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85. 偉い人の許可

 昨日は歓迎パーティで賑やかに過ごしたけど、いつまでも楽しく遊んでいるわけにもいかない。いろいろやるべきことはあるんだけど、急がなきゃ駄目なのは従魔登録だ。


 アライグマ隊総員22名。さらには、ビネが追加でスカウトしてきた跳び鼠5名。この数の魔物を登録もなく街の中で連れ込んでいる状態なのは良くない。特区の住人は慣れてるけど、さすがにね。


 他の区から人が来ることもあるし、従魔隊が他の区に出かけることもあるかもしれない。こういうことはちゃんとしておかないと。


「というわけで、今日は従魔登録に行きます!」

「「「きゅう!」」」

「「「チュウ!」」」


 揃いのマフラーの従魔隊が敬礼した。今は全員見習いの灰色マフラーだ。


「あ、リックもついてきてよ」

『いいけど、もしかして、従魔登録しないと駄目なの?』

「そういうことじゃないよ。でも、見た目で魔物間違われそうだから、どうすればいいか相談しようと思って」

『そういうことかぁ』


 相談相手はケルテムさん、従魔ギルドの魔法猫ギルド長だ。見た目は猫だけど、喋る上にギルド長にまでやっている。彼の立場については詳しく知らないけど、話を聞けば何か参考になるんじゃないかな。


 というわけで、新人従魔の面々とリック、そしてビネを連れて従魔ギルドに向かう。


「お、なんだ?」

「サーカスの宣伝か?」

「かわいいね〜」


 騒ぎにならないように道の端を歩いてるんだけど……数が多すぎて目立つのは避けられないか。


 幸いなことに、従魔たちを怖がるような人はいない。サーカスの関係者と考える人もいるみたいだ。まぁ、共同での興行を考えているから間違いではないよね。ついでだから、もう少しアピールしておこうかな。


「ビネ」


 僕が名前を呼ぶと、意図を察してくれたビネが従魔たちに指示を出した。


「チュウ!」

「「「チュ!」」」「「「きゅ!」」」


 アライグマ隊も跳び鼠たちもピョンとひと跳ねして、手を振る。それだけで、大きな歓声が上がった。


 すごい人気だね。これなら、サーカスも成功間違いなしだ。


 そのあとも、道行く人々に愛嬌を振りまきながら歩く。そのせいで予想外に時間はかかったけど、無事従魔ギルドに到着した。


「あらまぁ。これはまた大勢ね」


 建物に入ると、入り口のそばに座っていたアクラさんが目を丸くした。とはいえ、すぐにニコニコ笑顔になって、膝に眠っている猫――――ケルテムさんを起こす。


「ギルド長、ロイ君ですよ。起きてください」

「ふにゃあ。また来たんだ」


 ケルテムさんがピョンと膝から飛び降りて伸びをする。


「おお、ウォッシャーバブルかぁ。これはまた大勢だ。あれ? そっちの子は違うみたいだね」


 さすがは従魔ギルド長。リックがバブルウォッシャーじゃないと見抜いたみたいだ。


「そうなんです。彼はリック。宇宙から来たお客さんなんですよ」

「宇宙? それって空の向こうのことだっけ?」

『は、はい! リックです。空の向こうの別の星から来ました』

「ほうほう。それはまた珍しいお客さんだ」


 伊達に何年も生きているわけじゃないね。ケルテムさんは宇宙について知ってるみたいだ。リックが宇宙人と聞いても落ち着いている。


 従魔登録が先かなと思っていたけど、話の流れから、リックの話からすることになった。


「まぁ、たしかに。人間には魔物との違いがわかりづらいかもしれないね」

「話をすればわかると思うんですけどね」

「いやいや。魔物中にも喋るヤツはいるよ。僕だってそうなんだから」

「ケルテムさんって魔物なんですか?」

「その辺りは定義が曖昧なんだよ。聖獣って呼ばれることがほとんどだけど、魔物扱いされることもあるね」


 詳しく聞いてみると、本当に厳密な定義がないみたい。野生動物までもが魔物扱いされることもあるんだって。総じて、人類にとって危険な生物は魔物と言われることがあるそうだ。うーん、適当すぎる。


 おっと、話が逸れたかな。


「結局、リックを人に準じる存在と扱ってもらうにはどうすればいいんでしょうか?」

「それは簡単だよ。偉い人にそう認めてもらえばいいんだ」

「……それって簡単ですか?」


 言うは易し、行うは難しってヤツじゃない。


 そう思っていると、ケルテムさんがはふっと息を吐いた。どうやら呆れのため息だったみたい。


「君、その偉い人なんだけどね」

「え、僕が? ああ、区長代理ってことですか」

「そうそう。特区に限定すればこれ以上にないくらいの保証だよ」


 そう言われてみればそうかも。あとでゴードンさんに相談して、正式に通達を出してもらおう。


「僕のところからも、保証書は出しておくよ。支部長だから、どれくらい効果があるかわからないけどね」

「ありがとうございます」

『助かります!』


 魔物に近い見た目が問題になることも多いと思う。そのときに従魔ギルドからの保証は大きいはずだ。ケルテムさんに相談して良かったよ。


「あとは冒険者ギルドと領主から保証を貰えば完璧だねぇ」

「なるほど……」

 

 冒険者ギルドはアダンさんに話を通せばどうにかなると思う。けど、領主か。実は、あんまり関わったことはないんだよね。


 まぁ、特区で活動するだけなら、僕が保証だけでもどうにかなりそうだし、おいおい考えればいいかな。

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