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86. 異界の魔道具?

 今日は僕らの屋敷にエルザさんとルーグさんをお招きした。まぁ、お招きというか、UFOを設置しにきてくれたんだけどね。


「なかなか大きなお屋敷ですわね!」

「せっかくの庭なのに荒れ放題なのが気になりますが……」


 僕らの屋敷を見た2人の感想がこれだった。この大きさでも“なかなか大きい”止まりなんだ。あいかわらず一般庶民の反応じゃないね。まぁ、いつものことだからツッコまないよ。


「「「きゅう」」」

「あらあら、お出迎えですわね!」

「相変わらず見事な統率力ですね」

「チュウ!」


 ビネ率いるアライグマ隊数名が庭先でお出迎え。そのまま案内してくれるので、そのあとについて庭を進む。


 案内された先は、屋敷の裏手。正面からは見えない場所だ。裏庭って言えばいいのかな。


『あ、どうもどうも』


 僕らに気づいたリックがペコペコ頭を下げる。何でだろう。不思議と親近感を覚える仕草だ。これも前世の記憶かな?


「かなり綺麗に整えたね」

『うん。この子たちが手伝ってくれたからね』

「「「きゅう!」」」


 裏庭も当然のごとく荒れ放題だったんだけど、アライグマ隊とリックで綺麗に整えたみたい。雑草は取り除かれ、地面のでこぼこも目立たなくなってる。これなら表も頼みたいね。あとで、ビネにお願いしておこう。


「ここに出せばいいんですか?」

『はい。お願いします』


 リックが指定した場所に、ルーグさんが瓢箪型魔道具の先を向ける。豆粒なみたいなものがぴょこんと飛び出したかと思えば、みるみるうちに膨らんで、いつか見た宇宙船のサイズに戻った。


 うーん、とっても便利。できれば複製したいくらい。


 だけど残念。因子チェックさせてもらったところ、あの機能は“亜空間収納”という固定因子だった。


 まぁ、ないものねだりをしても仕方がないか。


「エリザさん、ルーグさん。どうもありがとうございました」

『ありがとうございました』

「いえいえ。このくらいお安い御用ですよ」

「そうですわ! 困ったことがあったら、何でも言ってくださいまし」


 僕とリックでお礼を言うと、2人は大したことではというように軽く手を振った。本当にありがたいね。


「ところで、これはその世界へと出かける船なのですよね。修理をすると動くのですか?」


 興味津々といった様子でルーグさんが尋ねる。リックはしょんぼりと眉を下げて答えた。


『修理できればもちろん動くよ。問題は修理に必要な素材が集まるかどうかわかないってところなんだよね……』

「どんな素材ですの?」

『いろいろあるけど……一番探すのに苦労しそうなのはAragurIumだね』

「アラグ……なんですの?」

『その反応……翻訳が機能してないのかな? ってことは、こっちでは見つかってないのかも』


 詳しいことはよくわからないけど、宇宙船の修理は難しそうだ。


「助けを呼ぶことはできないの? 救難信号とか」

『もちろん、それも考えてるよ。というか、そっちのほうが現実的かもね。そもそも僕も、救難信号を探知して様子を見に来たんだし』

「そうなの!?」

『そうだよ。まぁ、ミイラ取りがミイラになっちゃったんだけどね……』

「あ、うん……」


 ま、まぁ、それはともかく。救助が呼べるというのは安心材料だね。リックがあまり慌てていなかったのもそういう理由かな。


「救難信号が出ていたのなら、あなたの前にも遭難したアライグマがいるのかしら?」


 エリザさんが気にしたのは、リックがこの星に来るきっかけとなった救難信号だ。確かにそちらも気になるね。リックの前にも遭難者がいたってことだから。


 だけど、リックは何とも言えない表情だ。


『僕はアライグマじゃないって。遭難者のほうは……よくわからないね。偶然似たような信号が送られる事もあって、誤報も多いから』


 そ、そうなんだ。


 リックとしては複雑な心境みたい。遭難者なんていないほうがいいに決まってるけど、だとしたら自分は何のために……って表情かな?


『まぁともかく、故郷に戻るあてはあるから、そこまで心配しなくても平気だよ。まぁ念のために、自分でも帰還する手段の確保に動くつもりはあるけどね』

「宇宙船を修復だよね? でも、さっきは未発見の素材がどうのって言ってなかった?」

『まぁ、そうなんだけど代替手段もあるんだよ。ちょっと待ってて』


 そう言うと、リックはUFOの中に入って行った。僕も気になるけど、さすがにあの中には入れないかな。単純に入り口が狭すぎるもの。そうでなくても、入れてもらえないとは思うけどね。秘密の技術とかありそうだし。


『これ。これが秘密兵器』


 リックが持ち出してきたのは、飾り気のない金属の箱だ。秘密兵器というくらいだから、何かの道具だと思うんだけど。


「これなに?」

『これはマテリアル・デュプリケーター。登録してある素材の複製を作れる道具だよ』

「それは凄いね! それでアラグリウムも?」

『登録はしてあるよ! ただ、これを動かすには高純度のエネルギーが必要なんだ。それをどうやって確保するかが課題でね……』

 

 エネルギーが必要なのか。それはそうだよね。何もないところから物質を作り出すなんて魔法の領域だもの。というか、エネルギーで物質を作り出すだけでも充分魔法的だよ。


 ルーグさんとエリザさんも似たような感想を抱いたみたい。


「なるほど。異界の魔道具のようなものですか」

「魔道具にも燃料として魔石を必要とする物もありますものね! ひょっとしてら、その道具も魔石で動くんじゃないかしら?」


 魔石って……あの魔石?

 科学術の塊が魔石で動くとは思えないけど……でも、どうなんだろう?

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