺めていた。

その姿もまるで絵画のようで、とても美しくて。


ヘレンシアは、ディヘルに近づいて声をかける。


「アリアに髪飾りを贈ったと聞きました。私が婚約者なのに……貴方とは心を通わせていたはずなのに」


「フェレントス伯爵令嬢に贈った覚えはないんだが。宝石店で偶然、一緒になって。髪飾りが欲しいというから、買ったら?と言っただけで、贈った覚えはないんだ。ただ、私ならどの色が似合います?って聞かれたから、紫なんていいんじゃないかな?と答えはしたけど」


「でも、アリアは、自慢していました。貴方に貰ったと」


「あの令嬢本当にうっとうしいな。君の親友だから我慢していたけれども、そうでなかったら潰していた所だ」


「へ?」


「あの女、自慢ばかりしているじゃないか。君より優れているとか、領地も君の所より大きいとか。失礼じゃないか?私の婚約者より優れていると自慢ばかりするのは。君と私は政略で婚約を結んでいる。ミルディス伯爵家の事業が、我がハルデリク公爵家の利になるからだ。だが、君は私の婚約者なのだから、貶める事を言うなんて、それこそ失礼な。将来、ハルデリク公爵夫人になる君への侮辱だ」


ショックだった。


いつも優しいディヘル。

言葉の端々に愛がにじんでいて、愛されていると思っていた。

そう。政略。政略結婚なのだわ。


心に刃が突き刺さる。

貴族として、まだまだ自覚が足りない。


しかし、心が冷える気がした。


「ヘレンシア?」


「失礼致します」


頭を下げて、その場を後にした。




アリアの自慢は止まらない。


「ねぇ。聞いて。うちのフェレントス伯爵家の方が、事業が順調よね?ディヘル様の婚約者は私の方がいいんじゃないかしら。貴方より、優れているのですもの」


「それは、私達が決める事じゃないわ。ハルデリク公爵家と、私達の両親が決める事よ」


「私、両親に訴えてみようかな。きっとディヘル様も私と結婚した方が幸せよ。だって、社交するのだって、綺麗な公爵夫人の方がいいじゃない?」


確かに、派手な金の髪で美人なアリアの方が、茶の髪で地味なヘレンシアより、ドレス姿も映えるだろう。


でも、はっきりとアリアに向かって、


「貴方、いい加減にしてくれない?私、貴方と親友と言われてずううっと迷惑していた。ディヘル様は私の婚約者なのに、割り込んで。失礼過ぎるわ。本当に屑よ。貴方の顔も見たくない。席も隣から変えて貰うわ。二度と私に話しかけないで」


「そんなに怒るなんて、器が狭いのね。ともかくディヘル様は私が貰うから。いいわね?」


酷い女、酷い酷い酷いっ。


ヘレンシアは悔しさで涙が零れるのであった。



翌日、ディヘルが教室に訪ねてきた。

アリアは今日は欠席しているみたいで姿が見えない。

ヘレンシアの席は教師に訴えて、アリアの隣から変えて貰った。


ディヘルはヘレンシアに声をかける。


「昼休みに話がしたい。いいかな?」


「ええ……私もお話したい事があるの」


婚約解消か‥‥‥ディヘルの事が好きだった。

二年間の付き合いで、彼の優しさが好きだった。

愛されていると思っていた。


でも、アリアと婚約をするのだわ。

だって彼女は私より優れているし、とても美しい。

だから、だからっ…‥昼休みが怖い。

彼の言葉を聞くのが怖い。


一緒に、食堂で食事をする。


互いに無言だ。


ヘレンシアは耐えきれなくなってディヘルに、


「婚約解消の件ですか?ハルデリク公爵家がフェレントス伯爵家を選んだのですね。アリアが、貴方の新しい婚約者?」


ディヘルは不機嫌そうに、


「あの女は潰しておいた。はっきり君に言ったはずだ。うっとうしい令嬢だと。確かにフェレントス伯爵家から話があった。うちの娘の方が優れているから婚約者をその娘にしないかと。私は馬鹿は嫌いだ。自慢ばかりする女、いくら優れているからと、そんな馬鹿が社交界でやっていけると思うか?ある程度、利口な女でなくては社交界でやってはいけないだろう?何度も言うが、私はああいう馬鹿が嫌いだ。だから潰した。フェレントス伯爵家に迷惑だから学園に来させるなと苦情を入れた。あんな女、君も縁を切った方がいいだろう?何か問題でもあったか?」


「その、確かに、彼女は自慢ばかりしていましたけれども、私よりは美しくて、勉強や運動も出来ていて」


「馬鹿よりは君の方がマシだ。いや、君の方がその……マシというよりは、私は君じゃないと嫌だ」


「え?でも、私達は政略で婚約を」


「二年も一緒にいたんだ。君と話をしている時間は楽しかった。色々と話をしたね。私の両親も君の事をとても気に入っている。君が嫁入りしてくるのを楽しみにしている。ヘレンシア。君はとても努力家だ。私はそんな君の事を愛している」


嬉しかった。ヘレンシアは真っ赤になって、


「私も愛しています。ディヘル様」


ディヘルが席から立ち上がって、ヘレンシアの手を取り、


「今度、ドレスを君に贈ろう。君に似合う緑のドレスを。髪飾りは何色がいいかな。やはりドレスに合わせて緑かな。一緒に作りに行こう。社交界デビューはもうすぐだし、君と一緒にデビューして踊りたい。踊りもしっかりと練習しないとね。ああ、楽しみだ。沢山、色々な事を楽しんでいこう」


そう言って、抱き締めてくれた。

食堂で他の生徒達がこちらを見ている。

恥ずかしい。恥ずかしいけれども‥‥‥

それでも、ディヘルに抱きしめられてとても幸せを感じた。



あれから、アリアは修道院に送られたらしい。

ハルデリク公爵家に睨まれたら、フェレントス伯爵家も色々と困るので、娘を仕方なく修道院に送ったのだろう。



今日は、二人で社交界デビューの衣装を作りに行く約束をしている日だ。

迎えに来るディヘルの事を待ちながら、ヘレンシアは幸せを感じるのであった。


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