83. 名物料理(予定)
「それじゃ、リックを含めて、3人の歓迎パーティをやろう!」
「歓迎パーティ?」
「私たちも、ですか?」
戸惑うダバッグさんとキーラさんをまぁまぁと落ち着かせて、パーティに参加してもらえるように説得する。
「歓迎パーティか。何をするんだ?」
「全員で食べられるような料理を作って……ちょっとした出し物をするとか、どうかな?」
「だったら、レイネがギタラ弾く!」
「ライナも!」
「いいね! 普段は作ってもらうことが多いから、今日は僕が料理するよ!」
「そうか。だったら、私は……」
「ルクスは踊って!」
「踊りー! みたいみたい!」
「え、踊り!?」
さっきまで、大人しくしていたライナとレイネが急に元気になった。パーティと聞いて、人見知りする気持ちも吹き飛んだみたい。いろいろと提案してくれるおかげで、一気に盛りあがる。
「料理なら私も手伝います!」
「わ、私も!」
「お二人は主役なんですから、無理に仕事しなくてもいいんですよ」
「い、いえ! 無理だなんてとんでもないですぅ! 落ち着かないので手伝わせてください!」
「そうですよ! 明日から仕事するなら、ちょっとでも慣れておきたいので!」
そこまで言うならということで、ダバッグとキーラさんには料理を手伝ってもらうことに。
『そうなると、僕はどうしよう?』
「休んでいてもらっていいんだけど……気になるようなら出し物をしてくれる? 故郷の歌とかでもいいし。みんな喜ぶと思うよ」
『ちょっと考えてみるよ』
リックはパーティの主役だから、出し物をしてもらうのもどうかとも思ったけれど、好奇心には勝てなかった。だって、宇宙からのお客さんだもの。どんな出し物を見せてくれるか、楽しみじゃない?
役割が決まったところで、各々が動き出す。僕らは厨房に向かった。屋敷の規模にあわせてあるからとても大きいんだよね。これまでは活用できてなかったけど、ダバッグさんなら有効活用してくれるかも。
「それで、ええと……」
「あ、僕のことはロイと呼んでください」
「それは……ええと、ではロイ、君? 何を作りましょうか?」
「実は作ろうと思っている料理があって。まずは僕が作るので、手伝ってもらえますか?」
「わかりました」
作ろうと思っているのはお好み焼きだ。材料は小麦粉と山芋、それにお好みの具材。残念ながら卵はない。単純に常備してないだけで朝市に行けば買えるけどね。今回は山芋があるから、つなぎはそっちで充分なはず。
小麦は、うちの商会で生産・収穫したもの。“多産”で“高品質”な種を撒いたから、豊作だったんだよね。せっかくだから、その小麦で特区の名物料理を作りたいと思ってるんだ。お好み焼きはその候補ってわけ。
「ふーむ。水にといた小麦粉をベースにタネを作り、その中に具材をぶちこむと。作り方はシンプルですな」
「そうだね。これなら作りやすいから、住民にも広めやすいでしょ。アレンジもしやすいと思うよ」
「そうですな。いや、これはなかなかあ面白い」
料理人としての好奇心が刺激されてのか、ダバッグさんが食いついてきた。言葉も少し砕けてきたね。この調子なら、屋敷にも馴染んでくれるかな。
「今日はキャベツと豚肉で作ります」
「ほほう、豚肉とは珍しいですな。ブルスデンといえば、跳び……あっ」
言いかけたダバッグさんが、口ごもる。そうだったね、それを言っておかないと。
「ええと……いい忘れてましたが、うちでは、例の肉は厳禁でお願いします」
「そ、そうですね! わかりました!」
ブルスデンで食用肉といえば、飛び鼠なんだよね。以前は僕も食べていたけど、さすがに今は憚られる。
というわけで、最近は豚肉を仕入れて、それを使うようにしているんだ。エッダさんに伝手があって良かったよ。
この考えはあくまで僕らだけのもので、他の人たちに強要するつもりはない。でもまぁ、警備隊と日常的に接するから、特区では跳び鼠の肉を忌避する傾向にある。今は仕入れてるけど、食肉用の家畜を育てたほうがいいかもしれない。
さて、それはともかく焼きに入る。鉄板はないからフライパンで。焦がさないように裏表焼けばいいだけだ。
「なるほどなるほど。これなら難しくはないですな。では、残りは私に任せてください」
ダバッグさんが請け負ってくれたので、そちらは任せる。
「じゃあ、僕達はソースを作ろう」
「ソースですか」
「この料理はソースが重要なんですよ」
お好み焼きといえばソースが重要。いちから作るのは大変だけど、そこは大丈夫。
「このウスターソースをベースにして作ります」
「ウスターソースですか? 初めて見ます」
「最近開発したばかりなので。もうじき、ロルレビラ商会から売り出されますよ」
実は少し前に開発完了したばかりだ。発端は僕だけど、やったことは簡単に作り方を説明したくらい。あとは丸投げでお願いしたら、1年がかりで開発してくれたんだ。実は、醤油や味噌の開発もお願いしてる。そっちはまだ成果が上がってないけど。
おっと。今はお好み焼きソースの話だった。
「このままだとさらさらしてるから、甘みを追加してドロっとさせます」
「ドロっと?」
「はい。ドロっと。まぁ、とりあえず、この粉を入れましょう」
「待ってください! 説明を、説明を!」
ソースが気になったのか、ダバッグさんが焼くのを切り上げて説明を聞きにきた。そんなわけで、キーラさんと焼き係を交代する。
「そっちの粉は、甘み粉ですか?」
「あ、そうです」
甘み粉。砂糖の代替品として普及しつつある謎の粉だ。まぁ、僕が付与してるあれだね。エッダさんのところにも卸してるけど、ロルレビラ商会の商品としても売り出している。こうして名前が知られるくらいには普及してるんだよね。
「これを混ぜます。これくらいかな?」
混ぜるとちょうどよくドロっとするから都合がいい。ひと舐めしてみる。思ったよりも甘みが強いかな。
「うーん。もう少し酸味が欲しいかも」
「酸味ですか? レモンでも搾りましょうか」
「あ、そうですね」
レモンはそのままズバリ、レモンだ。僕の知ってるのより小さめだけど、味はほとんど変わらない……と思う。そのまま食べるわけじゃないから、正直よく分からない。
「あ、いい感じです!」
「ほほう。なるほど、悪くないですね」
僕に続いてダバッグさんも少量を匙ですくって舐めた。悪くない評価だ。
これなら、美味しいお好み焼きになりそうだ。欲を言えば、かつおぶしとか、青のりとか欲しいけど。あとは、マヨネーズも。他はともかく、マヨネーズは何とかなるかも。また商会に丸投げかな?




