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75. アライグマとUFO?

「おはよー……」


 眠い目をこすりながら挨拶をする。少し起きるのが遅くなったのか、僕以外はみんな起きていた。


「チュウ!」

「眠そうだな。大丈夫か?」

「うん、大丈夫」


 魔法で水球を生み出して、顔を突っ込む。バシャバシャしてから、水球を消せばちょっとはすっきりする。


「あら、そんな使い方が! 便利そうですわね!」

「あいからず奇抜な使い方するよね、ロイ君は」


 直接顔を洗うのは珍しいのか、ちょっと注目を集めていた。わざわざ容器に入れるのが面倒くさいだけなんだけどね。顔を洗う間も制御を維持しておけば、不要になった時点で消せるし。


「あのあと、何かあった?」

「何もないですね」


 ルーグさんが肩を竦めて答える。


 突然消えた謎の光。気にはなったけど、ずっと起きておくのも辛いから僕は途中寝たんだ。まぁ、そのあと起こされなかったから、何事もなかったんだとは思っていたけどね。


「さて。今日のことだが……予定通り、山に登る、でいいのか?」


 オードさんが僕に確認をとる。一応、僕が依頼人だからね。


 気にしてるのは夜中の光のことだろうね。消えたのは南側、ちょうど僕らが向おうとしている方向だ。


 正体不明だからね。どんな危険が潜んでいるかわからない。安全を考えれば、予定を変更するという手もある。


 けれど、従魔スカウトツアーの本命とも言える魔物はその山にしか生息してないんだよね。予定変更すると、何のために来たのかってことになっちゃう。


 それに、あの光のことも気になるよね。山を登れば、手がかりが掴めるかもしれない。


「うん。予定通り行こう」


 僕が答えると、オードさんも頷く。


「わかった。ただ、何が起こるかわからんから、安全重視で行くぞ」

「おほほほ、わたくしに任せておけば安心ですわよ! 近づく敵は炎の矢で射ち抜いてみせますわ!」

「ふふふ、私もしっかりと働いてみせますよ」

「二人は張り切りすぎないようにね。特に、バブルウォッシャーはテイム対象だから倒してしまわないでよ」

「わかってますわよ」


 バブルウォッシャーっていうのが、今回の本命だ。そこそこ手強いらしいけど、小さく可愛らしいみたい。そんな姿なら街の中で暮らしても、住人を無闇に怖がらせることはないはずだ。スカウトするにはうってつけの魔物ってわけ。


 朝食後に出発。探そうと思ったら見つからないもので、バブルウォッシャーと遭遇することなく、ただひたすら2時間くらい山を歩いた。


「妙ですわね」

「そうだな。さすがに魔物が少なすぎる」


 バブルウォッシャーどころか、他の魔物とのエンカウントもほとんどない。人の管理していない山の中。こんなことは普通ないんだって。


 つまりは異常事態。だからか、オードさんたちは警戒しているみたい。はしゃいでいたエリザさんやルーグさんも口数少なく周囲に視線を走らせている。


「チュウ」

「向こうに魔物の気配を感じるって」


 ビネが知らせてくれた情報をみんなに伝える。そちらには、たくさんの魔物が集まっているらしい。


「数はわかるか?」

「チュウチュウ!」

「それなりにいるみたい。あと、争ってる気配があるって」

「こんな山の中で、ですか?」

「魔物同士で争っているのかもよ」


 ルーグさんの疑問にイリスさんが答える。


 種族が違えば魔物同士で戦いになることはあるって聞いたことがある。遭遇する機会は滅多にないらしいけど。喧嘩中でも、人を見ると協力して襲いかかってくることがほとんどなんだって。


「どうするか。状況は確認しておきたいが……」


 オードさんがチラリと僕を見た。今は仕事中だからってことだからかな。


「行こうよ。僕も気になる」

「うーん……」

「チュウ!」


 オードさんは悩んでる様子だったけど、ビネがポンと自分の胸を叩いた。任せろのポーズだ。それを見て、オードさんも苦笑いになる。


「わかった。まぁ、今の俺たちなら何とかなるだろ。ただ、やばそうなら逃げるからな」

「もちろんだよ」


 ビネの案内で、魔物が集まっているという場所に向かった。都合よく、大きな岩があったので、その影に隠れて様子を窺う。


「あれは……バブルウォッシャーだな」

「あれがそうなんだ」


 集まっていたのは、アライグマみたいな見た目の魔物だ。たしかに小さくて可愛らしい。


 ただ数が多い。20匹くらい集まっている。

 

「争っている様子はありませんね」

「チュウチュウ」

「騒ぎがあったのは短い時間だったみたい」

「縄張りに別の魔物が入ったっところかな?」

「大きな個体がいますわ。群れのボスかしら?」

「バブルウォッシャーにリーダーか? そんな話は聞いたことがないが」


 群れる魔物には時々リーダー個体が現れる。他より大きかったり、賢かったりするんだって。単体としても脅威だけど、何より厄介なのが統率力。リーダー個体に率いられた群れは、強さが跳ね上がるらしい。だから、みんなは大き目の個体に注目しているようだ。


 けれど、僕が気になるのは別のことだ。バブルウォッシャーたちは何か大きな物を取り囲んでいるんだよね。


 それは銀色で、お皿のような形状だ。その上下に出っ張りがあって、人か乗り込めそうな空間がある。


 いや、もうハッキリ言ってしまおう。


 UFOだ! これ、絶対にUFOだよ!


 昨日のふらふら飛んでた謎の光の正体はこれだったんだ!

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