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79. アライグマ隊の実力

 スカウトツアーも3日目。今日は山の麓の野営地を離れ、街への帰還する。トラブルがなければ、日が暮れるまでには戻れるはずだ。


 たぶん、往路よりは順調に進めるんじゃないかと思う。魔法に興奮していたエリザさんたちもかなり落ち着いたし、帰路は従魔スカウトはしないつもりだから。


 当初の予定では帰路でも従魔のスカウトを試みるつもりだったんだけどね。道中の魔物はあまり従魔向きじゃないから、もういいかなって。


 それに目的は充分果たせたとも言える。なにせ、昨日スカウトしたバブルウォッチャーは全員で22人もいたからね。


 バブルウォッシャーは、アライグマ隊と命名することにする。街に戻ったらお揃いのマフラーをつけてあげよう。バブルだから……水色かな?


「きゅ!」

「きゅきゅ!」

「きゅー!」

『いや、えっとね、僕は君たちと違う種族なんだよ。見た目は似てるけどね』

「きゅっ!」

「きゅ、きゅー」

『困ったなぁ』


 そのアライグマ隊の一部がリックに纏わりついている。彼は隊員たちから熱い視線を注がれているんだ。


 リックとバブルウォッシャーたち。翻訳機を使っても意思疎通はできなかったはずなのに、僕の従魔になったら話ができるようになるらしいんだ。それで、次々に従魔希望者が増えたみたい。


 彼女たち……そう、従魔になったバブルウォッシャーは全員が女の子だった。どうやら、リックに一目惚れしたんだって。


 こんな状態で仕事はできるのかと思うんだけど、そこはちゃんとしている。リーダーのビネが一声かけると、即座に仕事モードに入るからね。


 今も、彼女たちはサボってるわけじゃなくて、休憩中なんだ。アライグマ隊は2班に分かれ、交代で休憩をとっている。リックに話しかけているのは休憩中の班ってわけ。


「チュウ!」

「オードさん。魔物だって」

「おう、そうか。予定通り、ビネたちに任せておけばいいのか?」

「チュウ!」

「任せておけだって」

「楽でいいが、俺達の仕事がないな……」


 オードさんがぼやいている。今回は護衛役ではなく案内役として雇ったんだから、気にしなくていいと思うけど。


「ブモォ!」


 現れたのは三叉バファル。アライグマ隊からすると、体格差はかなりある強敵だ。しかも、5体もいる。


 でも、そんなことで怯むビネじゃなかった。


「チュウ!」

「「「きゅー!」」」


 自ら先頭に立って、アライグマ隊に指示を出す。隊員が一斉に手を伸ばした。迸るのは水魔法の〈アクアレーザー〉だ。11人の隊員が放つ水流は強烈で、三叉バファルを一気に3体も屠った。


「ブモォ!」


 仲間を失って怒る三叉バファル。生き残った二体が猛突進をしかけてくる。


「チュウ!」

「「「きゅ!」」」


 それにも慌てず、ビネが新たな指示を出す。おかげか、隊員たちにも動揺はない。半分は魔法の準備に入り、もう半分は手を擦りはじめた。


 手を擦っているのは、バブルウォッシャーの固有能力バブルボムを使うためだ。擦る手から生まれた大きな泡の玉が、三叉バファルの進路上にばらまかれる。


「ブモォ!?」

「ブオオッ!!」


 三叉バファルに接触した泡が弾けた。威力はそれほどでもないけど、音と衝撃で怯ませる技だ。突進を止めるには悪くないんだよね。次々にぶつかって弾ける泡に、三叉バファルがあわあわしてる。……ダジャレじゃないよ。


 そんなことを言ってるうちに、残る半分が再び〈アクアレーザー〉を放った。泡に気を取られていた三叉バファルの生き残りもそれで倒れる。人数差があったとはいえ、完勝だ。


「圧勝ですわね!」

「三叉バファル5体となると、Cランクパーティでも手こずるはずなんですけどねぇ……」


 アライグマ隊の鮮やかな勝利にエリザさんはニコニコ、ルーグさんは呆れ気味だ。僕としては満足している。警備隊にも混じってもらうつもりのアライグマ隊だもの。これくらいはやってもらわないとね。


 ちなみに、因子はセット済み。固定とオリジナルは様々だけど、外部因子はこんな感じ。


■外部因子■

・溢れる生命力

・みなぎる活力

・魔法の才能(Lv7)

・魔法適性:水(Lv5)

・洗い物の才能(Lv7)

・洗浄力アップ(Lv10)


 “洗い物の才能”はそのままの効果。洗濯や食器洗いの才能が大きく向上するはずだ。アライグマ隊の1人が持ってたから、全員に持たせた。水魔法と洗い物のスペシャリストとして活躍してもらう予定だよ。


『ひぇ〜……』


 間近で戦闘を見たリックはビックリしている。


「リックのいたところには魔物はいなかったの?」

『いないよ! 猛獣とかはいたけど、魔物はいない! 御伽噺には出てくるけどね』

「魔法もないんだよね?」

『そう! だからビックリして……君たち、強かったんだねぇ』

「きゅう?」


 リックが取り巻きのバブルウォッシャーに語りかけた。ちょっと誤解があるかも。


「バブルウォッシャーは弱くはないが、普通はあそこまでじゃないぞ」

『え、そうなの? だったら、どうして?』


 オードさんが誤解を解いたけど、その先は僕に答えろって視線で伝えてきた。何処まで話すかって判断は僕がしないと駄目だからね。


 まぁ、リックならいいかな。宇宙人の彼が権力者とつながってることはないだろうし。


「僕は能力を付与する恩寵があるんだよね」

『恩寵? よくわかんないけど、そういう力があるんだね。魔法かぁ。凄いなぁ』


 羨ましそうに言うリック。彼に付与してあげてもいいけど……いや、今は止めておこうかな。今後どうなるかわからないし。故郷の星に戻るなら、混乱のもとになりそうだ。


 その後も、アライグマ隊の活躍で安全に進めた。実力は充分。警備隊としても洗い物担当としても活躍できそうだね。


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