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81. リックと朝ごはん

 リックやアライグマ隊の歓迎パーティもしたいけど、この時間から準備するのも大変だし、慣れない歩き旅でリックが疲れてる。そんなわけで、いつもの通りの簡単な食事を済ませてすぐに休むことになった。


「えへー、ロイは真ん中ー」

「ルクスも!」

「私はいいって」

「「だめー!」」

「チュウ!」

「ビネもおいでー」

「こっちこっち」


 はしゃぐ双子に引っ張られて大きなベッドに身を寄せ合って横になった。2日間野営をしただけなのに、ずいぶん久しぶりな感じがするね。


「レイネ、たくさん曲弾けるようになったよー」

「ライナも! ライナもだよー」

「そうなんだ。凄いね」

「お前たち、お喋りしたいのはわかるけど、寝ないと駄目だぞ」

「「はーい」」


 しばらく、ベッドの中でお喋りしていたけど、明かりを消すとすぐに双子から寝息が聞こえた。相変わらずの寝つきだ。優しい気持ちになって2人をみていると、同じようにしていたルクスと目が合った。ちょっとおかしくなって2人でくすりと笑う。なんだか帰ってきたって感じがするね。


「おやすみ、ルクス」

「うん。おやすみ」




 朝が来た。旅の疲れもシャキッと起きられてのは因子のおかげかな。朝の挨拶をして、みんなで食事の用意をする。寝起きで朝食の準備をするのは面倒だから、料理人が来てくれるのは嬉しいね。


 少しすると、寝ぼけ眼のリックが食堂に現れた。その後ろにはアライグマ隊の群れ。


「おはよう、リック」

「おはよ……」

「眠そうだね? 遅くまで起きてたの?」

「いや、そうじゃなくって。あんまり眠れなくってさ……」

「あれ? ベッドが合わなかった?」


 リックに案内したのは客間の1つ。広さは僕らが寝室にしてる部屋より狭いけど、家具は同じくらいのものだ。ベッドもフカフカのはずだけど、それが合うとは限らない。彼は宇宙人だからね。


 でも、そういうわけではないみたい。これは言葉を濁すように背後を見た。


「ベッドの寝心地は良かったんだけど……この子たちが……」

「「「きゅー?」」」


 視線を向けられたアライグマ隊は、何の話ですかとでも言うように、一斉に首を傾げた。その姿はとても可愛らしく、ライナとレイネはきゃーと声を上げて喜ぶほどだったけど、ビネはそんなことで誤魔化されなかった。ギランと睨見つけるようの鋭い視線をアライグマ隊に向ける。


「チュウ?」

「「「きゅ、きゅー?」」」

「チュチュチュウ?」

「「「きゅぁ……」」」

「チュ!」

「「「きゅー!?」」」


 どうやら、アライグマ隊の一部がリックのベッドに潜り込んだみたい。ビネの詰問を受けてタジタジになっている。結局、リックの部屋への立ち入りを禁止されることになったらしい。


「チュウ」


 しょんぼり肩を落とすアライグマ隊に退出を命じてから、ビネがリックに頭を下げる。部下への指導が行き届かなかったって詫びているんだ。慌てて僕も頭を下げる。


「ごめんね、リック。迷惑かけたね」

『だ、大丈夫だって。そこまで大袈裟にしなくても! もともと僕につきまとってた子たちだしね。部屋に入らないように言ってくれただけで充分だから』

「チュウ!」

『うん、助かるよ』


 ビネが、困ったことがあれば何でも言ってくれと請け負って、この件については終わった。


 ちょっと朝からバタバタしたけど、ようやく食事だ。食堂の大きなテーブルについて、みんなで座ってごはんを食べる。みんなと言っても、ビネ以外の従魔隊は別だけどね。


「そういえば、リックは食べられないものってないの?」


 彼は宇宙人だ。体質的に食べられないものがあるかもしれない。これまで気にしてなかったから、今さらかもしれないけど。


『うーん、どうだろう。この星の食材については何も知らないからね。わからないというのが、正直なところだよ』

「ああ、そうなんだ」


 それは確かにそうだよね。この世界、僕の前世に近い植物がかなり多い。もちろん、全然知らない植物もあるけど。


 でも、それって奇跡的な偶然……なのか運命的な必然なのかわからないけど、当然のことではないはずだ。リックにとって、ここは未知に世界なんだね。


「もしかして、食事の味が合わなかったりする? 食べたら具合が悪くなるものがあったら、すぐに言ってね?」

『あ、うん。ありがとう! 食事は全然問題ないよ。体質的に合わないものはあるかもしれないけど、そっちはこれでチェックしてるから』


 言いながら見せてくれたのは、いつかのネックレスだ。


「それ? 翻訳機じゃなかったの?」

『翻訳機でもあるけど、バイタルチェッカーでもあるんだ』


 バイタルチェッカーは体調管理機能。装着者の異常を検知したら即座に通知してくれるんだって。


『体質に合わないものを食べたら、これが反応するはずだから、あんまり気にしないで』

「へぇ。凄いんだね」


 あんなに小さいのに、翻訳機とバイタルチェッカーの機能を備えてるなんて。リックの故郷の星は、かなり科学技術が発達しているんだろうな。


 協力してもらえれば、勇者開発特区を発展させることも……ってそれはさすがにマズいのかな? リックの故郷的にも、この世界の神様的にも。まぁ、相談してみてから考えよう。


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