表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/130

5. 因子操作で何ができる?

 とりあえず、使徒目標とやらは見なかったことにしよう。非表示設定にできたから、しておいた。


 これは現実逃避ではないのです。今重要なのは、恩寵の具体的な効果を知ること。あくまで優先順位に従った行動なのです。


 ちなみに、操作は楽々簡単。頭で思い浮かべると、その通りになる。直感的でわかりやすいよね。その配慮を世界秩序に対しても発揮して欲しいと思う。いや、無理なのかな。神様の存在意義的に。


 まぁ、今は恩寵だ。僕の今後を左右するのは間違いないんだから。これからどうするにしろ、能力を把握していなければどうにもならない。


 ひとまず、スラムにいるよりは街の外に居た方が安全なはず。ピラさんのあの怒りよう、半日程度で収まるとは思えない。不用意に顔を合わせて、また殴られては堪らないもの。とりあえず、避難だ。まぁ……街の外は外で危険だから、困るんだけど。


 歩きながらウィンドウの表示を切り替えて、因子操作の説明を探す。それらしい記載は……あった。


「対象の持つ因子を操作することができる、か。できるのは……取り込みと削除?」


 ふむ?

 全然わからないね!


 ぱっと見る限り、僕の命を繋ぐような効果は確認できない。となると、僕が助かったのは、因子とやらを操作した結果ということかな。


 さらに表示を切り替えて、手がかりになりそうな情報を見つけた。



■取り込み中の因子■

・溢れる生命力〈new〉



 うーん、これっぽいよね。枯渇しそうな生命力を、この因子が補うことで一命をとりとめた。そんな気がする。


「具体的な効果は……おお、よしよし!」



◆溢れる生命力◆

生命力を固定値で増やす。

生命力回復速度を上昇させる。



 詳しく知りたいと考えると、因子の詳細が表示された。効果を見る限り、間違いなさそうだ。この因子が僕の命を救ってくれたみたい。“取り込み中”とあるから、何かから取り込んだんだろうけど……いったい、何から?


 気絶前の記憶を漁ってみると……最後に見たのは石畳の隙間から生えた雑草だ。


「え、本当に?」


 確かにイメージはピッタリだ。どんな場所でもしぶとく生きる姿には、強い生命力を感じる。


 でも……所詮ただの雑草。スラムの中にでもあちこちに生えているけど、誰も目を向けない。何故なら、何の価値もないからだ。そんな役立たずの雑草から取り込んだ因子が僕の命を繋いだって言うの?


 だとしたら……この恩寵って、とても凄いのでは?


 いや、だってそうでしょ。雑草なんて、どこにでも生えてる。その因子を次々に取り込んでいけば無敵の超人になれるのでは?


「早速、実験だ!」


 ちょうど、スラムの端にやってきた。ここの外壁は一部崩れていて、出入りが自由なんだよね。本来ならば修復すべきなんだろうけど、街の領主様は放置したままにしている。スラムの住人が都合の良い出入り口にしているから手出しできないのかもしれないけど。


 崩れた外壁から街の外に。本来の出入り口ではないから、この辺りに道はない。では何があるか。草です。草だらけです! もし、この草全てから、さっきの因子が取りだせたら、きっと凄いぞ!


 少し外れたところに座り込んで、雑草に手を伸ばす。きっと、他の人から見たら、草むしりでもしているように見えることだろう。好都合ですね!


 さてさて、やってみましょう。取り込みっと!


「変化は……特に、ないね?」


 ゲームみたいに派手なエフェクトがあるわけじゃないのか。でも、能力が発動した感じはする。それなら、例のウィンドウで確かめられるはずだ。



■取り込み中の因子■

・溢れる生命力

・食中毒(Lv1)〈new〉



 よしよし増えてる……って毒!?


 ど、どど、どうしよう!

 食中毒だからって馬鹿にはできない。発熱と下痢で体力は奪われるし、酷いと死ぬことだってある。というか、今なら確実に死ぬと思う。成長しきってない子供で、しかも栄養不足で体力がないんだから。それどころか、ピラさんに知られたら、うつされちゃかなわないってどこか適当な場所に捨てられるのがオチだ。


 でも……あれ?


 特に辛くもないな。どういうことだろう。一旦、因子の説明を見てみようか。



◆食中毒◆

この因子を持つ対象を食した場合、毒におかされる。

毒の強さはレベルによる。



 なるほど?

 これはつまり、僕を食べたらお腹壊すよってことだね。


 ほっとひと安心……だけど、何だか微妙な気分になるね。僕、毒物なんだ。どうせなら、食べられる前に何とかする能力が欲しかったなぁ。


 この因子はいらないかな。持っていても害はないかもしれないけど、何かちょっと嫌だし。自分の指を舐めたらお腹壊しちゃうみたいなことになっても困るし。


 もう一つの能力を使ってみよう。因子の削除ができるはずだ。はい、削除っと。



■取り込み中の因子■

・溢れる生命力



 よし、削除成功だ。良かった。


 とはいえ、ちょっと考えないと駄目かも。幸いなことに、“食中毒”は、自分に悪影響を及ぼす因子ではなかったけど、他の因子が全てそうだとは限らないものね。無闇に取り込んだら酷い目にあっちゃうかも。できれば、取り込む前に因子の確認ができたらいいんだけど。


 どうにかできないかといろいろ試してみたけど、全然駄目でした。ウィンドウに対象の因子の情報が表示されないかと思って念じてみたけど、全く反応してくれない。


 でも、ひょっとしたらどうにかできるかも、という機能は見つけた。その名はずばり“恩寵強化機能”だ。説明を見ると“偉大なる神に祈りを捧げ、恩寵を強化することができます”とある。ただ、祈りだけで強化できるわけじゃなくて、GPというポイントが必要みたい。何の略かな。ゴッドポイントとか?



◆GP◆

ご褒美ポイントの略です。

混沌神の使徒としての働きが評価されると付与されます。

今ならボーナスで初期GP100をプレゼント!



 違いました。ご褒美ポイントでした。


 いや、名前とかはどうでもいいんだけどね。取得する方法がちょっと。混沌神の使徒としての働きって……ねぇ? これはもう、初期ボーナスの100GPでどうにかするしかないのかも。


 ……と思ったのだけど。



■現在の保有GP:50



 何故か、GPが減ってる。いや、でも、ひょっとしたらという心当たりはあるね。


「ウィンドウが表示されるようになったのって、これのおかげかな」


 神様にお願いしたあとに、表示されたってことはきっとそうなんだと思う。


 ポイントを無駄にしたとは思わない。だって、ウィンドウ表示される方がわかりやすいもの。50GPが相応かどうかはよくわからないけど。


 問題は残り50GPで、対象の因子を表示させることができるかってこと。まぁ、足りなければそのときに考えればいいだけか。まずはやってみよう。


「神様、神様。取り込み前に対象の持つ因子を知りたいです。できればウィンドウに表示できるようにしてください!」


 お祈りヨシ!

 それでは確認してみましょう。まずはポイント。



■現在の保有GP:40



 お、10GP減ってる。こんなものでいいの?

 続いて、雑草の因子を確認してみよう。どれでもいいから、適当な雑草でっと。



■取り込み可能な因子■

・虫除け



 見える、見えるよ!

 これで因子を取り込むときの危険を減らせるね!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ